ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

夜のピクニック

きのう、ある楽譜を探して電車で10分ほどの町を2時間近くさまよいました。何とか見つけて最後に本屋をのぞいたら、この本が目に入ってどうしても買いたくなって買ってしまいました。
2時を軽く過ぎていておなかがすいていることに気がついたので、スタバに入ってミストコーヒーをすすりつつ、サンドイッチをほおばりつつ、ついページを繰った(わたしにとっては至福の時です)のが運のツキ。気づけば電車を乗り過ごしそうになりつつ、一気に本の世界へ。寝る暇も惜しんで、さっき読み終わったところです。
夜のピクニック
夜のピクニック恩田陸 新潮社
この作品は、昼夜徹して「80キロを歩き通す」というとある高校の学校行事の一部始終を淡々と追いかけているのですが、ほんとうに味わい深い作品でした。心が「しん」とする感じがして、やさしくて暖かい登場人物たちは誰も彼もとりたてて変わったところのない普通な人たちで、とりたてて大事件が起こるわけでもないのですが、続きが気になってわくわくしながら最後まで読み終わりました。読後感も本当にさわやかで、今とてもやさしい、いい気持ちになっています。本の帯についていた「新作にしてすでに名作」との文句は大げさじゃない!と興奮しつつ思いました。高校が舞台になっているお話ですが、多分どんな年齢層の人が読んでも面白いと思います。一晩歩き続ける楽しさや苦しさが、ふと自分の歩いている人生のようにも思えて来て、どんなにも深くも読めるし、深読みしなくても十分ストーリーだけで引きつけられる物語だとも思うのです。
実はそろそろ「今年読んだ本のベスト5」をテーマに書こうと思っていたのですが、この時期に突然浮上したこの本に、すっかり心を奪われています。
似ているというのは言いすぎな気がしますが、昨日最終回を終えた「一番大切なひとは誰ですか?」をちょっと思い出しました。ひとの気持ちの複雑さや、悪い人がいない感じだとか、それぞれの思いが化学反応を起こして分かり合いながら、それぞれが少しづつ考え方を変えていくところとか。「一番〜」も好きなドラマでしたが、あのドラマよりも「夜のピクニック」の方がよりわかりやすくて、感情移入しやすいお話でした。