ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 二つ目のレッスン日記「山あり谷あり」

夏休みが終わって、ちょっとさびしいような、ほっとしたような不思議な気持ちでいます。

最後の1週間は振替三昧で、とても忙しくしてました。

わたしの夏休みのレッスンは、結構フレキシブルで、時間も生徒の希望により、午前中から来る子もいれば、いつもの時間の子もいて。

レッスン時間がばらけるから、時間にちょっと余裕ができたりもするので、一人あたりのレッスン時間が長くなるのはいつものこと。

生徒の希望により、いろんなことをするので、時々「ここ何教室?」という事態も起こります。

たとえば、31日のレッスンで言えば・・・

最初に朝9時に来た6年生のあいこちゃん(さっきのあいこちゃんとは別のあいこちゃんです!)は、夏休み明けに合唱コンクールのオーディションを受けるというので、伴奏の曲を見てあげました。

ほぼ弾けているので、彼女の伴奏に合わせてわたしが歌うというのがこの日のレッスンのハイライト。
わたしが手取り足取り、ドレミから教えた子が、時を経てここまで弾けるようになったんだなぁと感慨深く思いながら、わたしは気持ちよ〜く旋律を歌うことに徹っしてました。楽しかった〜(笑)

次に来たマリカちゃんは、実はリコーダーがとても苦手だと聞いたので、この夏中、レッスン終わりにリコーダーをやっていました。
わたしは実はリコーダーが大好きで、10年くらい前にリコーダーに名前を彫るお仕事をしているさと嬢に頼んで、マイリコーダーを新調したのですが、これはレッスン室でしばしば活躍しています。

マリカちゃんは、どうも息の入れ方が雑だったのと、上手に穴を指でつぶせないのがうまく吹けない要因だと思ったので、夏中、一緒にぴーひゃらぴーひゃらやっていたら、自然といつの間にかとてもうまくなって、最後のレッスンではクーリガーのメヌエットをデュエットしました。

これがとてもとても気持ちよくて、もっともっとやりたくなりました・・・わたしが。

マリカちゃんはもうリコーダーが苦手とは思っておらず・・・学期中はリコーダーは学校に置いたままになってしまうので、レッスンに持っては来れませんが、また冬休みになったら一緒にやりたい!と言っていたので、わたしも楽しみができました。

リコーダー用のいい曲を探しておきたいです。

3人目に来たモカちゃんは、なぜか「蚊」の自由研究で、蚊をつかまえるのがいかに大変だったかを、わたしに克明に話したかったみたいで、レッスンが終わったあと、20分くらい、延々その話をしてました。
おばあちゃんとおかあさんと、モカちゃんと3人でじゃんけんをして、負けたおかあさんが夕方外に出て、蚊を腕に止まらせて、血を吸わせている間にペットボトルに入れたんですって(笑)しかも、4匹も。

おかあさま災難〜(笑)

さらに彼女は2学期に「365日の紙飛行機」を器楽クラブでやることになり、タンバリンのパートになったので、タンバリンのリズムが合っているかどうか、見て欲しいというので、てきとーに伴奏をしつつ、歌を歌いつつ、タンバリンの音が鳴り響くという不思議なレッスンもしました。

モカちゃんのことを保育園の頃からご存知の方もいらっしゃることと思いますので、彼女の近況を話しておくと・・・
4年生になって、ブルグミュラーのおしまいあたりをバンバン弾いてます。いつだってやる気満々で、将来が楽しみな子のひとりです。

かと思うと、なぜかダンスの発表会があるから、ちゃんとリズムに乗れているか見て欲しいという子もいて。
自分で歌いながら踊って見せた子もいて、おもしろかったです。
(正直ちゃんと乗れているのかどうかは、よくわからなかったですが、超かわいかった、笑)

そんなちょっと風変わりなレッスンもあれば、ものすご〜くピアノが上達して、いい夏休みになったね〜と褒めてあげたい子も何人もいて。

その中に、4年生同士、6年生同士のふた組の同級生コンビがいます。

同じ学年で仲良しさんだと、時として進度が近すぎてむずかしいことがあるのですが、このふた組はどちらもとてもいい刺激になっていて、ライバル同士が両方メキメキ上達するという素敵なことが起こってました。

