ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 東儀秀樹 全国ツアー2009 feat 古澤巌 『地球よ』 9月6日 (表)


 薬師寺でも一緒だったショコラさんに誘ってもらって、昨日オーチャードホールに行ってきました。
 3階の前から二列目で、てっぺんまで登るのが結構大変でしたが、とても見やすくて音が美しく響くホールでした。
 「feat 古澤巌」と書いてあって、世界的なバイオリン奏者の古澤氏がどのくらい絡んで演奏されるのかしら!?と思っていたら、ほぼ出ずっぱりでうれしかったです。
 わたしが小さい頃にピアノを習っていた先生の中には、バイオリンも教えていらっしゃる先生もいらして、そもそもバイオリンの音は小さいころから耳馴染んでいて大好きですし、先生の小さな生徒さんが鳴らす音も近いところで何度も聞いていて、いかに美しい音色を安定して鳴らすことがむずかしいかも実感的に知っていたので、一流の音をこんなに間近で聞くことができて本当にしあわせだなあと思いました。
 雅楽についてはもちろんあまり知らないので、無知をひけらかす恥ずかしい文章になることは必至ですので、もし通りすがりにきちんとお勉強された方が読まれたとしたら、先にあやまっておきたいです。無知ですみません。
 もちろん西洋音楽に関する部分についても無駄に長く勉強しているというだけで、あまり実のある文章は書けておりません。恥ずかしいですが、勉強させていただくつもりで書いてみます。
追記:後半部分でなぜか古澤氏のお名前が書いてるうちに違う名前になっちゃってました。すみませぬ。
今朝、とっても気を使いつつご指摘してくださった方がいて、感謝しつつ直させていただきました。ありがとうございました。
拍手コメントにはお名前はなかったですが、ひとことだけその方に私信です。
同じ空間にいらしたそうで、つたない感想に反応してくださってとってもうれしかったです。続きもぜひぜひ読んでくださいね。朝から心がぽかぽか温かくなりました。ありがとです。
 雅楽に関しては正統派の家柄でその道ではいかんなく才能を発揮してはいても、西洋音楽に関してはほぼ独学で、習ったことがないとおっしゃる東儀さんと、普通の音楽家として当然ではありますが、小さいころから西洋音楽の勉強をきちんと積み上げて音楽大学を首席で卒業されて演奏家になられた古澤さん。
 このおふたりの音楽はうまく絡みあうのだろうか!?という秘かな疑問を感じていたのですが、始まってみればどの曲においても、和の楽器とバイオリンのコラポレーションがあまりに美しくて息を飲みました。
 和の楽器は西洋音楽の中でも全然違和感なくはまってましたし、逆にバイオリンが「越天楽」の中で奏でていても不思議と絶妙なブレンド具合で、和洋折衷な感じはまるで抱かずに聴いていました。不思議です。
 もちろん音楽に国境はないと思いますし、旋法や楽譜が違ったとしても楽器は楽器だから…と頭では思っていましたが、多分根本的な「歌い方」「歌わせ方」も違うと思うし、これほどまでにしっくりくるとは心底意外でした。
 曲目も、東儀さんと古澤さん、それぞれのオリジナル曲を一緒に演奏されたかと思えば有名な洋楽のスタンダード曲が入っていたり、雅楽と言えば!な「越天楽」が編曲された曲があったり、大好きなクラシックの曲がまさかの和楽器で演奏されていたり、とても多彩な音楽で3時間以上の長丁場にも関わらず、全く飽きることなく心躍る時間を過ごすことができました。
 東儀さんという方は、本当に多才な方で、笙や篳篥を演奏されていたかと思うとピアノを弾いたり、バンドを指揮したり、ラップをしたり、かと思うとエレキギターに持ち替えて観客を煽ったり、それはそれはものすごい活躍ぶりでした。
