ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 これまでだって「覆水は盆に返って…来たよね!」

 ここからは、木曜日、実家から帰った後の話です。
 最初のレッスンは5年生のFちゃんでした。
 今回月謝をいただいたら月謝袋がいっぱいになって、新しい袋を選んで名前と共に年数を転記したら、なんとVol.7。来月から彼女とのレッスンもついに7年目に入ることがわかり、お互いにびっくりです。「すごいねぇ。歴史を感じるねぇ。」と彼女もうれしそうです。
 多分彼女、この日記の登場回数がとっても高い生徒のひとりです。小さい頃はエピソードにはこと欠かないむずかしい生徒の一人だったし、今もまた思春期の入口なので、扱いにくいことはなはだしいです(笑)最近では手が氷のように冷たいので温めてあげようと思ったら、急に手を後ろに回して拒否されたり(笑)「すごく上手に弾けたから、音楽会の伴奏に立候補したら!?」と言ったら「絶対にイヤ!」ときっぱり言われたり、やっぱりなかなか一筋縄にはいきません。
 帰り道薄暮の時間帯になってしまったので、家の近くまで送って行ったのですが、一緒に歩く道すがら突然に彼女が「先生ってさぁ、絶対絶命のピンチになったことある!?」と聞きました。
 「まさしく今がそうかも」とつい本心でそう言ったら、「Fもそうなの。」と思いがけず告白モードになってお互いに「ふーん」としばし黙りこみました。
 何やら彼女、クラスの友達と好きな子を巡って大喧嘩になって、もう何日も口をきいていないんですって。青春だわ(笑)一方のわたしも自分の失言により、とんでもない結果を招いてしまったところだったので、偶然にもまさしくふたりで同じ「後悔」という気持ちをこっそり共有していたところだったわけなのでした。
 続けて彼女が「覆水盆に返らずって言うでしょ。返らないと思う?!」と聞くので、「そんなことなかったじゃない。特にFちゃんとはあんなこともこんなこともあって、何度も絶対絶命のピンチがあったけど、それでもこうやってうちに来て、まあまあ仲良くやってるじゃない。」と言ったら「そうだった!そうだった!先生ともいろいろあったよね〜」と彼女。
 たとえば、こんなことも、あんなことも、また、そんなこともあったFちゃんとわたしです。(ああ、たまたま出たひとことだけど、「覆水は盆に返る」といいなぁ。)
その後、なにか気の利いたことでも言って彼女を励ました!とか言えばカッコイイ話ですが、実際のところは彼女もいろいろと考えている風だったし、わたしも自分の現在置かれている状況に絶望的な気持ちだったので、何も言わずに歩いていたのですが、ちょっと経って久しぶりに彼女の方から手をつないできて、この子と手をつないだのはすっごく久しぶりと思いながら、なんだかキュンとしつつ送っていきました。
 結局その後もほとんど会話はなかったですが、そんなちょっとしたことがとってもうれしかったわたしです。
 わたしの方の絶対絶命のピンチはその後、その日のうちに数ミリだけ前進して、なんとか最悪の事態はまぬがれた感じなのですが、Fちゃんはピンチを脱したかしらん。
 最近生徒たちがどんどん成長していくせいか、気がついたら対等に話をしていることに気がついて驚いたりもします。こうやって教えているつもりが教えられていることも多いのよね〜なんて思うこともたびたびです。
 Fちゃんはまだまだ5年生ですが、どんな大人になって行くのでしょう。ピアノもどんな風に変わっていくのでしょう。きっと今後だって一筋縄ではいかないと思うけれど、このまま一緒にレッスン室でずっと顔を合わせていけたらいいなぁと思います。