ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 膝を温めるバロン

 11時過ぎに下でアイロン掛けをしていたら、空が急に真っ暗になって雷が鳴り始めました。ほどなく土砂降りになったので、トモから預かっている鍵を持って隣の柴犬くんの救出に。案の定紫陽花の根元のところで伏せをして震えていたので、家に入れてホッとひと息です。
 家の前まで戻ると玄関の軒下にダンボールの箱が!!amazonさん、今回はお仕事が早いではありませんか!!しゅてきしゅてき!(のだめ風味、笑)
 ところがです。家に帰って来たらキッチンでぬくぬくしているはずのバロンが、雷鳴に腰を抜かしそうにガタガタ震えていて、うっかり目が合ったらもういけません。抱っこの姿勢から一歩も動けないままほぼ1時間以上・・・まったく気の弱いぼっちゃんで困ってしまいました(笑)窓を閉めっぱなしでお互いの体温でガンガンに温め合ってしまったので、おかげさまで汗だく!生徒が来る前に着替えなくては!
 さて、仕事の話を。
 うちには新中1と新高1の生徒たちがいるのですが、土曜日に彼らは集中的にやってきます。時間が部活本意に決まるので、直前まではっきりせず、正直言って予定を組むだけでもむずかしいこともありますが、ここがお互いの正念場と思い、生徒たちと二人三脚でがんばっているところです。
 音大を目指している中1のMちゃんは、バレー部に入ってしまい、ピアノの練習できないストレスでかなりへこんでいます。彼女は練習が大好きという奇特な子で、小学校時代は毎日苦もなく練習に明け暮れていたので、急に弾けなくなった自分が悲しくて、相当の落ち込み様です。
 折りしも友達が彼女のピアノの先生に「練習できないんなら、来なくていい!ピアノを取るか部活を取るか、はっきりしなさい!」と言われたとのこと。自分がそう言われたかのように、すっかり意気消沈してやって来ました。
 それに対して残りの土曜組は元々あんまり練習する方ではないので、部活が始まろうが忙しくなろうがどこ吹く風(笑)いつも通りマイペースにやって来て、弾けなくても楽しくレッスンを受け(笑)ピアノの合間にたくさん学校のことを愚痴ったりしつつご機嫌で帰って行ったのが笑えます。彼らにとっては、たいした変化はないというわけです。
 そんな彼女たちと、わたしは土曜日に約束をしました。
 「今後、どんなに練習できなくても、とりあえず身体が空いている限り、必ずレッスンに来ること。来ることがとりあえず第一目標だからね!」と。
 実はわたしも、本当に練習嫌いの子どもでしたので、何度も「練習しないのなら、来るな!」と言われたクチ。何度叱られてもあまり気にしない方だったので(ダメじゃん!)ちっとも堪えず通い続けていましたが、きっと堪えてしまう子はそこでやめてしまったんだろうなあと思います。
 今にして思えばそれは逆じゃないの?!と思うのです。練習していないからこそレッスンで思い出すことが必要で、レッスンをきっかけにまた、ピアノに情熱が戻って来るということもあるし。「ここは練習するところじゃない!」とおっしゃる先生の教室に通っていたこともありますが、やっぱり教室は練習するところでもあるわけで・・・
 最悪本当に練習できる日がレッスン日の教室だけとしても、ひと月休んで一度も弾かないよりは、週に1度でも弾いた方がいいに決まっています。譜読みからだと教える方は骨だけど、それもきっと先生の力量次第だと思います。多分、ずるずると休み始めたらあっという間にピアノから遠ざかってしまうのだし。
 そんなことを一生懸命言ったら、Mちゃんはとっても神妙に「わかりました!」と苦悩の顔のまま言っていましたが、残りのふたりは「そうだ!そうだ!」という顔でにっこにこ。くれぐれも言っておきますが、練習できる日にしなくてもいいってことじゃないんだからね!!テレビやゲームをするならピアノをやってちょうだい(笑)
 さて、そんなわたしが今読んでいる本はこれ。

練習しないで上達する―導入期のピアノ指導

練習しないで上達する―導入期のピアノ指導

 前にもちらっと触れた気がしますが、ただ今のところ呉暁(ご、あき)先生の本を夢中になって勉強していて、特に導入期のレッスンに先生のご本をいくつか取り入れています。
 たとえば「アキピアノ]1〜3や、「リズムとソルフェージュ」1〜4などがそれで、これらをトンプソンやバイエル、ピアノどりーむやフレンドなど田丸先生の教本や、昔ながらの教材に混ぜつつ、レッスンを進めています。
 それら、呉先生のご本の考え方や勉強の仕方を細かく書いてくださっているのがこの本で、昔ながらのオーソドックスな教え方をされる先生方には「練習しないで上達する」なんてことからして、そもそもけしからん!と叱られそうな気もしますが(笑)
 わたしは「効率よく最短距離で、しかも楽しんでいるうちに、気がつけば音楽やピアノが大好きに、そして上手になっていた。」というのが理想だと思っているので、面白いヒントがいっぱい詰まった本です。
 ちなみにこの本の中で、先生が勧めていらっしゃるバルトークの「ミクロコスモス」については、正直に言うと最初からもろ手を挙げて賛成というわけではありませんでした。
 どうしても、新しい時代のバルトークの新しい調性やメロディー、変拍子などを多様する楽譜に最初馴染めずに、これをわざわざ小さい子に教える意味がわからなかったのです。以前は「わかりやすいもの」が音楽の導入教育にとっては必須だと思っていたのです。
 ところがこの考え方が変わったのはケリーとケリーライブの影響です。一見わかりやすいリズムやメロディーではなくても、その気になりさえすれば、誰にだって十分に楽しめるのだということが、身をもって経験できました。拍子が途中で変わっても涼しい顔でまた、新しいリズムに合わせて拍子を取るオーディエンス。7つや8つの小さな子が身体を全部使って、むずかしいメロディーやリズムに乗って楽しんでいるのをたくさん見かけたからなのです。そもそもこれがむずかしい、あれは易しいというのは主観的だし、聞かせるもの、弾かせるものを選んで渡すというのはいかがなものかと思ったのです。
 「初歩の人にはむずかしすぎて、こんなのわかるわけがない。」と思うことが、そもそも教える側の傲慢でした。クラシック音楽というものは、時代も作曲家も演奏家も膨大すぎて、自分の好きな世界だけで教えたり楽しんだりすることも十分にできるのですが、こうやってわたしも未知の領域に踏み込みつつ、知らない教本、知らない作曲家の世界を楽しみながら生徒とも向かい合っていけたらいいなあと思います。呉先生とは、学生時代にお会いしてみたかったです。学校の系列がそもそも全く違うので、お名前すら耳にしたことがなかったのが、とっても残念です。