ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 彼女はなぜいつも走ってくるのだろう?

なんだか思わせぶりなタイトルですが、謎が解けた?ような気がしたので。昨年の総括もかねて書き記しておきたいです。

昨年のレッスン事情は一言で言えば、なかなかに例年になく苦労の連続でした。

なんと言ってもちびっこが増えたから・・・というのもあると思うのですが、ずいぶんと汗をかいたなぁという感じ。

とはいえ、やっぱり誰よりもわたしが汗をかかないと、特にちびっこには伝わらないと思っているので、冷や汗がほとんどでしたけど(笑)ずいぶんと汗をかいたなぁという感じ。

久々の4歳児、ちょっとむずかしい生徒、仕切りたがりさん、ライバル意識が強すぎる子、ご両親が忙しすぎて彼女にまで手が回ってないなぁという子。

何を言っても反応が薄く、暖簾に腕押し?のように感じていた、やっと2年目に入った6年生のあいこちゃんへのアプローチは、ふと彼女のたくさんいる兄弟がすべて男子だったことを思い出し、さらにおかあさんがめっちゃ肝っ玉かあさんだったことも思い出し(笑)

何を考えているのかわからなすぎるからといって(笑)気を遣い過ぎるのをやめて、あっさりとした毒舌モードに切り替えたら劇的にうまくいくようになりました(笑)
不思議。

「そこ、リズムがめっちゃヘン!」「心に届かないよ〜っ!!」「おーい!おーい!あいこ、どこ行った?」「最後まで積んできた積み木をだーって壊したよ、あんた!」とかちびまるこちゃん口調でがんがん言うようにしたら・・・反応あったよ!という感じ(笑)

声を出してげらげら笑ったり、「ええーっ!?そんな風ですか?」なんて言ってきて、やっと心の芯に届いたよ!という感じ。
唯一彼女にだけは、わたし自身があんまり信用されてないなぁという気がしていたのですが、ちょっとうまくやっていけそうな気がしました。

彼女はまたオーディションを受けると言って練習を始めました。今度は卒業式の定番曲。「旅立ちの日に」です。

ただし・・・これは大丈夫そうだと思った矢先、新年一発目のレッスンが彼女で、待ち構えていたら27分も遅刻!
「ちょっとどういうこと?」って無遠慮に言ったら「えへへ。ごめんなさい。」って笑ったよ!
ほんとは笑い事ではないですが、「はぁ?どういうこと?」と言えるくらいの親しさになりたかったので(笑)これはいい兆候と思うことにしましたよ(笑)

とりあえず、ポーカーフェイスはバリバリっと破いて、確かに確かに、ちらっとあいこちゃんの中のヒトを覗いた気がしましたよ。

逆に仲良くなりすぎて困ったことになっている子が3人くらいいて。
これはわたしのやり方だといつも通る道なのですが、たまたま同時期に入った子達が今回は多かったから、いっぺんにやってきたのです。

音楽というものの性質上、心を開いてもらうことが何より大切だと思っているので、上から目線の怖い先生にはなりません。
最初はタメ口で全然いいから、とにかく楽しく通ってくること、仲良くなることに全力投球するのですが、そうすると、舐めちゃって全然言うことをきかない時期がやってくる・・・のが常で。

まんま寄りきられては大変なので、だんだんに言いたいことは言えるけど「ここまで」という線を引いていきます。
この線を引くタイミングがとてもむずかしいと感じていて。

通ってくるのが楽しい、わたしと会うのが楽しい・・・から音楽が楽しい、音楽がしたいからやってくる、弾けないと悔しいけど、もっとうまくなりたいからがんばる!・・・に切り替えていかなくてはないらないわけで。

ここが切り替わった頃に、仕事はずっとやりやすくなります。
(先にあげた子たちは、まだまだ先は長いぞ〜っ!!って感じなんですけどね。まったくもって一進一退!笑)

かといって「仕事がしやすい子」が、必ずしも誰よりも上手になる子というわけでもなくて。

言うことをちっともきかなくて、一見めんどくさい子は、苦労する分、一旦心を開き始めると全面的に信頼してくれるようになることも多くって。
そういう子は間違いなく繊細だし、誰にも負けない個性を持っていることが多いし、大器晩成だったりすることも多いから。

