ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 たらの芽とナメクジ

 男の子の生徒が、「ほら〜!見てみて、たらの芽見つけた!」とポケットから出したその植物には、ナメクジがついてました。小4男子の癖に「うぎゃ〜!」とびっくりしてたらの芽ごとピアノの上に置こうとするので、「ちょい待ち!」とティッシュを出してナメクジをつまんでくるみ、表にぽい!ふたりで手を洗って仕切りなおしです。さっき自分が叫んだことはなかったことにして「先生、全然きゃぁとか言わないんだもん、つまんない!」と非難されてしまいました(笑)だってアンタたちみたいに油断ならない子がいっぱい通って来るから、慣れてるのよ(笑)
 小さい子供を相手にしていると、時々途方もないことが起こります。先週から今週にかけては、なぜかみんな爪が伸びていて、わたしは何人の爪をレッスン室常備の爪きりで切ってあげたことでしょう。「先生、足の爪も伸びているんだけど切りたい?!」という男子もいて、「やだよ!」と即答でお断り(笑)ピアノは足で弾きませんから。そうしたら彼、裸足の足の指をピアノの淵に引っ掛けて足の指の間のゴミを取ろうとしたので、「おいおいおいおい!」と絶句!なんてことするのじゃ!子供がいない友人の先生は、「そもそもピアノに通って来るのに、素足にサンダルは許せん!」とカンカンに怒っていました。彼女は数年前に結婚するまでずっと某有名音楽教室の銀座店で教えていたので、そんな子が存在することすら信じられなかったんですって。温室育ちもはなはだしい!わたしは、彼女が信じられません(笑)
 実は7月から3人の生徒が中級レベルに上がりました。わたしのところは、バイエル終了相当、ブルグミュラーに入る頃を初級卒業という風に決めています。がんばっている生徒たちを見ると、わたしもがんばらなくてはと思います。この段階でお月謝も1度だけ、2000円値上げすることにしているので、わたしにとっても収入増となるわけで、余計にうれしいというわけです。
 さて、さきほど触れた「たらの芽」の彼はいまどき珍しい4人兄弟の3番目です。この子といえばという、去年のとっておきのエピソードを。彼がある日、レッスンに通ってきたとき、前に幼稚園児がレッスンしていました。彼女の妹(生後8ヶ月です)を抱いたおかあさまが、真剣に眉にシワを寄せてお部屋の中を右往左往。なぜって、妹がずっとぐずっていたから。とても暑い日だったので、外で待っていてもらうのも悪くて、入ってもらっていたのです。わたしよりも、おかあさまと生徒がわたしに遠慮してイライラしているのがわかり、なんとか空気を換えたいのだけれど、困ったなあと思っていたの。
 そこに現われた彼が、「ああ、眠いんだね。眠いからぐずっているだけだよ。こりゃ、もうすぐ寝るね。」と自信たっぷりに言ったのです。急に空気が和んでおかあさまとわたしは顔を見合わせてにっこり。生徒本人もなんとなくにこにこ。そうしたら、赤ちゃんも魔法のようにホントにすぐに眠ってしまったのです。赤ちゃんって案外敏感だから、みんなのイライラがなんとなく伝わっていたのかもしれません。
 彼一人になってから、「すごいね!まるで魔法使いみたいじゃない?!言ったとおりになったよ!」と言ったら「だてに、あかんぼの時から、そこら中連れまわされてないからね!」って・・・そりゃそうだ。なんせ4人兄弟の3番目ですから。多分新米パパ、ママよりもよっぽど赤ちゃんのことを知っているかもしれません。「きっといいパパになれるね」なんて言いながらなんだかほっこりしたできごとでした。彼の夢はジャズピアニストだそうで、そんなことを言った生徒は始めてなので、期待しています。わたしの大学の先輩にはかの山下洋輔氏もいて、思わず彼みたいになった生徒を想像してドキドキしてしまいました(先生バカなんだから、笑)