ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 今別れの時〜飛び立とう未来信じて〜♪

タイトルは最近小中学校で歌われることが多い卒業ソング、SMAPのCM曲にもなった「旅立ちの歌」です。
昨日小学校に入学と同時に我が家にピアノを習いに来始めたYちゃんがピアノ教室を卒業しました。
2歳年上のおねえちゃんが保育園の頃から来ていたので、おんぶの頃から知っていて、半分うちの子みたいなもん…という距離感でレッスンしてきました。
うちの教室では珍しく超スポーツ系少女ですが、とてもいい声をしていて、歌心がある女の子です。
おねえちゃんは自他共に認めるピアノが大好き少女。ここ数年必ず合唱コンクールの伴奏に選ばれたりしているし、中3になった今年からも「絶対にピアノはやめない」と早々断言していたのですが、妹のYちゃんはそんなおねえちゃんの妹であるせいか、一歩引いてしまうところがありました。
自分の家でピアノが得意な人はおねえちゃん、と自分で決めてかかっているところがあるし、練習嫌いを公言している子でもありました。
学校の音楽祭ではいつも指揮者に立候補して、半分くらいは選ばれますが、半分くらいは「あなたは歌にいてくれなきゃ困る!」と言われ「わたしは指揮がしたいのに〜」とふてくされてることもありました(笑)
総じてあんまり練習好きではなかったけれども、一旦スイッチが入った時の彼女はスゴイものがあって、タイトルにもした「旅立ちの日に」とか「はじめの一歩」とか、学校で歌った曲の伴奏を練習させてあげたら、一回で完ぺきにものにしてきました。
なぜこれがこんなに簡単に弾けるのに、バイエルやツェルニーは1曲にひと月もかかったりするんだろうね〜!と言うとえへへ…と笑ってごまかされてしまいます(笑)
いえいえ、バイエルだって大好きな80番とか、みんながひと月近くかかる106番なんかはとっとと通り過ぎて、まだまだこのコ実力を隠し持ってるな!なんて思ったこともありました(笑)
おしとやかで怖がりなおねえちゃんは暗くなってから家に帰るのを怖がるからと、よく小学生のYちゃんが頼まれもしないのに迎えに来ていて、まだうすら寒い春先の暗がりで、冷たい手をして待っていたこともありました。
慌てて「いるなら入っておいでよ〜」なんて招き入れても「今日はわたしのレッスン日じゃないから」と遠慮しちゃうような子でもありました。
おねえちゃんが「嵐が好き〜」と公言してからは、自分も嵐が好きと言っていたクセに「わたしはAKBだもん」なんて譲ってしまったり、日が短くなっても「怖くない。大丈夫だからひとりで帰る。」というオトコマエな一面もありました。
あんまり練習しないから、どうしても「練習しなさい」と言うことが多くなるわけですが、彼女は彼女でおねえちゃんとはまったく違う個性を持ち、実は鍵盤の才能も絶対にあると思っていたので「あなたはあなた」「練習さえすれば絶対にもっともっとうまくなるのに」と言い続けてきたのですが、それでもやっぱり最後まで一歩引いちゃうところがあったなあと思います。
彼女の本気を引っ張り出せなかったのは、今でもとても残念です。
以前彼女がわたしについて言ってくれたひとことで、ものすごくわたしを支えてくれた言葉がありました。
遊びに来たYちゃんの友達が自分のピアノの先生について「うちの先生、上手な子にばっかりえこひいきするの。それがほんとにヤダ。やめたくなる」と愚痴っていた時、Yちゃんが「うちの先生は絶対にどの子にも平等。えこひいきなんてありえない。うちに来なよ!」と言ってましたよ、とおかあさま。
この言葉をYちゃんからもらえたのは、わたしにとっては本当に大切な勲章です。
前置き長過ぎ(笑)
そんなYちゃんとの最終レッスンは、お別れムードが漂うのはとってもイヤだったので、いっぱい笑って、いっぱい弾いて、楽しい雰囲気の中終了しました。
お互い必要以上におちゃらけちゃったのは、深刻なムードがふたりとも苦手ということもありますが…
そして彼女を送って戻ってきて、ピアノ室の電気を消そうと思ったら、椅子の上にこっそり小さな袋が置いてありました。
それがこれ。

手作りのクッキーと長文のお手紙でした。
うちの生徒はわりとよく手紙をくれるし、わたしも書くのは嫌いじゃないので、時々こうやってお手紙をもらうこともありますが、これだけの長い文章を書くのは大変だっただろうなあという分量です。
中学に入ったら武道の部活をやりたいので一旦ピアノはやめますが、保育士さんになりたいので、また帰って来たいと書いてありました。
「6年間、先生とのピアノのレッスンは本当に楽しかったです。」とも書かれていて、とてもしあわせな気持ちになりました。
「自分で楽譜を見て弾けるようになったのが一番うれしかったです。これからも完全にピアノから離れないで時々好きな曲を弾きたいです。」ともあって、そんなところもうれしかったです。
なんせ卒業していく子どもたちに一番望むことは、先生がいなくても自力で譜を読みピアノを弾く、音楽的自立ができるようになることと、生涯音楽を楽しめる素地を作ってあげること。
そこはちゃんとできるようになっての卒業でよかったです。
それにしても、もっとちゃんとお別れすればよかったなぁ〜
もちろんおねえちゃんは来ているし、うちのお隣の習字教室にはまだまだ通ってくるそうなので、彼女とのご縁が完全に切れるわけでもないのですが、もうちょっとちゃんと言ってあげる言葉があったんじゃないか?とか、いろいろ後悔もしました。
手作りクッキーは缶いっぱい。
くまさん、ハート、うずまき、うさぎさん、星、お花、それはそれはいろいろな形のものが入っていて、一生懸命に作ったんだろうなぁと思いました。
さて、彼女はこれからどんな人生を歩んでいくのでしょう。
近々最後のレッスンノートにコメントを書いて、持っていきがてら、わたしもお手紙の返事を書きたいです。
ピアノ教室を卒業したYちゃんに幸多かれと願ってます。