ふぇるまーた2

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 最近読み終わった本たち その2

☆ルポ・認知症ケア最前線 佐藤幹夫

ルポ 認知症ケア最前線 (岩波新書)

ルポ 認知症ケア最前線 (岩波新書)

この本はオトートが学校のレポート用に読んでいたものですが、テーマがとっても気になったので、あとを追って一緒に読ませてもらいました。
今現在の認知症ケアの最前線ではどのような現状でどんな問題点があり、それらについてどのように取り組み、切り拓こうとしているのか日本各地の試みを紹介しています。
この本を読んで最も印象に残ったのは「認知症ケア」というのが認知症の患者さんのためだけにあるものではないということです。
ケアを必要とする人、ケアを担う人の両面で考えるということがとっても重要なのだそうです。
確かに友人やご近所に認知症のお身内の介護に携わっている同世代が何人かいて、みんな本当に大変そうで、ご本人ももちろん辛いでしょうが、支える人もまた辛い。
先日も犬の散歩中の立ち話で介護をしている友人に行きあったのですが、子どもたちが小さい頃の育児とも似て、ものすごい閉塞感と孤独感があって、たとえ犬の散歩でも外に出るとホッとすると言ってました。
パワーを奪う最も重大な事実は子育てはだんだんに楽になるけど、ケアは大変になっていく一方だから・・・というひとことはとても重く、ただただ相槌を打つばかりでした。お疲れさまです。
そしてもちろん人ごとではありません。幸いにもわたしの両親は現在のところ健在ですが、父も母も70代。父は後期高齢者という年齢になってきましたし、いつ自分に降りかかってきてもおかしくない問題です。本当に。
というわけで、今最前線でどうなっているのか知っておくべきだと思ったし、今後のことも考えてまとめておきます。
若干いつもと比べると硬い文章になっちゃってるかもですが、ご興味がある方は続きを読むからどうぞ。
この本では認知症ケアを大きく4つの課題に分けて書いてあります。
病気の治療とケアの最前線の話。
地域社会全体で支える仕組み作りの取り組み。
そして「支える人を支える仕組み作りの大切さ。」
さらにもうひとつは単身で独居の認知症高齢者をどうサポートするかという課題。
ここからは箇条書きで本文中の覚えておきたいことを記しておきます。

1.患者さんの治療については、様々な研究が進んではいるものの、まだ有効な治療法が見つかったと言える段階ではないのだそう。

2.今後の進むべき方向性は、認知症になってもできるだけ長い間、住み慣れた地域、家での暮らしを続け、できればそこで人生を全うできるようにすること。

また財政的な問題もあり、互助の仕組みも作らなくてはならない。
究極は在宅でいい死に方をするためにはどうしたらいいか・・・ということを考えるべきである。
これらを踏まえ、結論付けられていたことは
認知症ケアの基本は人間的な暮らしを支え、生きていくことそのものを支えるものでなくてはならないということ。


3.まだまだ認知症が軽度であるうちは、今何をしているかを紙に書いてよく見えるところに貼っておくことも有効である。(博士の愛した数式を思い出しました。)
またデイケアーセンターなどでも、与えられたテーマで受身で活動するだけではなく、今日することを自分たちで決めて企画、活動する、できることは自分でするのもとっても有効なのだそうだ。
患者さん本人が自分でやりたいことをやり遂げることにより、「生きる力」が殺がれてゆくことへの対応をするという取り組みがあるそうだ。
キーワード「認知症になったことはあきらめるが、これからの人生はあきらめない
という言葉がとても印象的でした。最もです。


4.富山型デイサービスという形。
これは地域密着型であると同時に、たとえば障害者健常者、赤ちゃんからお年寄りまでが一緒に暮らす共生型スタイルである。
たとえば、認知症のお年寄りが赤ちゃんをあやしたり、小さい子供の面倒をみたり触れたりすることによりお互いがよい刺激を受け、生き甲斐を得ることもでき、更に地域における居場所や受け皿の役目も果たす。
更に、有償ボランティアというかたちで、これまで一方的にサービスを受けるだけだった人たちにとっての自立を探る一助にもなっているのだそうだ。

5.幼老複合型施設全体の名称「ベルタウン」の乳幼児と高齢者の定期的な交流が日常的に行われている環境もまた共生の一例でたくさんの成果をあげているそうだ。そういえば、こういうの、幼稚園ではなくて中学校ですが、金八先生のひとこまで見た気がします。

6.支える人を支える仕組みについて。
ケアラー(家族など無償の介護者)が求めていることを知り、援助するシステム。
地域の連携の確立、ケアラー連盟を作ることなど、介護者を守るという視点が実はとても大切であるという考え方。
たとえば家族の会で「まずは自分の人生がある。そこにうまくバランスを取りながら介護を入れてゆくように」と助言をする。
介護者はいきなり泳ぎ方も知らないのに、突然海に放り出されたようなものだから、適切な介護者教育を受けさせてあげることも必要となってくる。
一例として挙げられているのは、介護者と被介護者を切り離さずに託児所付き母親サロンの発想で、介護者と認知症の患者さんがそれぞれに活動、意見交換など様々なことができる場を提供するというものがあった。
これらに関しては、民間だけでもダメ、行政だけでもダメ、NPO法人だけでもダメで、それぞれがタッグを組んで、現場に入っていくことで、お互いが補い合い、家族だけの問題だけではなく介護を総力戦として捉えることができる。


7.単身で独居の認知症高齢者をどうサポートするかという問題は、これから更にたくさん増えるであろう単身で独居のお年寄りのことを考えるとこれらの整備は急務であると思われる。
大阪や東京などの大都市圏では、成年後見制度の利用が増加し、世田谷、品川、多摩南部、大阪などでは市民後見人養成講座も始まっている。
中でも小樽市のように、独居を見守る見守り制度を整備しつつある自治体もある。
ひとつひとつのつながり方は、ひとつの地域文化の形でもある。つながる仕組み作りの重要性が広く浸透すれば、もっとその地域に固有のアイディアが出てくるはずである。


8.国の人口構成や高齢化、核家族化が進むにつれ、益々認知症の人は増えてゆくのに、それらの人たちを支える分母は決して増えてはいかない現状がある。


9.また医療の進歩により、平均寿命はどんどん伸びているから、ひとりの介護者が介護をする年月も益々長いものとなっている。
このような時代の中で、誰もが幸せに安心して暮らしてゆくためには、たくさんの工夫が必要。