 また1曲ごとにほぼ古澤氏と結構長いMCをされるのですが、おふたりの話もとても楽しかったです。
 後々ショコラさんと、お二人の会話がなぜこんなにほんわかと心地いいのだろう!?という話になって、ふたりともとても親し気なのに敬語混じりのきれいな日本語で話してらして、言葉の選び方がとっても素敵なのだということに気がつきました。品がよくて、でもユーモアにあふれたとっても素敵な方々ですっかりとりこになりました。
 ただ、曲が始まる直前にジョークを投げて投げっぱなしにして楽曲になだれ込むのはやめていただきたかったです(笑)
 ご本人たちはものすごい集中力で、すぐに曲の世界へ戻って行かれるのですが、ジョークを投げられた方はたまりません。せっかくものすごくいい曲にまるごと委ねたいのに、何度か吹き出しそうになって心底困りました(笑)
 それから超蛇足なのですが、やめていただきたいつながりで、なぜかスーパーの袋を持って客席に入ってらっしゃる方がいて、曲に入ると同時に思い切り袋をカシャカシャ言わせながら何かを探してらしたのですが(たぶん飴じゃない!?とわたしたちは想像してました、笑)なかなか見つからないとみえて、盛大にビニール音をさせるので、やめて〜と思いましたのことよ。
 なぜかMC中には探さずに、曲が始まると同時に袋をシャカシャカ言わす…というのが2回あって、その真意を測りかねて当惑してました(笑)
 最も笑ったのが、古澤氏が中国の二胡奏者の方に個人指導を受けた時に、最も感銘を受けたことは…とそこで一旦話を切ったので、その後にどんな興味深い話がまっているのかとわくわくしていたら、「いっこでも二胡」…とぼそっと締めくくってそのまま演奏へ行かれてしまった時で、全然笑うつもりじゃなかっただけにあまりにもくだらなくて、騙された自分がおかしくて「や〜め〜て〜」と横隔膜をひくひくさせながら曲を聴く羽目になりました。
 このツアーでは、アルバム「地球よ」の中の曲が中核になっているのですが、アルバムの中のオリジナル曲の中では最後の「地球よ、やさしくそこに浮かんでいてくれ」がとても心に残りました。
 この曲は東儀さんご自身が、宇宙空間にぽつんと浮かんで、地球を眺めているイメージで作られたのだとか。
 ステージでは星が流れ、ミラーボールを使った照明がキラキラしていて視覚的にも美しくかったのですが、まろやかな音色と心地よい音に、とてもとても癒されました。
 実はアンコール前の大事な一曲なのに、あまりにも心地よくてうとうとしかけて危険だったのですが、家に帰ってからパンフを見たら、地球に対してこんな子守唄を聞かせたいなあという思いで作られたということが書かれていて、あらっ!まんまと寝かされそうになったんだわ!この感覚は正しかったんだなあと思いました。もっともわたしは地球ではないですけれども(笑)
 途中で観劇の時みたいに20分間の休憩がはさまって、東儀さんが休憩前のMCで、グッズも毎年ご自分で楽しみに手掛けてらっしゃること、またツアーパンフレットにはいいことがいっぱい書いてあって、これは一家に一冊置くべきだ!とかおっしゃるので、まんまと乗せられて見に行ったところ…素直に財布を開けてしまいました(笑)
 ちなみにかわいいマンガチックな東儀さん仕様の雅楽師のストラップと笙のチャーム、それからパンフレットを買いました。
 ストラップには古澤氏バージョンもあって、チャームはもちろんバイオリン。ふたつまとめて買われたご婦人方もいらして、ふたついっぺんにつけたくなる気持ちもちょっとだけわかりました(ムフフ)
 そうそう、途方もなく時間がかかりそうな予感がしたので、断念して出てきてしまったのですが、実はパンフレットを買うとおふたりとの握手券というヤツがついていて、終演後長蛇の列ができてました。ものすごい人数のご婦人方が、少女のように紅潮した頬をして並んでらっしゃいましたよ。

