ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 読んでいるもの。読み終わったもの。

 ちょっと前の日記で触れた「三国志」ですが、いろいろとコメントやメールでオススメを教えていただいたので早速本屋さんに行って探してみました。結果、候補の中で唯一本屋さんで見つけられた吉川英治氏のものを読み始めました。すごく読みやすくてびっくりしましたし、そういえばいつぞやかの国語の教科書にも劉備の名前がありましたっけ。どこで見たんだろう!?まだ全然最初の方を読み始めたところですが、楽しみにちょっとずつ読みたいです。

月魚 (角川文庫)

月魚 (角川文庫)

 さて、今日感想を書こうと思った本は、これです。
 ひょんなことから本屋さんで見つけ、単純に「月」という漢字と「魚」という漢字が並んでいたこと(どっちも気になるワードでしょ、笑)、そしてこのところとっても気になっている作家、三浦しをんさんの作品だということで、衝動買いしてしまったのです。
 買うに至る前にあとがきを先に読んでしまったのですが、これまた大好きな作家さん、あさのあつこさんが寄せられた文章で、あつこさんの文章自体もとっても魅力的だったのも衝動買いの原因のひとつです。
 とっても読みやすかったのでほんの2時間足らずで読み終わってしまったのですが、幾とおりにもイメージがふくらむ、とっても雰囲気がある物語でした。全体のトーンはお日さまの明るさではなくて、どうみても月あかりという暗めのトーンだし、饒舌な物語ではなくて、むしろ無口な印象が強い物語なのですが、その中で古書店「無窮堂」に灯るオレンジ色の外灯とか、一瞬跳ね上がりきらめく魚とか、そして主人公たちの静かな想いがとっても色鮮やかに感じられ、胸にグッと迫ってきました。
 舞台が「古書店」とその業界だというところにも惹かれました。同じ古書を扱う店でも、大型チェーン店ではなくて、いわゆる古本屋という場所には、なぜかとっても魅きつけられます。また、古書を扱う話なのに、主人公ふたりがその場所に似合わない若造という設定にも興味を持ったのですが、期待を裏切られず面白かったです。主人公たちが本に対して並々ならぬ愛情たっぷりなのがとても好ましかったし、核になる本の査定をする場面もすごく面白かったです。いろいろな意味で、とても好きな話でした。
 話の中身そのものではなくて、主な登場人物たちの心の動きや、それぞれがそれぞれに向ける想いの深さ、言葉には出さない深い想いなんかが何かの小説に似ているなあと思いつつ読んでいて、途中で気がつきました。江國香織 さんの「きらきらひかる」っぽいと思ったのです。言葉には出さない「深い想い」が数々こっそり隠れていて、静かに痛く身に染みるような感じが似ています。
 あの本も今でも本棚のよく見えるところに置いてあって、時々ページを繰りたくなる物語のひとつです。「月魚」も、繰り返し繰り返しいろいろな想いで何度も読んでしまう本になりそうな気配です。
 「この本、よかったなぁ」と言ったら同じ本を読んだ友人が「わたしも好きだけど、なんとなくこの本、BL的な空気が漂ってない!?」と言いました。実際そうかもしれないし、そうではないかもしれない!?くらいのあいまいさで書かれていて、私自身はあまり気にせず読みました。
 小説の中に漂う和の空気もとても好ましくて、わたし自身やっぱり日本や日本的な季節感や情緒が大好きなんだなあということも強く感じた一冊でした。
 この本の他にも読み終わって感想を書きたい本が数冊あって、徐々に書いていきたいです。一応リストアップしておくと、こんな感じです。
・「鹿男あをによし」 万城目学
・「女性の品格」 坂東 眞理子
・「イラクの橋を渡って」 池澤夏樹[文]+本橋成一[写真]
・「(がばいばあちゃんの)しあわせのトランク」 島田洋七