ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 奈良旅 その4(6月10日) 苔清水と西行庵

そういえば、小学校の遠足は一年生から6年生まで全部山でした。
年齢と難易度に合わせて毎年違う山に登ります。
その他に歩け歩け大会とかあったなぁ。これでもかと子どもを山に行かせるところに住んでました。
さらに家に帰ってもまた山へ遊びに行くような子どもでした。
「いまに猪に追いかけられるけ〜ね!気をつけんといけんのんよ〜。」なんて農家のおばちゃんに忠告されつつも、山で遊ぶという誘惑には勝てませんでした。斜面を滑り降りてパンツを破いたり、ハゼの木をくぐって顔中パンパンに腫らしたり、台所からざるを持ち出しておたまじゃくしをすくっていっぱい持って帰って怒られたり、いろいろあったなぁ。
高校生の頃はよく、友人たちと高尾山に遊びに行ってました。登山と言うようなものではなくて、遊びに行くという感覚で行ける手近な山。
悩み事を打ち明け合ったり、合唱部のみんなで行って、小さい声でずっとハモったり、いろんな思い出が蘇ります。
そういえば、いつだって山の中に分け入るのは好きだったなぁと思い出します。
ほんのハイキングという程度の「入る」で山ガールですらないくらいですけど、それでもやっぱり山が好き。
ということで、まずは山道の景色をおすそ分け。

遠くの方で人の話し声とチェーンソーの音がしました。林業の方たちはこういうところが職場なんだなあ。



だんだんに坂道の傾斜が急になってゆく。

もちろん濃い緑、薄い緑、とりどりのグリーンに癒されつつ進みます。

ふと逆光で空を撮ったら、なんだか不思議な写真が撮れました。ほんの少しのぞいた青空が美しいです。
そして、もしかして道を間違えてない?と疑い始めた頃に不意に苔清水のところに出ました。

向かって左側に松尾芭蕉の句が書かれた碑があります。
いろいろと調べてみたら、松尾芭蕉がこの地を訪れたのは1684年。義経と弁慶が逃げてきてから更に500年後です。
すでに碑に書かれていた文字は消えかけていて、その場ではなんて書いてあるのか全然わからなかったのですが、家に帰って調べてみたら「春雨の木下につたふ清水哉」と書いてあったそうです。

竹樋を伝ってお水はほんのちょろちょろ流れている程度でしたが、今年が雨が少ないからなのか、そもそも枯れかけているのかよくわかりませんでした。
思わずお水を口に入れてみたらとても冷たくて、苔の香り?木の香り?がふわっと広がった気がしましたが、これが水そのものの香りなのか、あたりの空気の匂いなのかよくわかりませんでした。
さらに少しだけてくてく歩いていたら、不意に平地が広がって、ほどなく西行庵が現れました。



本当に周りには何もなくて、ただただ木立が広がっています。
鳥の声や虫の声、風の音。花や木の香り。この場所の中に身を置いたら、どんどん五感が研ぎ澄まされていっただろうなあと思います。
ここで静かな時間を過ごしていて、ある朝ひとり目覚めたら、一斉に山桜が開いて桃色の世界が広がっていたら・・・
まるでこの地が桃源郷のように感じられたのではないかしら。
できることなら「どこでもドア」で、桜が満開の頃の彼の地をちらっとでものぞいてみたいものだと思いました(桜の頃にここまで来るのはきっと至難の業でしょからね、笑)