ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 奈良旅番外編 Another Orion

この日記は旅行記ではありませんので、念のため。
たまたま薄暮の天川で、偶然ひとりっきりになった時、この曲をたくさん聴いてこんな風に思った・・・というのを書きたくなったのです。
そういや「カバ」についても一曲一曲についてちゃんと書いてなかった。ついでだ!書いてしまえ!
ということでここで一緒にカバの感想について触れちゃおうという作戦です。
言ってみればわたしはこの曲を聴くとこんなことを想像するんです・・・という妄想トーク・・・とも言えそうな日記ですので、そう思って軽〜くぱらぱらとお読みいただけたらと思います。
Another Orionという曲を初めて聞いたのは、わたしと同い年のフミヤくん(いつもは親しみをこめてそう呼んでいますが、ここからあとはフミヤさんと書きます、笑)がオンタイムでリリースしたその時です。
もちろんいい曲だし、彼のファンというほどではなかったけれども、よく聞いた曲のひとつだし・・・
ということでどこかで耳にするたびに、なつかしいと思ったり、テレビの前に寄って行って気にして見る曲のひとつでした。
さらに、この歌はご本人が生で歌うのを聴いたことがあります。しかもわりと最近。
きっと同じところでお聞きになった方がたくさんいらっしゃることと思いますが、「Voices meets Romantic Beat-Pray for Stars-」。豪太さんとフミヤさんが企画されたおととしの七夕フェスです。
あの時は「ああ、七夕だからこんなにロマンチックな曲を選んだのね」と思った気がします。
悲しい曲という認識はこの時もやっぱり感じなかったのです。
フミヤさんもまっすぐに心が飛んでくる、いい歌を歌うなぁとは思ってました。
ところが、初めてつよしさんバージョンの「Another Orion」をラジオでものすごく無防備に聴いた時、不意にとんでもなく悲しくなってきて正直面くらいました。
ちょっ、ちょっと待って!!この曲、こんなに悲しい曲だったっけ?・・・
歌詞をよくよく読みこんで見れば、もちろん楽しい歌であるはずはないのですが、フミヤさんが歌っているのを聴いている時は、前向きな別れの歌という認識で聴いていたみたいです。
たとえば今日のところはここでさよならだけど、僕らはいつだってまた会えるから!・・・的な軽いバイバイ。
もしくは、一旦は別れを決意したふたりだけど、きっと僕はもっと大きなオトコになって、きっと君を迎えにくるから・・・的な前向きな別れの歌。
そしてこの歌声からは、主人公の男子(イメージの中ではもちろんフミヤさん)のまっすぐさ、男らしさ、男気のようなもの?が伝わってきて、とってもいいなぁと思っていたのです。
ところがところが・・・
つよしさんバージョンは、聴けば聴くほど「どこか今生(こんじょう)のお別れ」的なとんでもないせつなさが襲ってきて、せつなさに胸が締めつけられるような気持ちになるではありませんか!!
これはどうしたことでしょう!!
無防備に聴き始めたのに、いつの間にかびっくりして本気モードになって、2時間くらいただただ音源をリピートしたいつぞやかの土曜の夜中。
そりゃあもうびっくりです。
で、アネと話したのが、つよしさんバージョンを聴くと「千と千尋の神隠し」の千尋とハクとの別れのシーンを思い出す・・・
ここでは珍しく、わたしたち二人の意見が一致しました(笑)
意外と知らない方もたくさんいらっしゃるみたいなので、おぼろげな記憶ながら「千と千尋の神隠し」のあらすじをちょろっと紹介すると・・・
千尋はひょんなことから両親と共に異世界へ迷いこんでしまいます。
そこは見たこともないレトロな町で、豚に変えられてしまった両親とも離され、帰ることができなくなった千尋八百万の神たちが入りに来る湯屋で働き始めるというお話です。
そのどこかなつかしい昭和の香りがする湯屋の風景は、わたしにとっては、どこか洞川温泉街に共通するイメージがある気がして・・・
千と千尋の世界から洞川温泉、大きな存在感のある川、満点の星空・・・とどんどん想像の翼が広がっていって「Another Orion」へと行き着きました。
物語の中に出てくる異世界で出会ったやさしい少年コハクは、実は、千尋が小さい頃よく遊んだ近所のコハク川の化身の白い竜でした。
ちなみにコハク川は今ではもう埋め立てられてありません。
物語の中で仲良しになり、支え合い、一緒にいくつもの問題を解決したふたりには、やがて別れなければならない時が訪れます。
とうとう千尋異世界から日常へと帰って行く日がきました。
「またいつか会えるよ」とハクは言いますが、実際一度元の世界へ戻れば、コハク川はもう埋め立てられマンションになっているのだし、もうハクとは会うこともないかもしれません。
そしてハクが言います。
「いいかい。この道をまっすぐ行くとおとうさんとおかあさんが待ってるから。トンネルを抜けるまで、決して振り返ってはいけないよ。」
(すいません、よく覚えてなくててきとーです、笑)
千尋はハクとの別れを寂しく思いながらも決然と・・・前を向いて歩き出します。
つよしさんの「Another Orion」を聴いていると、まだまだ幼さの残る顔で一生懸命前を向いて明日に向かって一人で歩き出す千尋が浮かぶような気がする・・・なんて娘と話してみたら、一緒のイメージを持って聴いていたことがわかりました。
「そうそうそういう感じ」「わかるわかる」そもそも生きてきた時代が違うし、日頃聴いている音楽が違うわたしたち親子が、ひとつの曲を聴いてこんな風に一致したイメージを持つことはとっても珍しかったので思わず顔を見合わせてびっくり。そしてニコニコ(笑)
