ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

  ギター食べ放題!

 先週の金曜日、赤坂BLITZで行われた 『KOTARO OSHIO presents 「GUITAR PARADISE 2008」』というライブに行って来ました。 
 一緒に行ったのは、お友達のbonyarihitsujiさんとショコラ嬢。最初bonyarihitsujiさんが「このライブのチケットをぜひぜひ取りたい」と言っていて、ショコラ嬢とわたしは話を聞いてとても興味が湧いたので、便乗させてもらいました。
ちなみにチケットが取れたとわかってからとりあえず予習しようと思って買ったCDはこれ。

You&Me(初回生産限定盤)(DVD付)

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最新アルバムです。
 押尾コータロー氏がリスペクトする様々なジャンルのアーティスト、ミュージシャンと全曲コラポ、セッションしているのですが、びっくりするくらい好みの音で、それはそれは気にいったので、俄然ライブが楽しみになっていたのでした。
 このアルバムでコラポしている方々も、Charさんだったり葉加瀬太郎さんだったり、cobaさんだったり斎藤ネコさんだったり、すごい方々なのですが、あたり前ですがどれもちゃんと押尾さんテイストに染まっていて、心地よいサウンドです。特に朝家族を送り出して家事をしながら聞くのに最適で、気持ちよく一日を始める手助けをしてもらっているような気がするアルバムです。
 さて、話はライブに戻ります。先に触れた友人たちとは先日来、時々ご一緒していますが、最近のわたしはこのふたりにとっても刺激を受けています。
 そもそもふたりともとても行動的で、好奇心旺盛です。「見たい!」「行きたい!」となればどこへでも、ひとりでも出かけていくその行動力にはいつも感服していますし、見習いたいところです。
 常にあちこちにアンテナを張っているので、みんなで集まるといつだって自由自在、不思議な方向に話が転がっていくし、何に対しても否定をせずにとりあえず興味を持ってみるという姿勢が素敵で、会うたびに新しい世界への扉の向こう側につれていってくれます。
 そんなわけで、彼女たちと会う日はいつもわくわくしながら出かけて行きます。
 さて、244ライブ以来の久しぶりの赤坂BLITZでしたが、この日は椅子も入っていて、ライブハウスというよりは普通のホールのようでした。
 わたしたちはあいにく2階の立ち見席でしたが、多少手すりと仲良しにはなったものの(笑)120%な感じで楽しむことができました。
 このライブは、押尾コータロー氏が中心となって司会をしながら、いろんなジャンルのアコースティックギターを弾く方々が次々出てきて、ひとりで演奏したり押尾氏とコラポしたり、みんなで演奏したり、それはそれは盛りだくさんのプログラムで、3時間半くらいあったのですが、まったく飽きることなく、できればもっともっと聞いていたいと思わされるライブでした。
 ちなみに出演者は、木村大さん(クラシックギター)、Petteri Sariola(フィンランドから来られたギタリストさん)、DEPAPEPE、田川 伸治氏(DEEN)、横田明紀男氏(Fride Pride)、BAHO(Char&石田長生)、そして押尾コータロー氏という出演順でした。
 それぞれの出演者が、おひとりで1〜2曲披露したあとに押尾コータロー氏とコラポして一曲演奏します。演奏者が変わるたびに、ステージのセッティングを直したり、椅子を置きなおしたりもするので、結構長い間があるのですが、その間は押尾氏が出てきて、まったりとした関西弁のMCでつなぎます。
 このMCがアットホームで温かくて、ちょっとボケてみたり、彼の言葉に会場からふふふっと笑いが漏れたりして、わたしたちみたいに関西地方の某ふたり組のMCを聞き慣れている身としては、とっても親近感が沸くような話っぷりで(笑)とても好感を持ちました。
 和やかに笑いながらMCを聞いていて、次のアーチストさんが弾きはじめると途端にテンションがガラリと変わるのがおもしろいです。さっきまでのまったりムードが夢の中の出来事だったみたいに、それはそれは皆さん、超絶技巧をなんなくこなされる、すごいギタリストばかりなのです。