どちらも最初にいた子が、数年後に友達を紹介してくれたパターンで、新しく入った方の子が元々の生徒に教わったり、教えた子が、新しい子に刺激をもらってさらにがんばり始めたり。
そしてわたしは目から鱗が落ちました。

たった一年しか習えないかもしれない・・・ということで始めた6年生女子が、ものすごいスピードで上達しているのです。
ほんとに最初のレッスンでは一点ハがどこかもわからなかった子が・・・です。

「一年の終わりには、両手で弾けるようになれたらいい」と言っていたのに、すでに半年でバッハのメヌエットを弾き、スケーターズワルツを弾き、エチュードも楽しそうに進めているし、それだけでは飽き足らず、星に願いをや、アンパンマンのマーチや、ジブリの名曲のもうすぐ中級という曲たちまで弾いています。

小さい頃からずっと陸上の選手で、来年中学に入ったら本格的に陸上をやるそうで、多分ほんとにピアノを習えるのは小学校6年生の1年だけかもしれないけれど、今でも十分ひとりでチャレンジできる力はついてきているし「自分で譜読みができるようになって、ピアノを趣味で楽しめるようになる」という当初の目的はとっくにクリアーしています。

わりとうちの生徒によくあるパターンで、よその教室で断られてきたそうですが、断った先生に見せてあげたいです。
こういう子もいるんだから。いつから始めなきゃダメってことは絶対にないと思うのです。

かくいうわたしも、ほんとはここまで彼女ががんばるとは思ってなくて、ほんとにスゴイなぁと感心しきりです。

もうひと組の4年生たちは、片方がモカちゃんで、片方がみさきちゃんと言う子です。
さきちゃんもまだピアノを始めてたったの1年。

モカちゃんもすごく練習をする子だし、普通の子よりもずっと進度が速くて、他のちびっ子たちにあこがれられる存在でもありますが、あとから来たみさきちゃんが相当のつわもので。

この子は天才タイプなので、そう苦労せずに、たった1年とちょっとで、そろそろモカちゃんに追いつくか?・・・というところまで来てしまいました。

それはとてもいいことなのだけれど、努力家タイプのモカちゃんが、もしやほどなく抜かされでもしたらどう思うだろう?とドキドキする気持ちもあって。

わたし自身は天才ではなかったけど、その練習しないっぷりとか、それでも音楽が好きで好きでたまらないところとか、なんとなく苦労しなくても通り過ぎちゃう感じが、みさきちゃんととすご〜く似たタイプの子どもだったので、彼女の好きだけど練習に身が入らない感じもよくわかるしで(笑)

どっちも好きよ!どっちもがんばれ!とふたりのそれぞれのがんばりが、とてもうれしいことでもあるけれど、ちょっと困ったなぁと思っていて。

どうかすると秋の学校の音楽会のピアノ伴奏のオーディションで競うことになるんじゃないかな?と思います。
わたしはもちろん、どちらの子が選ばれても全然いいのですが、今のいい友達でライバルという関係から、どちらかが自信を失ったり、やる気を無くしたり・・・なんてことにはならないといいなぁと取り越し苦労がもう始まってます(笑)

そしてそしてことちゃんです。

これはずっといつか日記に書きたいと思ってたこと。

ことちゃんとは、6月頃に一度、わたし、大人げないことに喧嘩しちゃいました(笑)
今思い出しても、あれは叱った・・・とかじゃなくて喧嘩でした(笑)

月謝プラス教材費をいただいたことがあって、お釣りがあるというので、その場でお金を数えていたのを見咎められて
「どうして、せんせー、ことちゃんちからお金を取るの?」

そんな話から始まりました。

「ママはお金を払わなくてもことちゃんにピアノを教えてくれるよ?」
「先生、これじゃ、げっしゃどろぼうじゃん!」

これがことちゃんが言った言葉でした。

もちろんそこはオトナになって、わたしはなんとでも反論したわけですが・・・

喧嘩になったのはその後。

セカンドオピニオンっていうのもあるよね」と生意気な目の前の2年生はわたしにそういいました。

もちろんちょっと意味は違うけど、言いたいことはとってもよくわかり(笑)

