卒業
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/11/28
- メディア: 文庫
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ちょうど年度代わりのバタバタの時期だったので、必然的に長く本を読める場所!と言うと電車の中になって、何の先入観もなく読み始めてしまったらさあ、大変!!
何度も何度も涙があふれて来てしまい、慌ててハンカチを探すという・・・電車の中で明らかに本を読んで何度も泣いているなんて・・・なんという恥ずかしさ(笑)
この本は短編集で、ひとつひとつの話には関連性がありません。どれも「死」がテーマになっていて、普段ならこの手の話は怖いしゆっくり味わう余裕がないし、敬遠してしまうことが多いタイプの本です。
でも、今回はなんせ「生徒」が薦めてくれた本なのだし、どうやらお涙ちょうだいの話でもなければ、絶望的なだけの話でもないことがわかり、それより何より、なんといっても話の展開が気になってたまらず「電車で読むのは危険!」が身にしみてからも、やっぱり一気に読み終えなくては気が済まない!!と開き直って読み切ってしまいました。
読み終えて尚、やっぱり「死」というものは自分のであれ知っている誰かのであれ、怖いし考えたくないものであるのはもちろんですが、それでも死を通して経験する「新たな旅立ち」の物語はどれもとても前向きで、読後感は決して悪くはありませんでした。
これは重松清氏のたくさんの物語に共通している点かもしれませんが、作品に出てくる人に対する目がどの作品でもとても温かくて、必ずどこかでは、人っていいものだなあと思わせてくれるからなんじゃないかと思ったりしています。
ご本人も、この卒業の4篇の共通するテーマとして、
「始まりを感じさせる終わりを描きたい」
中略
その始まりが、たとえば「出発」や「旅立ち」といったことにつながってくれればうれしいい、終わりにしても、できるならそこに「和解」のよろこびを溶かし込みたいと祈って・・・
と書いていらっしゃり、その思いがとっても伝わりました。
一方で、人間のやっかいな気持ちや、わかっていてもなかなか軌道修正できないこと、理想通りにいかないジレンマについても目を背けることなく書かれていて、様々なことに対して「ゆるす、ゆるされる」というテーマが見え隠れします。
重松氏の暖かい筆によって書かれると、「どんなにこじれてしまったことでも、許しあうことは不可能ではない」ということが信じられる気がして、勇気が出ます。
最近のわたしは人のではなくて、自分のイヤなところがどうにも目についてしまい、自分から目をそらしたくなることがいっぱいあったのですが、「自分」に対してもこの許しの法則を発動できるのかしら?と思ったり。
ちなみにこの物語の中で、わたしが特に好きだった話は、最初の「まゆみのマーチ」それから最後の「追伸」です。読んでいて途中苦しくなるところもたくさんありましたが、読後感は本当にさわやかでした。
この本を貸してくれた生徒は、14歳の感性でどんなことを思ったのかしら!?
次回彼女がレッスンに来たら、そんな話もしてみたいです。