 押尾氏と似たタイプのギタリストの方が多いのかと思いきやそうでもなくて、たとえば木村大さんはクラシックギターの名手だし、Charさんみたいに歌いながら弾く方もいらっしゃるし、演奏スタイルも様々でした。その超個性的な皆さんが、押尾氏とコラポすると、また化学反応が起きて全然違う味が出て、なんて面白いんだろうと大興奮しながら聞いてました。
 特に心に残ったところを挙げていくと、たとえば、クラシックの木村大くん。ジャンルのせいなのか、きっとすごく生真面目な方なんだろうと想像していたら、意外にもMCがとてもおもしろい方でした。「これから九州に飛ばなきゃならないので急いでいるんで、1曲目はアップテンポの曲にしました」なんて言うので大爆笑。そう言いながらもなごり惜しそうに長々MCをして、「キミ、急いでるんだろう」なんて押尾氏に突っ込まれていて、そんな空気も楽しかったなぁ。
 以前にはクラシックギターのよさがよくわからないなんて思っていた時期があったのですが、演奏がすごくよくて、すいませんでした…とひれ伏しました。緻密で丁寧な演奏っぷりにはやっぱりクラシックの方だなあと思ったり。押尾氏とのコラポもとっても素敵。「ジャンルを超えた」と銘打って演奏されるものが大好きな方なので、とにかく大興奮でした。
 次のフィンランドからやってきた、Petteri Sariola氏。言葉が全然わからなくて通訳を介してちょっとだけ押尾氏を交えてトークした後は、身振り手振り顔の表情と、伝えられる術を総動員して、客席を笑わせたり沸かせたりしつつ、その演奏はというとものすごい技巧を誇るパフォーマンスです。
 押尾氏と同じようにひとりで演奏しているとは思えないような、いろいろな音をいっぺんに出すスタイルのギターを弾く方なのですが、とにかくその演奏がダイナミックでかっこいいです。どちらかといえば繊細に聞こえる押尾氏のサウンドに対して、Sariola氏のギターはもっと重たい音がして大胆不敵な感じです。24歳だそうなので、これが若さだー!という感じかも(笑)
 多分この方の音を生で聞いたのは初めてという人が多かったのではないかと思うのですが、時間の経過とともに会場中を興奮の渦に巻き込んでいき、気がつけばびっくりするほど熱心に拍手大喝采してました(笑)
 後になって、そのスキンヘッドや大胆に動きながら演奏するところや表情なんかが、わたしたちがとってもよく知っているパーカッションのスティーヴ衛藤氏とよく似てるんじゃ!?なんてショコラ譲と話しました。
 DEPAPEPEは、以前にひとつだけアルバムを持っていて、結構好きなサウンドなので、楽しみにしてました。この日は超絶技巧のギタリストが緊張感のある音を鳴らしているパターンが多かったので、DEPAPEPEのサウンドがとても癒し系に聞こえました。なんてさわやかで清々しい音を出すのでしょう!おふたりがアイコンタクトしつつ息もぴったりに演奏するのもばっちり見えたし(一度生で見てみたかったのです、笑)大好きだった曲も演奏してくれて大満足でした。
 わたしは全くギタリストに詳しい方ではないので、DEENの田川 伸治さんと横田明紀男氏のことは不勉強で全く知らなかったのですが、音を聞いただけで途方もなく上手な方たちなんだということは十分にわかりました。
 横田氏のギターは情熱的だなあと思って聞いていたら、スペインでお好み焼き屋さんをやるのが夢だったとのこと。「スペイン」という曲を演奏してくれたのですが知っている曲で、やっぱりとても情熱的な曲だったので、ドキドキしながら聞きました。
 そうこうているうちに出てこられた「BAHO」はさすがに大御所という感じで、扱いが全然違います(笑)30分くらいずっと演奏をしてくれました。
 ギター好きな皆さんからしたら、知っていて当然の方々だと思いますが、まったくの素人でよくわからなかったわたしは、家に帰ってからこのバンドのことを調べたら、「東京の馬鹿(Charさん)・大阪の阿呆(石田さん)」で「BAHO」だそうで、おもしろ〜い!!こういう遊び心、大好きです。
 実は以前わたくし、Char氏がとっても苦手だったのです。多分知らないから「食べず嫌い」をしていたのだということがよくわかりました。素人の耳にも「すごい」ということがはっきりとわかったし、「心を鷲掴みにされた」というのがぴったりな感じで、目も耳も釘付けでした。
