ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 一生の趣味

 大人になってから続けている趣味、習い事がありますか?愉しんでますか?
 先日もエレクトーンを始められた方から拍手コメントをいただいて、同士の声にうれしくなったりしたのですが、わたしの場合は依然としてピアノです。
 一応それでお金をいただいているわけですから、これを趣味と言っては叱られるかもですが(笑)よくも悪くも練習嫌いだったわたしは、受験期、学生のときを除けば毎日1時間以内の練習でもう40年以上も来ているわけです(自慢になんねーよ、笑)
 よく「ピアニストになる夢をあきらめたのはいつですか?」と聞く人がいますが、わたしの夢は最初からピアノの先生でした。学校の先生を目指す人イコール学者になるのをあきらめた人じゃないのと一緒で、音楽の世界にだって、最初から「教える人」になりたい人もいたっていいと思うのですが違うかしらん!?
 大人の生徒さんも増えているこの頃、目指すは趣味マスターで、こうやって行けるところまで続けたら、どんなことになるのか見てみたいなあと思うこの頃。
 年を取れば取るほど指は動かなくなるかもですが、人生の年輪が果たしてこの先ピアノに反映するのか、ボケちゃったりした暁には、それでもピアノを弾きたがるのかどうか!?(笑)試してみたいことがまだまだたくさんあります。ピアノを趣味としている大人や子どもに「ピアノを続けていたらこんなにいいことがあるのよ」と実感こめて言えるような先生になれたらいいなあと思うのです。
 さて、先週の水曜日に自分のレッスンに行きました。
 持って行った曲たちは、シューベルトの「楽興の時」と即興曲のD899,Opus90の4番変イ長調と、ショパンの「子犬のワルツ」。
 シューベルト即興曲を除けば、中学くらいのときにあんまり真剣に取り組まずさらっと流して終わってしまっていた曲なのですが、子どもたちに教える頻度が高い曲なので、一回ちゃんと教えていただこうと思って持っていった曲たちでした。
 ちょっと前はあまりに素敵な先生にめぐり合えたので、むずかしい曲ばかりわざと取り組んでいました。学生時代にも挫折したような曲ばかり(笑)
 そうしたら年のせいなんだか、生まれて初めて腱鞘炎になったり、練習時間が取れなくてイライラしたり、挙句の果てに仕上がらずに終わったり、最悪でした。
 ある時は先生に「受験生と張り合おうと思ってる?」と冗談交じりに言われ、「めっそうもない。とんでもございません。」とこちらも冗談交じりに言いながら、わたしってば何をそうムキになっていたんだろう?と反省したりもしたのでした。
 今の先生は、受験生の生徒さんもたくさん門下に持っていらして、若手ピアニストとしての活動と並行して、指導者としてもどんどん頭角を現して来られている方なのです。
 そんな方なので、わたしたちのような町の先生とか、ご近所の普通の趣味で通っている生徒さんたちは切捨てられても文句が言えないと思うのですが、全然そんなことはありません。だれにでも平等に時間を取ってくださるし、何より惜しみなくご自分のピアノをバンバン聞かせて下さるのが素敵です。「ちょっと代わって」…と言って弾いてくださる曲の数々。レッスン室が上野の文化会館にワープ、しかも聞き手はわたし一人…大興奮のひと時です(笑)
 「せっかくわたしのところに指導者であるアナタが来ているのだから、勉強して帰ったことがそのまま生徒さんたちに反映できるような曲をたくさんやったら!?そういうレパートリーをどんな風にあなたに教えたかをよく見てよく覚えて、あなたのレッスンに役立てたらいいわよ」と言ってくださり、それからは、中級強くらいの曲を中心に、とにかく自分が上手になることにももちろん力を注いでいますが、どう言われたことがわかりやすかったか、どんな比喩がわかりやすく響いたか、五感を総動員して感覚的につかもうと必死になっています。
 多分、相性が多分にあると思うのですが、幸いにして先生の言葉はわたしの心にものすごくストレートに響いてくるので、聴いていてとっても楽しいです。たとえばシューベルトの最初の右手のアルペジオについて、「ここはダイアモンドダストみたいな音で」とか「一瞬ひと筋の光が、天から零れ落ちるように」とか「そこの音はホルンだと思って」とか、たとえ方がいちいち素敵です。心ないタッチをひとつでもすると、絶対に見逃さずに「今の音はダメ!カツンって当たった。」とか「クッションが足りているとフエルトにやわらかく当たって(これはピアノの中身の話です)今みたいにいい音が出るの。この音を忘れちゃダメよ」とか言ってくださいます。
 こういうひとつひとつの先生の言葉がまるでダイヤモンドみたいにキラキラして聞こえます。特にレガートが美しくて、受験期や学生時代に先生に出会っていたら、わたしのピアノは全然違う方向へ行っていたかもと思います。悲しいかな、わたしよりかなり年下の先生なので、当時は会いたくてもお会いすることはできず、やっぱりもろもろを考えると今、お会いしたのが奇跡で邂逅で、一期一会なんですけどね(笑)
 そして先生の言葉たちがちゃんとわたしの実になって身につくと、まねしようと思わなくても、自分が今度レッスンするときに、絶妙のタイミングで先生のおっしゃっていた言葉が、するっと出てきたりするのです。こうやって先生から生徒へ、そのまた生徒からそのまた生徒へ…と技術や感性が伝授されていくんだなあと思います。
 もう40年もピアノをやってきて、今尚習いに行くなんて、余程自分に自信がないかもしくは慎重すぎるんじゃないの?お金だってもったいなくな〜い?と言われることもありますが、そんなことはないと思いたいです。
 人を教えようとするのに何十年か前で技術も感性も止まっているなんておかしいし、生徒にだって失礼だと思うし。いくらクラシックの世界とはいえ、新しい指導法や今、日本に初めて入ってくる教本だってあるし、自分が練習しているからこそ練習のきつださってわかるし、面倒で時にくじける気持ちもわかるんだと思っています。
 何よりわたしが楽しくてたまらない経験をいっぱいして、熱っぽく語ることで、生徒にも興奮を伝えられたらいいなあと思うのですが、どうかしら?とにかく人生一度きり。愉しまなくっちゃね!!