ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

たすけて〜!笑いすぎに注意!

イン・ザ・プール
イン・ザ・プール奥田英朗 文芸春秋社
新しい芥川賞直木賞が発表になったのでどれから読み始めようかとわくわくしていました。本の話題と言えば本屋さんでお勤めの大好きなこの方じょえっとマンゴスチン嬢の7月15日の日記をのぞきに行きましたら、やっぱり興味深いひとことが書いてあったので、即効買ってきました。受賞作「空中ブランコ」は続編らしいので、順番どおりこれから読み始めたのですが、一気読みでした。
 ネタばれしています。ご注意ください!
 奥田英朗さんの本を読んだのは初めてだったのですが、読み始めたら止まれないおもしろさで、ちょっとの暇も惜しんで読みました。主人公の伊良部一郎氏のキャラクターの変さ加減が本当にツボで、こんなヒーロー(と呼んでいいのかどうか?!)見たことないです。「変なものホイホイ」を自認する(学生時代そうよばれていました。個性的な人をまわりに集めてしまうらしいです)わたしも、こんなお方には巡り合ったことがありません。また、看護婦のまゆみちゃんも同様に変てこりん!本当にうさんくさくて逃げ出したくなる感じなのに、なぜかみんな通院し続けてしまうのです。「先生だめじゃない」と小バカにしたり、うわあブラックとちょっと寒くなったりしながら読んでいるのに、気がつけば本の中の患者さんたちと一緒になって伊良部ワールドにどっぷり、彼の世界から逃れられなくなって、偶然なのか必然なのか、結果オーライ!になり、すがすがしい読後感が残るのです。携帯依存症の男の子の話では、ラストの光景が脳裏に浮かんで涙ぐんでしまいました。他の登場人物たちのエピソードも実はとても深刻で、社会情勢ともリンクしていて、笑い事じゃないぞということばかりなのですが、伊良部氏が隣にいると大丈夫大丈夫という気持ちになってくるから不思議です。そもそも誰が精神を病んでいるのか誰はまっとうなんだか、その基準は誰が決めるのか、筆者からスマートにシニカルに問いかけられているような気もします。ああ、伊良部先生に会ってみたいな。恋人には絶対になりたくないし、身内にもなりたくないですが・・・(笑)「知り合い」なら・・ま、いいか。
 こんな不思議な人物のことを考えていたら、昔読んだ筒井康隆の小説の中にこんな人やあんな人がいたような。あるいは、山下洋輔ワールドにも似たような人がいたような。この本はあまりにも強烈すぎて受け付けられない人もいるかもしれませんが、わたしは多分どっぷりつかって、今後彼の作品を見つけては読み漁る予感がします。
 とりあえず、直木賞作品「空中ブランコ」はすぐに読みます。ごちそうを前にとっても楽しみです。