ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 「Soaring」(飛翔)・・・したいです。

 先週からレッスンが始まっていたとはいえ、時間がぐちゃぐちゃだったので、実質昨日から平常営業という感じです。特に昨日は朝の大人の生徒さんから始まって、5人がやって来るということで、「あ〜あ!」なんて感じかと思っていたらそうでもなくて、朝からなんだかわくわくそわそわ。久しぶりと言うほどでもないのですが、みんなに会えてうれしかったです。してみると、この仕事、結構好きなのかも。
 ところでバッハのインベンションの8番を持ってきた子が、ほぼ完璧にミスタッチひとつなく仕上がっていて、すごいねえとほめちぎったのに、次の曲がぼろぼろでした。ギロックの叙情小曲集の「soaring」(飛翔)という曲です。
 フラットが三つついていて、変ホ長調なのですが、そんなにむずかしいかなあ?と首をひねってしまいました。譜読みなんかはバッハより絶対にこっちの方が簡単だと思うのだけれど。
 そうしたら、彼女が「フラットとかシャープは付くなら5個か6個付いていた方がいっそのこと潔いと思う。なんで中途半端に3つかなあ」なんて口を尖らせて言うのです。「そうかなあ?」と笑いつつもちょっと共感。3個とか4個あたりが確かに一番弾きにくいかも。確かに中途半端、その上更に臨時記号がわんさかついていて、ナチュラルにしたかと思うと、次の小節でまたフラット、そしてそれらにひっそりと混じる、ドのフラット(これは、普通のシの音を弾きます)「気が狂いそう!」なんて言うので大げさだなあと笑いつつも、ちょっとだけ共感しました。
 そういえば昔学生時代にバンドのキーボードを頼まれたことがあって、他の楽器の転調はピアノほど大変じゃないんだと驚いたこともありましたっけ。子供の頃のわたしは、シャープ4つのある初歩のピアノ曲を嫌悪してましたっけ。そうだった、そうだった。芋づる式に、苦手なことを次々思い出したので、彼女に話して安心させてあげました。その時は絶対に克服できないと思っていても、振り返れば案外楽々超えられるスランプは思いのほかそこら中に転がっているのです。
 途中、弾けなさすぎてどんな曲なんだかさっぱりわからないというので「Soaring」を弾いてあげました。この曲は本当に素敵な曲です。やさしさに溢れていて、誠実なイメージ。そんなやさしい風に乗って飛翔できたらいいなあ・・・なんて思ったら、この曲の世界が身に沁みました。負けないでがんばって!!
 飛翔と言うとシューマンの飛翔が有名です。シューマンのも大好きで、試験で弾いたことがあるのですが、あちらはもうちょっと鬼気迫る感じがします。追い込まれても、つらくてもがんばる・・・みたいなイメージなのです・・わたしの中では。それと比べると、もうちょっとのほほんとしたこちらの飛翔もいいなあと思うのです。レベル的には、多分ギロック版の方がずっと手が届きやすいです。ブルグミュラーソナチネあたりと並行できるし、もう少し先まで行った人なら余裕を持って弾けます。人生経験豊富な大人の生徒さんにも、ぜひオススメの一曲です。