ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

 この本の表紙の絵を見てびっくりされた方もいらっしゃるかもですが…(笑)
そもそもこの本を知ったのは、NHKのクローズアップ現代です。この日のテーマは『よみがえる“経営の神様”ドラッカー』でした。
ドラッカーというと、経営学の神様と呼ばれている方で、日本でも数多くのビジネス書が出版されています。実際にオットや父からドラッカーの名前を聞いたことがありましたし、我が家の本だなにもありました。
 名前は聞いたことがあったけれども、ドラッカー初心者のわたしはこの日のクローズアップ現代でゲストの糸井重里さんとドラッカー学会代表の上田惇生さんの話にすっかり惹きつけられてしまって、ぜひぜひ彼の考え方にもっと触れたいと思ったのでした。
その時に手帳にメモったキーワードはこんな感じです。

企業にとって、人こそ最大の資産である。
顧客は創造しなくてはならない。
組織は人をしあわせにするべきだ。

とはいえ、わたしはそもそも頭があんまりよろしくないし、年々歳々さらに頭を使うことがむずかしくなってるし(笑)むずかしい本にいきなり食らいついていく元気がないのよね〜と思ってたら、番組で紹介されていたのが上の本だったというわけです。
クローズアップ現代によれば、この本は今とても注目されているのだそうなのです。
経営の神様のエッセンスを紹介するための本でしょう!?いくら表紙が萌え系だからと言って、中身はそのままむずかしいんじゃないの!?というアナタ。それが全然なのですよん。
だからと言って「人気」って言うのは言い過ぎじゃない?と思っていたら、一昨日の『ベルリン』が5位だっためざましテレビのブックランキングで、総合一位が本当にこの本だったのでさらにびっくり。自分がはまった本でもあったので、とてもうれしかったです。
クローズアップ現代を見た日、オットが会社から帰ってきた時に、興奮気味に「おもしろかったんだよ!!」とその話をしたら「多分オマエは絶対にドラッカーにめちゃはまるタイプだと思う。読んでみたら?」と言われました。そこですぐにamazonさんに頼んだというわけです。
わたしのみならず、これからの日本を担う世代のアネやオトートにも読ませたいと思ったということもあります。
ところが…旅行先で読み始めたらこれがおもしろくて、移動中はとにかくずっと読んでいて、とうとう家に帰る前に、新幹線の中で読み終えてしまったという…。
思ったよりずっとドラッカーが前面に押し出されていて、文章の引用も多数ありましたし、ストーリーもおまけという感じではなく、ちゃんと動いてました。
とりあえず読んでみることをお勧めしますが、さわりの方でとっても心に残ったドラッカーの引用のところをいくつか紹介しておきます。
たとえば

企業の目的は顧客の創造である。

我々は何を売りたいかではなく、顧客は何を買いたいかを問う。

「我々の製品やサービスにできることはこれである」ではなく「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」という。

成長には準備が必要である。

いつ機会が訪れるかは、予測できない。
準備をしておかなくてはならない。
準備ができていなければ、機会は去り、他所へ行く

専門家は専門用語を使いがちである。ところが彼らは理解してもらってこそ初めて有効な存在となる

人を活かす

人は最大の資産である

「働きがい」は人を動かす魔法の杖

市場において目指すべき地位は、最大ではなく最適である

成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸である。まちがいや失敗をしない者を信用してはならない。人は優れているほど多くのまちがいをおかす。優れているほど新しいことを試みる

一方、物語のストーリーは単純明快で、主人公の女子「みなみ」が弱小野球部のマネージャーとして、球児たちを甲子園へ連れていくという目標を達成しようと奮闘するという話です。
入院している親友、野球部の男子だち、マネージャー仲間、顧問の先生が主な登場人物です。
みなみは、マネージャーってどんなことをすればいいの?と本屋にマニュアル本を探しに行って、間違ってドラッカーの『マネジメント』という本を買ってしまいます。店員さんによれば、「マネージャーあるいはマネジメントに関してこの本が世界で一番読まれた本です。」というのが、このドラッカーの『マネジメント』なのです。
「もちろんその本は野球のマネージャーの入門書であるわけもなく、企業経営について書かれた本だったのですが、読んでいくうちに、この本が単に企業経営についてだけ書かれた本ではなくて、企業を含めた「組織」の経営全般について書かれていることを知るのです。
野球部も大きく考えれば「組織」のひとつだから、応用できるはずとみなみは考えます。
読者はみなみと一緒に野球部のあり方を通して、ピータードラッカーの『マネジメント』のエッセンスを読み取っていきます。
そんなわけで、とてもとても読みやすいです。
至る所で引用されるドラッカーの言葉が多少むずかしくても、野球部の話を例えにあげて考えているうちに、ああなるほど〜と更に理解しやすいです。
最後の方のストーリー展開はちょっとだけ読めてしまって、果たしてこんなエピソードはいるの?と思ったところもありましたが、中学生や高校生がストーリーだけを追いかけて読んでも面白いし、何か残るものがあることと思います。
わたしがこの本を読んで、まっさきに思い浮かんだ組織はというと、以前勤めていた企業ですが、のみならず、家族もまたひとつの組織だからよりよい家族関係の創造のためにもこの本のエキスが役に立つなあと思ったり、PTAとか自治会とか、忘れちゃいけないピアノ教室のこととか…いろんな場面で応用できそうだと思いました。
 わたしは今、家にあった『ドラッカー入門』という本を読み始めているのですが、入り口さえ入ってしまえば、言っていることはそんなにむずかしいことではないし、わたしたちの日常の暮らしのノウハウにも通じるものがあり、勉強になります。
ドラッカーの理想としていることを読んでいると、OLもなりたての頃に出会いたかった本だなあとしみじみ思います。
わたしが入社した頃はバブル真っ盛りでしたが、「企業の目的は利潤の追求のみ!甘えた根性のやつはやめてもらう」という考えを徹底的に教育された覚えがあって、それはあたりまえのことと受け止めがんばりましたが、なんとなくもやもやした気持ちが残ったのも事実です。
入社翌年に、新人教育のお手伝いをした折に、まさしく前年新人教育をしてくれた40代くらいの新人教育担当の男性が、「とにかく一回新人は鼻をポキンと折ってやらないと!」と豪語したことも忘れられない後味が悪い思い出です。
いつも思うのですが、子育てにしても仕事の仕方にしても、常識にしても苦言というヤツは本当に必要な人にはなかなか届かないものだし、そんな脅しなど必要ないまっすぐにがんばっている人に限って、それらの言葉を必要以上に受け止め堪え、傷ついてしまうような気がします。なんだかとっても理不尽です。
更にそんな昔のことを20年以上経ってもしぶとく根に持っているわたしもヤだわ。執念深いことはなはだしい(笑)もちろんだからと言ってOL時代の思い出全体がグレーなわけでは全然ないのですけれども。
 ドラッカーの言葉はとても前向きで、パワーをもらえます。
さあがんばろう!という人の出鼻をくじくようなことはひとつも書いてないし、人としてまっとうなことがまっとうな言葉で述べられています。
というわけで、日々の生活に疲れ、なんとなく斜にかまえてしまいがちな方にもぜひぜひお勧めの一冊です。