ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 エリーゼのために

 土曜日に6年生の女の子が、「わたしはベートーベンは苦手かも!」と弱気な声で言いました。
 彼女はただ今、「エリーゼのために」と格闘中。最後の方のアルペジオと半音階がどうしても弾けなくて苦戦中です。「エリーゼ」は彼女が出会った最初のベートーベン。
 なのでわたしは、「『エリーゼ』をちゃんと弾けるようになったら、ずいぶん感想が変わると思うけど。この1曲でベートーベンという人を全否定してしまうのは早いかもよ。い〜っぱいあるんだから、ベートーベンの曲は!」と返しました。それでも、「多分何を弾いても何を聞いてもダメだと思う」と彼女。がんばるなあ!!
 「月光」だって「熱情」だって「テンペスト」だってあるんだし、ヴァイオリン・ソナタの「春」のように穏やかな春の日差しのような曲だってベートーベンだし。歓喜の歌みたいなフロイデ!ってな曲もあるんだけど(笑)食わず嫌いをしないで一回聴いてみたらいいのに。
 いろいろ言いながら思い出したのは、バッハのインベンションの1番、両手が対等に動くそのパターンになかなか馴れなくて、「バッハなんて嫌いだ〜!」と思った過去のわたし。
 今ではイタリアンコンチェルトやら平均律曲集やらパルティータやら、好きな曲は数え切れないほどあるのですが、「バッハは絶対に苦手だ!」と思い込んでいた時期がありましたっけ。
 生徒を見ていると時代は変わったけれど、やっぱり中身は一緒じゃん!と思うことが多いです。
 さて、そんな中級組たちのレッスンはマイペースに進んでおりますが、ただ今初歩の初歩の子たちが3人やってきて、そのはりきりっぷりがかわいくてなりません。
 先週の火曜日の2年生の女の子は、うれしすぎて20分も前に我が家の前に到着しました。買い物から帰ったらもう家の前で待っていてびっくりです。
 別の子は、3年前におねえちゃんが習い始めた時のお試しレッスンにも付き添っていた女の子Mちゃんです。
 おねえちゃんがお試しを受けている間中、小さい彼女がずっと泣いていたので、何か気に障ったのかとドキドキしていたら、全然違っていて、おかあさんが「自分も習っていいよ」と言ってくれないことに怒って泣いていたのでした。
 お母さまはその時、「あなたはスイミングを習い始めたばかりでしょ。おねえちゃんと同じ3年生になって、その時までにちゃんと納得がいくまで泳げるようになったら、あらためてピアノを習いましょう」とおっしゃったそうです。
 その後その話題は一切出なかったので、おねえちゃんもおかあさんもMちゃんが忘れていると思っていたら、3年生になった途端、「わたしは、ピアノいつから?」とおかあさまに直談判してきたのだそうです。そんなこんなで彼女は6年生のおねえちゃんと共に通って来ることになりました。
 3年前の約束をちゃんと覚えていてくれたMちゃん。おねえちゃんが受けたお試しレッスンを見学して以来、レッスンを受け始めるこの日を心待ちにしていたとお母さまに聞き、ものすご〜く引き締まりました。これで「実際やってみたら、ぜんぜんつまらないよ」と思われたら哀しいし、期待には答えたいし。プレッシャーの中、日々悪戦苦闘中です(笑)