 続いて特にわたしの心に残った曲のことをちょっとだけ順不動にメモしておきます。
・「Scaborough Fair」
 実は全編を通していろいろな意味で最も目から鱗だった曲はこれかもしれません。
 言わずと知れたサイモン&ガーファンクルの名曲ですが、この曲がなぜか旧い日本の歌のようにも、ケルトの神話かなにかを歌ったような曲にも、またグレゴリオ聖歌とか、西洋音楽の古い時代の曲のようにも聞こえるのです。
 東儀さんの音と古澤さんのバイオリンが絶妙なハーモニーを奏でて、なんとも惹きつけられてなりませんでした。この曲はもう一度聴きたいです。

・「越天楽幻想曲」 
 前にも書いたような気がしますが、中学校の時、典型的な雅楽の曲として音楽の時間に聞いた覚えがあるのですが、その時は全然いいとは思わなかったのです。
 ところが、最近何度か耳にする機会があって、ちょっとずつ見方が変わって来た曲でもありました。
 今回東儀さんの手によりとっても耳馴染み良くアレンジされていて、初めて本気で「いい曲だ」と思いました。わたし的にはものすごい進歩だと思います(笑)雅楽耳としては、やっとよちよち歩きの赤ちゃんくらいまで来たかしらん!?(笑)
 次は本格的な雅楽を聞いてみたいかも。
 ちなみにこの曲では、東儀さんだけじゃなく、古澤氏とふたりとも狩衣に着替えて出ていらして、場内が騒然としてました。
 おふたりともとってもお似合いだったのですが、その衣についてのMCもとても面白くて、ずっとくすくす笑いながら聞いていたのですが、結構心に残りました。
 ちなみに狩衣は当時の「よそいき」ではなくて普段着なのだとか。そりゃあそうだろうと思ったのですが、古澤氏はその衣を着たことを喜びつつもバイオリンはとっても弾きにくいと話してらっしゃいました(そりゃあそうでしょうとも、笑)

アルビノーニのadagio
 この曲は大好きなクラシック曲の中のひとつです。学生時代から何回聞いたやらわからないくらい聴き倒してきたこの曲を、まさか笙の音で聴くとは…びっくり仰天ですが、何より驚いたのは何の違和感もなかったことです。
 MCによれば、「笙」という楽器はパイプオルガンのルーツなのだそうです。そういえば形がよく似ています。
 シルクロードを通ってこの楽器が伝わったのでは!?というお話を聞きながら、思い浮かべていたのは薬師寺玄奘三蔵院にあった、平山郁夫画伯のシルクロードの大壁画で、想像の翼を広げようにもあまりにも果てしなくて、ただただ「すごい」とした言えないのがもどかしい感じでした。
 この曲を好きだというと、よく「わっ暗!!」とか「根暗なの!?」とか言われますが、わたしはそんなにどん底なイメージは抱いていなくて、実技試験の前に聞いて落ち着こうとして聞いたりしていて、ヘンタイ!?とか言われていたのですが、パンフレットによれば、東儀氏も「この曲を聴くと穏やかで安穏な気持ちを得られる」のだそうで、ほ〜らごらんなさい!!(誰に言ってるんだかですが、笑)と思いましたのことよ。

シャコンヌより
 古澤氏のバイオリンを生で聴いたのはもちろん初めてだったのですが、ものすごく好みの音を鳴らす方でした。
 クラシック界で名を馳せていらっしゃる方なので、そもそも正統派の西洋音楽をまっすぐ勉強してこられた方だから、畑が一緒ということもあるのかもしれないのですが、音楽の歌い方がとても好みで、聴いていて心地よくて、すっかり虜になって帰ってきました。こんな風に鳴るバイオリンをずっと求めていた気がする…なんて思いながら聞いてました。
 いつか彼の音楽会にも行ってみたいです。さっそくCDを探して来ようと思っています。
 バッハのシャコンヌ(一部でしたが)を聴いたのはとっても久しぶりでしたが、とても素敵で心を動かされました。
 秋になるととてつもなく弦の音が聴きたくなるのですが、今年の秋は古澤氏のCDを聞きまくりたいです。わたしの心の中ではひと足先に秋が来たような素敵な気持ちになりました。
 この曲とともにとても素晴らしいなあと思った曲が、「Avenir〜祈りの杜〜」という曲で明治神宮に奉納された曲なのだそうです。東儀さんはこの曲に篳篥で参加されたのですが、この曲ももう一度生で聴きたいなあと思いました。

・愛しみのチャルダッシュ
 この曲は古澤氏の作曲された曲ですが、ジプシー音楽っぽい曲で、ちょうどピアノでジプシーダンスという曲と格闘している子がいて、よりイメージをふくらませることができました。
 この曲は無条件にとってもカッコよくて痺れました!!
 すごく恥ずかしい話ですが、わたしは今まであまりソロのバイオリンを聞いてきておらず、もちろんオケや室内楽の中のバイオリンは何度も聞いていますが、ソロでバイオリンを弾く人というと、大草原の小さな家のインガルス父さんくらいしか浮かばなかったのですが(笑)もっともっといろいろ聞いてみたくなりました。
 それから今回バイオリンの多彩な音を余すところなく聞くことができて、心を震わす繊細な高音も、中音域の豊かな音も、重厚な低音域も、なんていい音を鳴らすんだろうとひたすら感じ入ってしまいました。
 いい経験をさせてもらったと思います。
 というわけで、(表)の感想はここまでです。なぜ(表)があるかというと(裏)もあるからで、(表)は東儀さんファンの方々やこの音楽会に興味がある方に読んでいただいても大丈夫な感想です。
 18禁というような(裏)ではもちろんありませんが、(裏)ではもうちょい違う方向に(KinKi&剛紫ファン的)マニアックな感想をちょっとだけ書き足したいと思います。