 多分その昔は、わたし自身の耳が全然育っていなくて、ギターサウンドのよさが心に響いて来なかったんだろうなあと思います。例えは変ですが、神様の声は信じている人にしか聞こえない…みたいな感じ!?かしら。この年になって近年特にたくさんのプロのギターサウンドを聴き、やっとそのすごさがわかったみたいな気がして余計に感動したのかも。
 彼らはギターもすごかったですが、MCもとてもおもしろくてずっと笑ってました。
 特に印象に残った曲はいろいろありますが、あえて1曲挙げるとすればビートルズをやってくれたのですが、シンプルなだけにギターのすごさ、歌ごころがものすごく伝わってハートを直撃されました。これは今でも耳に残っています。
追記:ビートルズの曲名を忘れてしまって書けなかったのですが、コメントでbonyarihitsujiさんが教えてくださったので、追記します。"Here, there and everywhere"だそうです。教えてくださって、ありがとです。
 それからa mollイ短調、ギターで言えば Amっていうのかなぁ!?)の曲でずっとつなぐというメドレーがあったのですが、これが最初ベンチャーズから始まって、マイムマイムやら高校三年生やら、ジャンルレスの様々な音楽をはさみつつ、すごい数の曲を遊び心たっぷり、さりげなく超絶技巧を織り交ぜつつ(笑)たっぷり演奏してくれて、楽しくて楽しくて、どうしてくれようと思いました。
 こうやってベテランが「どうだー!」とばかりに素晴らしい実力を見せつける場所があって、それを見た後輩ミュージシャンたちがたくさん刺激を受けてこれまた素晴らしい演奏をして、そんな空間の隅っこで参加することができて、なんてしあわせなんだろうと思いました。
 最後の最後に登場した押尾氏だったのですが、この方もすごいです。座ってじっと演奏するのではなくて、いろいろ動いたり、客席を巻き込んでウエーブさせたり歌わせたり、しゃべりながら演奏したりしているのもすごすぎでした。
 その前のChar氏の素晴らしさは、若いころのわたしはちっとも気がつかなかったのですが(笑)押尾氏のギターは多分、学生時代に出会っていたとしても、絶対に好きだったに違いないと思います。繊細でハートウォーミングで、なんてやさしい音なんだろうと思うのに、一方でとても迫力があって一人で弾いているのにバンドみたいだったり。なんといってもこの方のお人柄がわかるような温かい音で、またぜひぜひ押尾氏のライブには足を運びたいです。
 演奏の途中で、Char氏が「今日のはギター食べ放題ライブ」と言い、その言葉がずっと心に残ったのですが、まさしくそんな感じでした。食べても食べてもまだまだおいしいものがこれでもかと出てくる素敵なライブ。
 たいしてギターに詳しくもないのに、いきなりこんなにすごいものに参加できたこと、心からしあわせに思いました。
 一番最後の方で、押尾氏が新しいアルバムの中から、Charさんとコラポしている2曲を演奏してくれました。
 この中の「With You」という曲は、押尾さんがリスペクトしているCharさんのために作ったのだそうです。このおふたりのコラポが素晴らしく素敵だったのと、押尾さんがあまりにもしあわせそうにギターを弾いているのを見て、見ているだけなのに、胸がいっぱいになったわたしです。
 そして最後はというと、全員が舞台に揃い、押尾氏がこの日のためにつくったという「GUITAR PARADISE」という曲を会場も一緒に歌いながら演奏を聞いたのですが、これがベテランから若手まで。日本人も言葉がわからない外国人も、そして客席も…とその場にいたすべての方々が一体となった1曲で、それはそれはいい光景でした。
 それにしても、以前にはこんなにギターばかりのライブに参加している自分なんてものが、そもそも想像できませんでした。もちろんギターの音が嫌いなわけじゃないのですが、よく知らないがために、「きっと聞いてもわからないに違いない」と思いこんでいたのだと思います。
 それがここ数年でバンドサウンドにどっぷりはまり、何より生でギターのいい音をたくさん聞いてきたことで、どんどんわたしの耳も育って、それとともにヘンテコな先入観を追い出すことができたのだと思います。
 ずいぶん遠回りをしてしまったけれど、これからはどんどんいろいろなギタリストの素敵な音にふれていきたいです。