ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

空中ブランコ
空中ブランコ奥田英朗 文藝春秋
先日の「イン・ザ・プール」に続いて読みました。2作目にしてわたしはこのシリーズの熱烈なファンになってしまい、読んだばかりだと言うのに続編が見たくてたまらない気持ちになっています。専門的なことはちっともわからないわたしでも、このお話の直木賞受賞は最もだと思いました。こちらはこれから読む方も多いと思うので、思いっきりネタバレしてしまうのはどうかと思いますが、わたしは伊良部先生のキャラクターには慣れてしまったのか、バカ受けして読みつつも前作ほど彼が「変な奴」には見えなくなっており、逆にほろっとする場面が増え、伊良部先生も「あれ、まるで名精神科医みたいじゃない?」(なんて言うと違うみたいですが、笑)という場面が増えていた気がしました。
 それにしても患者たちも皆一風変わった人たちです。最近何の変哲もないどこにもいそうな普通の人ばかりが出てくる小説を読みなれていたわたしにとってはそこもとても新鮮です。タイトルにもなった「空中ブランコ乗り」やら「大学病院の後取り婿」やら「やくざ」やら、「プロ野球選手」やら「作家」やら、登場人物がみんな一癖も二癖もあっておもしろかったです。中でもわたしが一番好きなのはやくざの話で、お腹を抱えて笑いながらも泣きそうないい話でした。みんな生きてると大変なことがあるのね、そうそう世の中って大変だねと共感しつつ、まったく意外な方向に展開していき、ひねくれやのわたしがちっとも陳腐と思わずに「人間って捨てたもんじゃない」と素直に思ってしまっているのです。2作を読んで気がついたのは、伊良部先生も大好きだけれど、看護婦のマユミちゃんが、わたしはとっても好きらしいです。ぶっきらぼうでくわえタバコのまま注射を打つような、太ももを大胆に露出したり、患者の前でも平気で寝転んで雑誌を読むようなマユミちゃんの数少ないひとことに必ず泣かされるわたしなのでした。人が人を好きになるのは、どういうメカニズムなのでしょう?こんな風変わりな女の子がそばにいたらちょっとつきあいづらいかもな、と思うのに彼女に惹かれて仕方ないです。一見「やさしい人」ではないけれど(実は大いにやさしい人だと思うけれど)「信用できる人」だなあと思います。別の日記でこのことは触れたいと思うのですが、わたしは最近子ども達に(わが子他所の子含めて)「優しい大人」だと思われなくてもいいから、「信用できる大人」だと思われる人になりたいものだとつくづく思っているのです。