「この教室じゃなくて、もっと安いところに行けばよかった!」みたいなことを彼女が突然に言い出して・・・

「じゃ、よそへ行ってみればいいじゃない。他のピアノ教室のおためしレッスンに行っておいでよ!」

「もっともっといい先生に会えるかもよ。」

売り言葉に買い言葉で、とんでもなくおとなげないレイン先生は、そんなバカなことを言いました。

ずいぶん後になって、おかあさまに聞いたところによれば、直前に「月謝泥棒」と言われたのは実はことちゃんで。
あまりに練習をしないので、おかあさんに「ことちゃん、こんなに練習をしないなんて、月謝泥棒だよ!もっとちゃんとしなさい!」と叱られたらしいのです。

で、よくわからないながらも、この言葉に深く傷ついたので、この効力のある強い言葉を、わたし宛に早速使ってみたというのが真相らしく(笑)

まんまと挑発に乗せられて致命傷を負わされたわたしが、案の定簡単に逆上した!というのが真相で(笑)

今思い返しても、こんなにカッコワルイ話もないわけですが(笑)


もちろん本気ではないにせよ「よそへ行ってみれば!」と言ったわたしのバカさ加減ときたら、反論の余地なしだし。

案の定、ことちゃんは、ものすご〜く傷ついて。

こんなにことちゃんが好きで大事で、かわいくてたまらないのに「よそへ行けば!」なんて心にもないことを言ってしまったわたしってば。
とはいえ、レッスン時間をムダにしては申し訳ないし。
一応オトナなので、そこからはポーカーフェイスでいつも通りレッスンをして。

おかあさまがピンポーンとインターフォンを押されたので、いつも通りレッスンを〆ようとしたら、いざ帰るという段になって、ことちゃんがわたしに抱きついてきて、どうやっても離れなくなりました。

まるで抱っこちゃん状態でテコでも動かないことちゃん。

「ここでこのまんまおしまいにしちゃダメだ!」とでも言うように、ほんとにわたしにかじりついていて、まったく離れる気配がありません。

そこで心底、悪いことをしちゃったなぁと気付いたわたしは
「ごめんね!」「ほんとごめんね!」「先生はことちゃんと来週も会いたいよ!」「よそへ行かないで。」「またうちにおいでね!」と言いました。

それでも黙ってしがみついたまま、まったくわたしから離れないことちゃん。

どうにもならないので、抱っこのまま、腰にくっつけたまま玄関まで連れていって、おかあさんになんとか引き渡したのですが、後味が悪いことこの上なく(笑)

わたしが知らん顔でレッスンを続けたことで、さらにものすご〜くことちゃんを傷つけたのだな!と気がつきました。

久々の大失敗。

翌週は、ものすご〜く反省したので、「ことちゃんがまたうちに来てくれてうれしいんだよ!」ということをいっぱい言うつもりだったし、いっぱい楽しい材料を集めて待っていたのですが、となりの家の塀の向こうに隠れてて、なかなか呼んでも出て来なくて、レッスン室に入ってもまったく聞く耳持たず、やる気もまったく見せてくれずで、空振りの時間が過ぎ。

(実はこの日あたりから、わたしの胃がさらに最悪になったのですが、この失敗が後を引いていたのかも?と今となってみればそう思えたりもして。ほんとダメダメなわたしなのでありました、笑)

ところがところが。

翌々週になったら、ことちゃんはレッスンバックと一緒に、決然とノートを一冊抱えてレッスン室に入ってきました。

それは自由帳で、隅々までなぞなぞやら、お絵かきやら、迷路やら、ことちゃんのなりたいものリストやら、着せ替えセットやらで埋められていて。
この一冊にどれだけことちゃんの想いがこもってて、彼女自身の手が入っているのだろう?と思うようなノートで・・・

「これはほんとは誰にも見せないナイショのノートなんだけど、一緒にそれを見よう!」と誘ってくれたので、ふたりで1ページ目から順繰りに、ノートを覗き込みました。

余白のとなりの最後のページのところに、目、鼻、口、髪型・・・と1番から5番までの番号が入っていて、ひとつずつわたしに選ぶようにと促され。

じゃあ目は1番で、鼻は5番ね・・・なんて答えたら、「では、これからことちゃんが、せんせーの絵を描きます。」と言い、その選んだ番号を見ながら、わたしの似顔絵を書いてくれました。