素直な子はその素直さを伸ばせるように、個性的な子は個性を殺さないように。
今年は本当に試行錯誤の連続で、教材も新しいものを常に探し回ったり、レッスン日じゃない日に呼んだり、いろいろとがんばりました。

さて。

タイトルはことちゃんです。
ことちゃんのことは再三日記にも書いてますが「子ども同士で話ができない」「オトナとしか話せない」女の子です。

ことちゃんはいつも10時からのレッスンなのに、9時40分くらいに駆け込んできます。
荷物はおかあさんに持たせて、一人で先に走ってきちゃうことが多いです。
本人はせっかく早く来ても、荷物がまだ届かないという(笑)

昨年の後半のある日、外で初めてことちゃんに会いました。
閉店間際のスーパーで。
最初に気がついてくれたのは彼女の妹のゆーちゃんでした。
ゆーちゃんは人懐っこい笑顔で、「ああ!ことちゃんのピアノのせんせいだ!」っと走ってきました。
にこにことあいさつをして・・・ゆーちゃんがいるからにはことちゃんもいるんだろうと探したら、いました!いました!
おかあさんと一緒にカートを押してます。
で、当然「こ〜と〜ちゃん!」といつも通り声を掛けたわけですが、彼女の顔に笑顔はなく。
なんだかとってもこわばってる。突然会って、明らかに怖がっているような顔でした。

さらに数日後、昨年はひさしぶりに小学校の音楽会に誘っていただいていたので、生徒たちみんなに「今年は行くよ〜」と言ったら、他の生徒たちはみんな「うれしい!」とか「先生、わたしはこの辺だよ!」とか、「見てね!」とか熱烈に歓迎されたのですが、ことちゃんだけは、とっても困ったような顔をしていました。

ああ、彼女には言わない方がよかったのかも?もしやプレッシャーを与えてしまったかしらん?なんてことも思ったわけです。

ところがところが。
数日後、レッスンに来たときには、わたしがどの辺りにいて、どんな服装をしていて、にこにこ見てたでしょ?ってそれはそれは克明に覚えていて、うれしそうにしゃべってくれたのです。

さらにスーパーで会ったとき、すっごくうれしかったんだよ〜とわたしの手をぎゅーぎゅー握りながら言ったそのことちゃんは、レッスンのときのいつも通り、とっても人懐っこくて、甘えんぼうさんのことちゃんでした。

これまたびっくり。

そして気がつきました。

どうも彼女は不測の事態というのが怖いのだなぁということを。

突然会った時に、突然いつもと違うことを言われたときに、きっとどういう反応をしていいのか、パニックになるのかも?と思います。
元来サービス精神が旺盛なんだろうなぁと思います。

で、毎週のレッスンも、実はその日がやってきて、いざレッスンが始まるまでは、もしかしたら怖いのかもしれないです。
勢いこんで、いつも走ってやってくるのは、怖い気持ちを振り払って、勢いをつけてるのかな?

そう思って考えてみると、そんな風にも思えて。
ああ、ほんとうに・・・ことちゃんってば!

それでもあんまり心配していないのは、彼女のおかあさまがものすご〜く賢くて愛情深い人だから。
先日、他の生徒と同じように、レッスンノートにびっしり、ことちゃんのピアノの、性格の素敵なところを書いて渡したら、同じくらいびっしりと、わたしへの感謝とわが子の素敵なところを書いてお返事をくださったおかあさまのその心意気に打たれてしまいました。

たとえば・・・
理解はゆっくりだけど「こと」は決してあきらめません。意外と努力家です。
つっけんどんだけど、しゃべらないけど、ほんとうはとっても愛情深い子どもです。
たとえ家族であっても、人の気持ちを考えると動けなくなっちゃうような子ですが、わたしにとってはそこもすごく愛おしいところなんです。

うちの子たちが小さい頃、ここまで手放しでわが子のいいところを言えなかったな。
誰よりも味方・・・にはなれなかったな。

なんにせよ、ことちゃんについて、もしかしたら?と気がついたことは他にもあるのですが、いつも通りにしておこうと思ってます。
あんな小さなからだで、いろんなことと闘っているのだな。

