ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 遠い夏のゴッホ

一昨日遠い夏のゴッホという舞台を見てきました。
お昼ちょっと前に赤坂でショコラさんと待ち合わせ、ご飯を食べてからあの赤坂BLITZ以来、超久しぶりの赤坂に行ってきました。
わたしはお昼は鶏飯を食べたのですが、この日食べた鶏飯は日本の鶏飯です。
前回ここに来た時、エスニックな方の鶏飯を食べたことを思い出して、同じ名前がついていても全然別物なことに笑ってしまいました。
どっちも大好きですけれども。
そしてチケットを譲ってくださったKinKi&つよしファン仲間のNさんとYさんと座席でお会いして、とりあえず開演前にはご挨拶だけ。
横並びで、かなり前の方で舞台を堪能させていただきました。ありがとうございました。
さて。
この日見た舞台「遠い夏のゴッホ」は、主演が松山ケンイチくん。初舞台だそうです。共演に筒井道隆さんや吉沢悠くんなど。
ストーリーを事前にちらっとだけネットで見たら松山くんの役が虫の「セミ」と聞いて、どういうこと?と思ったのですが、あまり詳しく調べてしまうときっと面白くないだろうと思ったので、そこは疑問符のまま行ってきましたよ。
昨日が千秋楽とのことなので、もうネタバレしても大丈夫ということで、中身にも思いきり触れてしまいますが、本当に松山くんは虫役で・・・というより、他の登場人物もすべて昆虫でした。びっくり(笑)
会場の赤坂ACTシアターに入ると、ステージに大きな木が一本。
うちの子どもたちが幼児の頃に頻繁に流れていた「森の大きなくぬぎの木はね、森のファミリーレストラン♪」という「おかあさんといっしょ」の歌が、ずっと開演まで頭の中で鳴ってました(当然ですが、実際に鳴っていたわけではありませんよ、笑)
でもまさしくそんな感じ。いえいえ、レストランというよりも、生き物たちの命をつなぐ大切な木・・・みたいなイメ−ジかな?そんな感じを抱きながらそわそわと開演を待ちました。
この木を中心としたセットはどこか幻想的で、絵本の一場面のようでもあり、とても美しかったです。
そしてあえて・・・なのかな?凝りすぎてない想像の余地をたくさん残した感じのセット。
ステージのちょっと後ろの方に穴?があいていて、この穴で地面の下(土の中)と地上の世界の境目を表現しています。
さらにステージ上は広い場所が残してあって、時としてたくさんの役者さんたちが勢ぞろいします。
作・演出の西田さんの舞台に触れたのは初めてですが「セットではなくて『人』でイメージを広げる、見せる、聞かせる」というのがこの方の舞台の肝なのかな?と思いました。素人な感想ですけれども。
俳優たちがたとえば数人の連続したパントマイムで風の吹き渡るさまや四季の移り変わりを表現したり、情景をみんながユニゾンのセリフやセリフの応酬で表現したり。
わかりやすい小道具ではなくて、たとえば取り出した茶色の布をふわっと振って、あとは身体の動きだけでセミが飛ぶことを表現したり、赤い布がしゅる〜っと伸びてきたと思ったらそれがカエルの舌で、カマキリが食われるところを表現したり。
軽やかなダンスや独特のフォーメーションの群舞で虫の動きがものすごくそれらしく感じられたり。
見ていてすごく新鮮で面白かったし「人の力」だけで、何もお金をかけたセットをたくさん用意しなくても、なんだって表現できるんだというのがものすご〜く伝わっておもしろかったです。
(あとで調べてみたら、西田シャトナーさんの演出では特徴的なパワーマイムという手法なのだそうです。)
物語は、羽化を待つユウダチゼミの幼虫、ゴッホ(松山くん)が主人公です。
彼には愛し合っている恋人がいて、来年一緒に羽化するつもりだったのに、何かの間違いでオスのゴッホだけが予定より一年前の夏に成虫に孵ってしまうというところから始まります。
恋人はまだ土の中で、あと一年待たなければ土の上の世界には出てこれません。
ただ先輩の羽化を見学に行ったつもりだったゴッホですが、そのまま自分も羽化してしまい、唐突に別れる日がやってきてしまった恋人たち。
一度地上に出てしまったゴッホはもう土の中には戻れません。
そんなゴッホは、地上と土の中を自由に行き来できる友達のミミズに恋人への伝言を頼みます。
このミミズが吉沢悠くんです。彼の役柄はへんてこキュートな感じで、全身ピンクの衣装にメガネ、メッシュのおかっぱ頭だったりするのですが、とぼけた不思議おもしろいキャラクターで、とっても魅力的でした。
ゴッホはひと夏で自分の命が終わることを知り、嘆き哀しみ、そしてなんとか来年の夏まで生きていようと歌うことも飛ぶこともやめて、ひたすら体力を温存しながら夏を過ごします。