たとえその姿は見えなくても、いつだって僕は君のそばにいるよ。そして君の味方だよ。空を、オリオンを見上げてごらん。そして僕を思い出して・・・
そのセリフをハクが吐いても驚かない(笑)
すっかり妄想的イメージが固まってしまいました・・・わたし的に(にゃはは。)
Orionは相手を思うまっすぐな気持ちの象徴でもあって。
たとえ空が曇り雨が降ってその星が見えない日であっても、いつだってそこにあって〜。
儚くて蜘蛛の糸のように細くて頼りない糸のような絆だけど、双方を思う気持ちさえあれば、いつだって二人は気持ちを通わせることができるからね。・・・みたいな。
ああ、Love Love Loveとも繋がるような、天国から見守ってくださっているご先祖さまのようなイメージすら沸いてきます。
天川村洞川温泉の橋の上でこの歌をじっくり聴いていて、途中からイメージの中に「縁を結いて」も混ざってきちゃったのですけれども(笑)つよしさんが歌うAnother Orionには、すごく頼りないようで、でも雨にも負けず、風にも切れない蜘蛛の糸のような強さを感じます。
抑え目のイントロから始まって、間奏のドラマチックに転調する部分で開花するようなピアノの音も元々すごく好きなのですが、川の上で聞いていたら、このピアノから水面が揺らめいいているような不思議なイメージが湧きました。
お日さまが当たったり風が吹いたり、静けさの中で刻々と姿を変えていく水面のようなイメージ。
じっと目を凝らしていないと気がつかないでするっと通り過ぎてしまうけれど、立ち止まってみるといろいろなことが見えてくる・・・
そんなことを存分に思いながら、ややしばらく洞川温泉街の景色を眺めながら聴いた「Another Orion」のことを、きっとわたしは忘れないだろうなぁ。
ついでに触れて起きますと・・・
僕らの音楽」の時にフミヤさんとコラボした時のこの曲もよかったです。
この時のフミヤさんは、つよしさんの歌い出しからとても気合が入っているように見えました。
まだマイクが入っていないのにすでに一緒に口を動かしていたし、まるで新人のように大真面目に、歌の世界観にまっすぐに取り組んでいる感じがとても伝わって胸をつかれました。
つよしさんは自分よりもずっと若いシンガーですが、彼もまた真剣にこの歌に取り組み、フミヤさんやこの歌に対して大いに敬意を表していることは、多分ご本人にも十分にも伝わっているように見えました。
だからこそ、そんな若いシンガーと歌うという機会を得て、フミヤさん自身のアーチスト魂にも、火がついたようにも見えました・・・ものすごく。
実際にフミヤさんが歌い出したら、声もとてもよく出ていたし、その表現に頼もしい大人の大きな背中を感じたし、歌に対する真摯さがとても伝わってきました。
一方のつよしさんは、ここでもやはり少し抑え目の表現で、特に最初に交代するまでのフレーズでは、繊細な表現が際立っていました。
それが顕著に現れているのがこの時の指先の表情で、とても繊細な動きをしています。
何かをそっと引き寄せるような指先。すくい取るような、こまやかに感情を揺らすような、ほんとに小さな小さな手の動き。
もっとつよしさんが声を張ればいいのに、本気を出せば負けないのに・・・的なことを言っていた方も見かけましたが、この瞬間、間違ってもつよしさんはフミヤさんに対抗しようとも、彼を出し抜いてもっといい歌を聞かせてやろうとも思っていなかった気がします。
カバは、そんな風に歌わない彼だからこそ、原曲の歌い手さんにも受け入れていただき、様々な世代間コミュニケーションや化学反応を生み、原曲のファンの方、原曲を歌う方のファンの方からも多く好意的に見ていただけたのではないかなぁと思うのです。
だからと言って、このコラボでのつよしさんが、過度にフミヤさんに遠慮しているようにも見えませんでした。
たとえば「オリオン」について歌いながら、澄んだ瞳が自然と星を見上げるように動いたり、その表情の動きからも、歌の世界観の中にすっぽりと入りこんでいるように見えました。
それはフミヤさんのマネでもなく、あえてフミヤさんに合わせようとした歌声でもなく、つよしさんはつよしさんの表現を、フミヤさんはフミヤさんの表現をそれぞれ貫きながら、それぞれが不思議とバラバラにならず、美しく歌い継がれているイメージ。
こんな風なコラボも成立するんだなあという新鮮な驚きを感じました。
武部さんのピアノがまた素晴らしくて、出だしはとても抑えた感じに淡々と始まり、フミヤさんパートは力強く、つよしさんパートは繊細に、上手に一人ひとりの表現に寄り添って弾き分けていらっしゃるように聴こえました。
もちろん音楽というものには多分に好みという部分があって、どちらの表現が好きな人もどちらの表現が受け入れられない人もいて当然だと思うし、だからと言って、そのことでどちらかの人間を否定しているわけでもないわけですが・・・
こんな風に歌うことによってお互いが更に切磋琢磨されることを考えるなら、やっぱりこれからもどんどん自由なカヴァーが増えればいいと思うし、カヴァーによる世代やジャンルの違うアーチスト間の交流がもっと活発に行われてもいいのでは?と思いました。
そうなんです。
ここでもまた、拓郎さんのラジオで聴いた時に感じたのとどこか共通した感情が出てきました。
つよしさんが伝えたかったこと、表現したかったこと、こだわりの一端が垣間見れた気がしました。まだまだうまく表現できないのですけれども。
というわけで、shamanippon祭りも開催しつつ、まだまだカバな旅も続いているわたしなのでした。
そしてそして、そろそろリミット・・・いい加減お腹がすいてきた・・・というロマンチックとはほど遠い理由で旅館に戻ることにしました。結末がお粗末です(笑)
ちゃんちゃん。