東京タワー
- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2001/12/01
- メディア: 単行本
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というわけで岡田くんや松潤はかなり好きですが、あえて映画も見てないし、先入観ゼロ・・・のつもりでしたが、それは無理というもの。どうしても映画の俳優さんの顔が浮かんでしまうのが難点でした。主人公たちは美しい男女としか想像できません。中身は皆さんご存知のとおり、大学生の男の子である透と耕二の側から見た、それぞれの年上の恋人との話なのですが、この恋愛100%な感じが重たくて、ちょっと苦手でした。
わたしだったら(不倫するならという意味ではないですよ、念のため)もう少しさらっとしている恋の方が好きです。デートの時は濃密なときを過ごしても、じゃあねと手を振った瞬間には自分の時に戻りたいです。特に透みたいに、恋人のことだけ考えて昼も夜も過ごし、どっぷりはまって溺れられたらかなり重たくて、逃げ出してしまうかもしれません。
そういう意味では、むしろもうひとりの男の子、耕二くんの方が好ましく思えました。大学生らしくパワフルで、文句を言いつつもきちんとレポートを書き、かわいい恋人もいて、バイトも熱心。そこそこちゃらんぽらんで、でも、隙があってかわいい男でもあります。多少なりとも感情を移入できたのは、彼の方です。結末は気の毒でしたけど(笑)
ただだからと言ってこの作品が嫌いかというとそうでもなくて、なんだか江國さんの書く言葉のリズムとか、散文的な文章とか、彼女の書く物語の中に出てくる音楽などが本当に好ましくて(ビリージョエルとかたまらなく聞きたくなりました)、中身は二の次、三の次にしても、わたしは彼女の文章にいとも簡単に夢中になってしまいます。それから透と詩史おの逢瀬のシーンで出てくるお酒の描写。最近のわたしはお酒を飲んでいませんが、江國さんのお話の中に出てくるお酒の描写が大好きなわたしとしては、これまたとびきりのご馳走でした。こういうものをすべて合わせて味わうと、話の筋に多少違和感を感じても、そんなことはどうでもいいとさえ思ってしまうのです。
彼女の物語を読むときは、ラヴェルのCDに針を落としたいです。(CDだから針は落とさないか!、笑)水の戯れとか、亡き王女のためのパヴァーヌとか、ソナチネとかを聞きながらそこはかとなく深く澄んだ水底をのぞきこむように、彼女の言葉やイメージを追いかけるだけで、なんだか幸せな気分になるのです。
というわけで、作品としてわたしの心を直撃というわけにはいきませんでしたが、久しぶりに江國ワールドを満喫しました。映画のほうはDVDとかになっているのでしょうか?こちらも機会があればぜひ、見てみたいと思います。