ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 万寿子さんの庭

万寿子さんの庭〔文庫〕 (小学館文庫)

万寿子さんの庭〔文庫〕 (小学館文庫)

 
 また一気読みしてしまいました。
この本は、78歳の万寿子さんと20歳の京子ちゃんの物語です。
本のデータベースをネタばれになりすぎないように、途中まで引用すると

竹本京子、20歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、引っ越しを機に変わり者のおばあさん杉田万寿子に出会った。万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通して、意外にも二人は仲良くなってゆく。
(続く)

という風に書いてあります。
最初、イジワルばあさんみたいに見えた万寿子さんと、フレッシュマンの京子ちゃんがどんどん友情をはぐくんでいくあたりの描写は楽しくて楽しくてわくわくしながら読みました。
わざと相手がいやがることをしたりちょっかいを出したりする万寿子さんのやりかたは、小学生男子みたいでもあります。
しかし、最近の傾向として、人と人とが一定の距離を置いていて、なかなか心を開き合えない、本音を見せ合えないところがあるので、こういう万寿子さんのように「怒り」という感情を刺激して、相手がぶちぎれるのを待つ…っていうのもある意味仲良しになるためのおもしろい作戦かも!?
もちろん一歩間違えたらとっても嫌われてしまう可能性もありですが(笑)
ともあれふたりは仲良しになって、とても素敵な時間を共有し、共通の思い出をたくさん作っていきます。
途中、ちょっとしたロマンス?系の話も出てきますが、そこはどうやらこの物語としたらさして大切なポイントではなかったみたいで(笑)物語の中で別の位置づけ!?として男性陣が描かれるようになります。
この男の子たちと京子との関係もとってもいい感じでした。
万寿子さんとの楽しい時間に翳りが出てくるあたりからの描写はいきなり現実が迫ってきて、しかしどこかファンタジーちっくなオブラートに包まれて、現実離れしてみえるところもありましたが、そんなことはあまり気にならず読めました。
まだまだ大人としての道を歩きだしたばかりの女の子と、人生の大先輩の老女の友情は、どこまでも対等でまっすぐで、ふたりの相手を思う心がとってもきれいで心を打たれます。
わたしは常日ごろから、同じくらいの年の人を選んで仲良くなりたいとは思わない方です。むしろどんな年齢の人とでも友情は成り立つと思っていますが、この本を読んでいたら、まだまだ今後も素敵な出会いが人生にはいっぱい転がっているかも?!と思わされました。
この人とは仲良くなれるはずがないとか、あまりにも年齢が違い過ぎるとか、環境がとか日常がとか…違いにばかり目を向けずに、新しい出会いに対しては常に心をまっすぐに開いていたいです。