ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

天使の卵―エンジェルス・エッグ (集英社文庫)

天使の卵―エンジェルス・エッグ (集英社文庫)

天使の梯子 Angel's Ladder

天使の梯子 Angel's Ladder

天使の梯子」は「天使の卵」の続編で、10年後のお話です。わたしはどちらにも最近出会ったので両方まとめて読みましたが、そういう読み方をしてよかったです。なぜなら個人的にですが「天使の卵」だけを読んだ時点ではそんなに心を動かされなかったからで、「天使の梯子」を読みはじめてやっと、心が物語に入っていけて、「天使の卵」の中の過去物語がはじめて現実感をもって動き始めた気がしたからです。多分「天使の卵」だけを発売当時に読んでいたら、続編が出たと聞いていても食指が動かなかったかもしれません。涙なくしては読めませんと朝日新聞の広告欄で見ましたが、わたしは涙を誘われるほどではありませんでした。
いろいろな場所で書評を読むと、「天使の卵」の方がよかったという人の方が圧倒的でしたが、わたしは断然2作目の「天使の梯子」の方が好きです。「卵」だけでは、愛する人を突然に亡くした人の悲しみや後悔が現実っぽく見えなくて、泣かそうとして作られたお話のように感じられて、心に響かず感情移入ができなかったのです。わたしがひねくれているせいかもしれませんが・・・。
ところがその後で読み始めた「天使の梯子」がとっても良くて、これを読んだことにより(わたしの中では)前作でぼやけてよく見えなかった苦しみや哀しみまでもが身近に感じられ、読み終わってみれば主人公たちにとても親近感を覚え、どこかで探してきて手元に置いておきたいとすら思っています(卵は古本屋で買いましたが、梯子の方は例によって、アネの高校の図書館の本なのです)。
前作では主人公たちの恋路を邪魔する脇役に過ぎなかった妹が時を経て心身ともに成長して、今度は魅力的なヒロインになっていて、そんな設定がそもそもとても好ましかったです。昔の自分たちのようなまっすぐな若い男の子と出会ったことによって、10年前に姉が、そして恋人が亡くなった時で止まってしまっていたふたりの心がゆっくりと解き放たれ、ほどけていくのです。3人が同じ部屋に揃った一夜の場面は、さっさと読んでしまうのがもったいなくなってしまったほどです。
いい本でした。しばらくはいろいろな場面のひとつひとつの言葉を噛みしめるように、いろいろ反芻するんだろうなと思います。