どうぞうちのピアノ教室が怖い場所になりませんように。
彼女にとってわたしが、いつか信じられる大人になってますように。


さて。

その、ことちゃんが実はわたしに気がついてくれていた学校の音楽会。
この日、たくさんの生徒の学校での姿を見ることができて、とってもおもしろかったわけですが。

うちの生徒たちが、どの子もとても活躍していたことに心底びっくりしました。
(びっくりするとはどういうことだ!というのは置いておいて、笑)

すべての生徒がすっごく楽しそうにステージに立っていたし、どの子も生き生きとしていること。

先日、ご近所で華々しくピアノの先生業を始められたライバル教室があって。
そこの教室に誘われたという人から、笑ってしまう噂が流れてきました。

うちの教室に行っているという話しをしたら、お月謝とか、回数とかを詳しく聞かれたのだそうで。

うちの教室が彼女の教室よりも2割くらいも月謝が安くて、しかも回数が断然多いことを知り・・・「安かろう悪かろう」という言葉もありますしね!って言われていた・・・というものです。

すごい言葉だ!「安かろう悪かろう」(笑)(笑)(笑)

そして、こういうウワサって瞬時にして伝わるもので、隣のおばちゃん(70代後半のお習字の先生)にまで「おたくの教室、破格に月謝安いんだって?ウワサになってるよ!」とか言われるし(笑)

実はわたし、大学生の時にアルバイトでピアノ教室を始めてから、一切月謝は上げていません。

そんな「安かろう、悪かろう教室」のこどもたちですが、音楽会では、みんなとっても生き生きと音楽を楽しんでいて安心しました。
評判じゃなくて、大事なのはきっとそこ(笑)

初伴奏のモカちゃんの得意げだったこと。
同い年のまだ習い始めたばかりのみさきちゃんも、リコーダーじゃなくてキーボードを弾いていたし。

5年生の、ピアノは上手いけど、いつもナマケモノみたいに「ぜんぜーっ!」とだらけた姿を隠そうともせずに「ちょっとーっ!!パンツ丸見え|!」とわたしに怒られているあいこちゃんは、なんと音楽会の司会をしているではありませんか。

こんな立派な横顔もあったなんて大発見です。

プラス木琴でジュラシックパークのテーマ曲のソロを取っていて、学年で一番ちびっこなのに、その姿の大きく見えたことと言ったら!!
マイクの前に立つたびに、マイクが届かずかかとを上げるその姿もご愛嬌。

一年生は3人いるのですが、2人は声が聞き分けられるくらい、大きな声で歌い、踊ってました(笑)
もうひとりのことちゃんは、最初所在なさげにきょろきょろしていて、ああ、昔のわたしみたい!!ととっても親近感が湧いたのですが(笑)曲が進むにつれ、前が向けるようになって、最後のピアニカは完璧じゃん!すごい!すごい!

6年生のあいこちゃんはやっぱりいつも通りのポーカーフェイスだったけど、彼女が楽しんでいるのはわたしが一番知ってるもんね。

先生の教室の生徒たちはみんな優秀ですね〜なんてあとからうちの教室の保護者の方々に褒めていただいたのですが、「優秀」という言葉はあんまりうれしくなくて。
なんか違うと思ってて。
それはわたしの手柄じゃないし、たまたまそういう子が同時期に揃っただけ。

いやいや、もちろん彼女たちが優秀で全然いいんですけど・・・彼女たちがみんな、音楽を前に、生き生きとしていたのがとにかくとってもうれしかったの。
日ごろこんな風なんだなぁっていうのが見れたのもおもしろかったです。

最近てこずってるあの子もこの子も(笑)だらだら〜っとしている彼女も。

みんなが音楽を前に水を得た魚で・・・そんな子たちの成長を週1で眺められるしあわせを思いました。

今日は4歳児の初レッスン。
彼女は今年も大きくなったらお笑い芸人になる!っていうのかな?(笑)(笑)(笑)
新年一発目のレッスン、どんなテンションで来るのか、怖いけどちょっと楽しみです。