ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

[日記][仕事] 下手でも楽しい!

 こんなものを作っていたので、ここのところパソコンにあんまりさわりませんでした。実を言うとわたし、とっても不器用な上に、展開図とか立体的な組み立て図みたいなものを見ても、ちっともピンと来ないタイプで、特に家を作る段になって途方に暮れました。やり方を一生懸命何度読んでもさっぱりわからないのです。編み方は簡単。ものすごく単純な8の字編みなのですが、赤い屋根をどうやって壁にくっつけていいのか、さっぱり理解できなかったのです。
 そんなこんなで、屋根を作ってはほどきの繰り返しをなんと8回。9回目にしてやっと理解して完成しました。苦節1週間です(笑)アネがオットがオトートが笑うのですが、意地と根性。とうとう手ぐすもふにゃふにゃになって、新しいものを買いに行きました。その成果がこれというわけです。
 「そんなにできないならやめてしまえばいいのに」と何度言われたことか・・・でも楽しいのです。下手の横好きの典型ですが、下手でも楽しいことってあるんだわ〜!と妙に実感してしまいました。特に先週は、たくさん歌番組があったし、特番もあったし、たくさん聞きこみたい新しいCDが手元にあったし、耳は音楽に集中し、手を動かす。至福の時間でした。もちろん今後もまだまだやるつもりです。そんなことをしていたせいで、かなり家事も日記も滞り、週末はおおわらわになったけれども(笑)
 さて、レッスン室はかなり変化のきざしです。全国的にも「世の中なんだか変」という空気があるように、わが地元もなんだかとってもおかしなことになってきました。服装がおかしい子供たち。挑発的な目つきの女子高生。ガンを飛ばす男の子たち。下着が見えるのはもちろん、おしりが見えるぎりぎりまで腰パンしている中学生。スカートの丈が限りなく短い女子高生。突然電車の中で大声で電話を始める大人。親の離婚で姓が変わる子供たち。平日にもかかわらず、小さい子供を連れて遅くまで居酒屋で飲んでいるおかあさん。
 多方面に影響が出始めているのですが、それはピアノのレッスンにも言えることで、家庭が様々な問題を抱え始めたので、それに伴って「ピアノどころではない」というお家が複数出て来ました。生活が荒れてしまって学校にも行かない子がピアノに来るはずがないし、家庭が崩壊し始めた家のおかあさんが、子供に断りもせずにピアノをやめるという連絡をしてきたという事態まで起こりました。かわいそうなことに、生徒自身は何も聞かされていず、結局おかあさまに無理やりやめさせられてしまいました。
 そんなこんなで、ここ2ヶ月でひとりがやめ、二人が「しばらくお休みさせてください」という事態になっていて、わたしの収入の面から言っても、かなり深刻な事態に陥っています。このままでは、新しい生徒を探すことも考えなくては。
 そんなやりきれないことだらけのここ数ヶ月の中で、うれしい出来事もありました。それは、ピアノを習い始めて6年目のTちゃんが、やっとピアノを買ってもらったことです。
 彼女は本当に不器用で、人が1週間でできることが、ひと月かかっても完全にできないこともあります。6年たって、やっとバイエルの43番まで来ました。これまでやってきた初級テキストはもう10冊以上。手を変え品を変え、なんとか彼女が弾けるようにしてあげたいと思いがんばれたのは、ひとえにいつだって彼女が楽しそうだったから。どんなに弾けなくても、どんなに指が動かなくても、いつも楽しそうにピアノにやってきて、レッスンを心から楽しんでいる様子だったから。
 それでもあまり同じ曲を何週間もやっていたりすると、不安になるのはわたしで、彼女を本当に楽しませてあげられているのか、がんばらせることで、むしろ苦しませているのではないか・・・とずっと気になっていたのです。そうこうしているうちに、彼女も来年は6年生。忙しくなっても、ピアノを続けてくれるだろうか・・・と心配もしていました。
 その彼女が先々週のレッスンの時、「森のはる」というちょっとむずかしい曲を、一度も間違えずに弾きました。両手が別々の動きをするし、左手は和音だし、普通の進度の子でさえ、ひと月くらいかかることもある、結構大変な曲なのです。
 なのに彼女は、2週間でこの曲をあげました。ふたりしてそれはそれはうれしかったので、レッスンノートにもカラーペンで「おめでとう!!」と大きく書きました。彼女もうれしくてうれしくて、その横に「弾けたぞ〜!!」とニコニコ顔文字入りのコメントを記しました。
 そのTちゃんが、「先生、とうとうママがピアノを買ってくれた〜!」と大喜びでやって来たのです。それまでの6年間は、ずっと小さいキーボードだけで練習してきた彼女です。強弱もつかないキーボードから、ペダルもちゃんとあって、椅子もちゃんとついているピアノに変わってそれはそれはうれしかったのですって。わたしも本当にうれしいです。おかあさまも、「ここまで続けられてがんばれたのだから、もう買っても大丈夫だろう」と納得されたのでしょう。
 今回ビーズをなんどもなんどもほどきながら、わたしはずっとTちゃんのことを考えていました。わたしは手仕事にかけては、想像がつかないくらい不器用だけど、こんなにできなくても楽しいってことも本当にあるのです。多分Tちゃんも、新しい曲がたとえすぐに弾けなくても「本当にピアノが好き」という言葉どおり、音楽そのものや、ピアノに向き合うことが好きなんだろうなあと実感的にわかったのです。
 もちろんピアノを買ったからといって、急に弾けるようになったわけでもなく、これからもまだまだ彼女の前にたくさんの壁がそびえ立つでしょうけれど、それでも一緒に乗り越えて行けたらなあ・・・なんて不器用に出来上がったキーホルダーを眺めつつ、そんなことを思いました。
 早速いつも使っているバックにつけてみたのが下の画像です。アニエスbのバックには、ちょっとイメージが合わないキーホルダーですが、しばらく記念につけておこうと思います(笑)