本当はレッスン時間を削ってまで、お絵かきをしていてはいけないのかもしれないけど、今、とても大切な時間を共有している気がして、言われるがままに、番号を選びながらことちゃんに絵を描いてもらいました。

出来上がったのは、ことちゃんとわたしがレッスン室でピアノに向き合いつつ笑っている、とてもとても素敵な絵。

わたしはわたしで、なんとか彼女と仲直りをしたいと思っていたのですが、ことちゃんはことちゃんで、なんとかわたしとの関係を修復しようと思ってくれてたんだなぁということがわかり・・・

なんだかとてもジーンとしたこの日のことは一生忘れられない思い出の一ページになったかも。

その後、やっとレッスンも通常に戻り、なんとかことちゃんの信頼を取り戻したわたしは、とてもスムーズにレッスンが進んで・・・

いるといいのですが、世の中そんなに甘くない!!(笑)(笑)(笑)

やっぱりかなりむずかしい彼女は、そうやすやすとはピアノに向かってくれないし、家でもおかあさまに聞いた感じでは、気乗りのしない日は見向きもせず、やる気満々の日はとことんで、なかなかに乗りこなすのがむずかしい暴れ馬状態!とおっしゃってました(笑)

ただし、わたしは二度とよそへ行けとは言わないし、多分ことちゃんも「セカンドオピニオン」とは二度と言わないと思います。

たとえばわたしが何かをハミングすると、すぐに乗ってきて、一緒にハミングで歌い出します。
逆もまた然り。

わたしはこういうのを信頼関係ができていると思うバロメーターにしていて、実際こんな風に鼻歌が自然にデュエットできるようになった子は、長く通ってきてくれる未来が待っていることが多いです。

うぜーよ姫なんかも、いまだに鼻歌デュエットをします。

うまく気持ちが乗っている時は、バンバンテキストが進む日もあって。

こうやって三歩進んで二歩下がりながら、きっと彼女とはずっとやっていくんだろうなぁと思います。

ちなみに、おかあさまにはあんまり詳しくは話していないのですが、多分なにかがあったことはきっと想像していらっしゃるのではないかな?

とにかく「焦らずゆっくりいきましょう」「今日はとても楽しんでました。」「先生が大好きなようです。」「わたしも楽しかったです。」「レッスンを楽しみにしています!」「ことも楽しみと言ってます。」
そんなやりとりが毎回行われているので、きっと今のところは、これがベストな感じなのかも?

ちなみにまったく同年代の子とおしゃべりできなかったのが、少しずつ、すご〜く慣れた子たちとはおしゃべりができるようになってきているそうです。

ただし、彼女が実は時としてあんなに激しかったり、おしゃべりだったりする素顔は、まだまだ同世代には見せてないみたいです。

いつかお友達とも(わたしとのように、笑)ちゃんと喧嘩したり、仲直りしたりできるようになることでしょう。

それにしても恥ずかしい出来事でした。
忘れたいような気もするけど、忘れちゃいけない気もしていて、なにかがあった時にお守り代わりに思い出そうと思います。

そういえば、一番ことちゃんのことで苦しんでいたときに、うぜーよ姫に相談をしたことがありました。
「まんま」話したわけではありませんが、ある生徒を傷つけちゃったこと。喧嘩になっちゃったこと。
そしてどうみてもわたしが悪かったと思っている話を、やってきたうぜーよ姫に思わず話してしまいました。

そうしたら、高校生になったうぜーよちゃんが、「わたしともいろいろあったよね〜」「でもね、せんせ、わたしも相当むずかしいコだったでしょ?」「わたしが今、まだここに通ってきているのが答えだよ!」「時間が経つと全部いい思い出だから。」って、ものすご〜くいいアドバイスをしてくれて。

ああ本当にそうだなぁと、彼女に感謝しつつそう思ったのでありました。

わたしはほんとに生徒にも恵まれているなぁと思ったの。

・・・

そんなこんな、いろいろありまして〜なレッスン日記を書き連ねましたが・・・

ここのところのそんなモヤモヤが一気に晴れた体験の話も書きたいな!

レッスンが終わって余裕があったらまたそんな話も。