でももちろん老いと寒さには勝てず、やがては弱っていく身体を一生懸命引きずって、いろいろな虫の知恵も借りながらあらゆる手立てを尽くし、危険な目にもあいながら生き延びることに全力を尽くすというお話です。
その他にもアリ、カマキリやカブトムシ、クワガタ、カエルなどさまざまな生き物が出てきます。
いろいろな虫とふれあいながら、ゴッホは自然の摂理や森の虫たちの世界のことを知っていきます。
どの生き物も衣装だったりダンスだったりパントマイムだったりでそれらしく表現されており、とても魅力的でした。
たとえば捕食関係だったり、食物連鎖だったり、食べられてしまう生き物はその命を捧げることによって食べた生き物の一部として生をつなぐ・・・なんていう深いテーマが隠れていたり、結構考えさせられるシーンもたくさんありました。
そうそう、女王アリの役の安蘭さんが歌うシーンが何回かあって、めっちゃいい声でした。歌を歌ったのは彼女だけだったのですが、なんだかみんなの歌声が聴きたくなる・・・なんて思ったりもしました。
松山くんは初舞台だそうですが、無邪気だったりひたむきだったり、一途で一生懸命なセミを好演してました。初々しさも含めて素敵だなあと思って見てました。
恋人役のベアトリーチェ役の美波さんも素敵でした。
筒井さんの役は一緒に羽化したセミの仲間でしたが、彼のキャラクターは比較的テレビの中のイメージ通りだったかなぁ。
最後の最後の方は、ゴッホが年老いてしまっているので、セリフがちょっと晩年の清盛を思い出されたりもしましたが、ゴッホの「どうしても恋人に会いたい」という切実さが伝わって心を掴まれました。
恋人と再会できるの?どうなることかと思ってドキドキしながら見ていたけれど、最後はハッピーエンドでした。
よかったです。
ゴッホが恋人のためだけに、最後の力を振り絞って羽を震わせて飛ぶところ(一瞬フライングもするんです!)では、思わず心をさらわれました。
松山くんの今後の活躍も楽しみだなぁと思いました。
というわけで、なんの先入観もないままに行ったのですが、とっても楽しめました。
そんな話をするつもりで、終演後チケットを譲ってくださったNさんとYさんにお会いしたのでが・・・
彼女たちとショコラ嬢とわたしと・・・な〜んて言うメンバーで食べたり呑んだりしているわけです。赤坂といえば思い出の赤坂BLITZ・・・というわけで、どうしても話題はつよしさん方向へ(笑)
みんなライブにも飢えてるし「かば」も待ち遠しいわけで、自然とトークはそっちら方面からなかなか離れられず(笑)ムリヤリひっぺがして他の話題に移ってみても、また気がつけばそっちへ戻ってしまったりして・・・ちゃんとがっつりお話をしたのは初めてに近かったわけですが、とても楽しい夜でした。
舞台を見ながらふと思い浮かんだことがありました。
たとえば虫はちょっと孵化や羽化の時期が違っただけでめぐり合うことができなかったりするわけで。
一夏、一年、生きていられる時間、輝いていられる時期はとてもとても短いわけで。
でも、人間だって一生の間に巡り会える人の数は限られている。
そんな中、年齢は多少上であれ下であれ・・・同じ時代に生きてる芸術家、アーチスト、役者さんで「この人」という人に巡り会い、とことん好きになれる、応援していられるだけでしあわせって思える。たとえ頻繁に会えなくても、次の作品が世に出ることを楽しみにしていられる・・・というのはしあわせなことだなぁ。
さらにその人と同じ時代を生きて、同じ時に同じ気持ちを共有できる環境はとてもとても稀少で奇跡のような出来事で。
そんな思いを抱ける人には早々出会えるものではないような。
松山くんも魅力ある人でした。またお茶の間で、映画館で、舞台も!?・・・機会があったらその作品に触れてみたい方になりそうです。
そんなことを考えていたら、思わず思い浮かべてしまったここ何年も一番存在感の大きい誰かさん(笑)
大きな瞳と長い睫毛、美しい声をしたお洒落な人の顔でした。
やっぱりそっちへいくのか・・・という話ですが、思わずそんな話をしたら、みなさんも共感してくださいました(笑)
結局「好き」が一番の弱みで強みなのですよね、わたしたち(笑)
この日お会いした方々は、それぞれとっても知的で大人なカッコイイ、ちゃんと自立した方々ですが、そんな方々であっても、みんなやっぱり好きな人を前にすると乙女なんだなぁ〜と、そんなことを思いながら帰ってきました(笑)
たくさんの刺激をもらえる、とっても楽しい一日でした。
Nさん、Yさん、いい舞台を紹介してくださって、本当にありがとうございました。ショコラさん、いつも楽しいことを共有できてhappyです。
みなさんとまたゆっくりおしゃべりできる日がありますように!