ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

[仕事]初めての「ありがとうございました。」

 もう6年も教えている生徒のNちゃん、中2です。この間から「イジメ問題」などで、この日記でも何度か名前を出しています。人よりずっと遅くピアノをはじめたのに、6年目にしてソナタを楽々こなすところもあって、ピアノの腕前はなかなか。多分わたしの言いたいことを一番理解している気がしています。努力家です。感覚的にもわたしと近いものがあるのかもしれませんが、彼女と連弾すると、ことのほかわたしが楽しいです。ここでこんな風に弾きたいわと思うと、何も言わなくてもテレパシーが通じているかのように弾いてくれます。わたしが一から教えたんだなあとしみじみ思ったりします。わたしを超えてもっともっと上手になってほしいなあと思ったりもします。
 ただ・・・ここのところ中学生としては少々道を踏み外しかけている??と思われるうわさが数々。この間はとうとうオトートを激怒させていました。「サイテーだよ、あの自己中オンナ!」彼が女の子に対してこんなことを言うのは珍しいです。同じ班で行動した社会化見学で、コース係りだったくせにコースを立てず、押し付けられたオトートは前々日、半徹夜でコースを仕上げさせられる、当日は班行動の途中で勝手にいなくなる、口汚く男子を罵る、電車の中でマナーが悪い・・それはそれは頭にきたらしく、散々な言いようです。その怒りっぷりがなんだかおかしくて、「ピアノの先生ん家の子だからって容赦しないなんて、なかなか見所があるかもね。」と言ったら、火に油を注いでしまい、もっと怒っています。「もっとオレに同情しろよ!うちの子はどっちだよ?!」とオトート。
 ところでこのNちゃん、中学に入ってからと言うもの今まで何度言ってもかたくなに爪を伸ばしていました。伸びた爪でピアノを弾かれるのは本当にイヤだし、爪が長いままでいいピアノが弾ける訳がないと思っているのですが、言うことを聞かないので仕方ありません。そんなこんなでかなり我慢して見て見ぬふりをしていたわけですが、昨日のレッスンで、突然爪がきれいに切りそろえられていました。目を疑いました。思わず手を取って「どうしたの?爪?」と聞くと、ぶっきらぼうに「切った!」と一言。大げさにしないように気をつけながら、「うまく弾けるでしょ?」と言うと、こくりとうなずいてました。こっそりガッツポーズのわたし。
 それだけでもびっくり、そして奇跡的な出来事とうれしかったのに、帰り際に「ありがとうございました。」と、本当に小声でひとこと。聞き間違えか?と思ったのは、彼女は今まで決してレッスンのあとに挨拶をしなかったので。習い始めの小学生の頃は、「挨拶くらいちゃんとしようよ」と何度も言ったのですが、かたくなに言わないし、そのうちに6年もたって、さすがに最近はもうあきらめムードになってました。こっちからは意地でも挨拶しますが、返答がなくても気にしない。挨拶はするもの・・というのをせめてこちら側からは示してたかったので「さようなら」とか、「またね」と言ってもかばんに楽譜を詰め込むと、毎回無言で門を出る彼女。本当はいけないのだと思うのですが、最近はそんな姿にも慣れっこで、気にしなくなっていた私がいました。
 彼女の場合、ピアノ以外のことで何を言ってもはかばかしい反応がないのは前からだし、ピアノの音を聴かなければ、わたしのことを大っ嫌いだと思ったことでしょう。ただ彼女のピアノを聴く限り、わたしをバカにしているとは思えないし、それでも休まず通って来るんだから、嫌々来ているわけではないはず・・と自分を納得させていたのです。
 そうしたら昨日の彼女の「ありがとうございました。」発言。ああ、余計なことを言わずにずっと待っていた甲斐があったと言うものです。お母様は、「うちの娘、グレちゃってもうダメだわ!」なんておっしゃっていたそうですが、そんなことないのにな〜と思った昨日でした。