ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 2016年6月 奈良旅の記録 その6 天川への道 バスバスバスの行き先は〜♪

タイトルは「山ねこバンガロー」。
生徒たちが大好きな学校の音楽で習う1曲で、よく彼女たちと歌います。
この旅の途中で何度も思い出したので、貼っておきます。

さて。

下市口の駅を降りると「バス停はすぐにわかるはずだから、安心してね!」とまほろば館のおねえさんがおっしゃっていたとおり、駅から見渡せる場所に、バスが停まっているのが見えました。

行き先を見ると、わたしたちが乗るバスではありませんが、バスの隣に待合所みたいな小さな場所があるのが見えて、わたしたちは乗車まであと20分あるし、お昼を食べちゃう?ということに。


待合所に入ると先客がいましたが、その方は他のバスに乗られるのか、すぐに出て行かれ、わたしたちだけになったので、手早く柿の葉寿司の包みを開いて腹ごしらえです。

待合所はとっても手作りな感じで、ベンチには、確か手作りっぽい座布団が敷いてありました。とってもレトロな感じです。

黙々と食べたので、あと発車時刻まで7〜8分というくらいで食べ終わり、ゴミをスーパーの袋に入れて、口を縛ったところで、なぜか待合所にの扉がガラガラ〜っと開いて、バス会社のユニフォームのおじさんが顔を出しました。

「天川行くの?だったら、バスの発車場所はもうちょっと駅寄りだから、そろそろそっちへ移動した方がいいよ?」

わざわざバス停に不慣れなわたしたちのために、雨の中、傘を差して、少し先の停留所から教えに来てくださったのです。

待合所は引き戸を閉めると密室だし、わたしたちがいることがどうしておじさんにわかったのかしらね?なんて首を傾げつつ・・・

わたしたちもまた傘を差して、おじさんに続き、駅により近い方のバス停に向かいます。

バス停付近の屋根があるところには、すでに2人の先客がいらっしゃいました。

どちらも地元の人なのかな?という風情で、片方はおばあちゃん。片方は若い奥さん(風の方)でしたが、ふたりとも軽装で、買い物帰り?という感じ。

わたしたちは大荷物なので、この間、もたもたとあっちを開けたり、こっちを閉じたり(笑)

ふとショコラ嬢に柿の葉寿司の入れ物のゴミを持たせてしまっていることに気がついたわたしは、「まだ時間あるし、ゴミ箱があったら捨てて来ようか?」みたいな会話をこそこそとしてました。

すると、バス会社のおじさんが急に振り向いて、

「ゴミってその袋?」「そこに置いておきな!」「バスが出た後で、おじさんが片付けておくから。」とおっしゃるではありませんか!!

!!!

「ええーーっ!?いいんですか?でもゴミだし・・・」とためらうわたしたちに、笑顔で「いいよ、いいよ、大丈夫。ついでやし。置いときや〜っ!」とおじさん。

なんて親切な方なんだ。

最近こういうやさしさって、なかなか表に出しづらい世の中だし、こっちが親切のつもりでも、怒り出したりする人がいたりもするし、なんとなくためらいがちになってたよね〜

なんて話は後でしたわけですが・・・
その瞬間は、バス会社のおじさんが、あまりに自然に次々とやさしさを投げてくださるから・・・

わたしたちはすでに胸いっぱい!という感じ。

そしてほどなくバスが来て。

ああ、このバスがここに来たのを突然さっきの場所で見つけたら、この大荷物だったし、きっと大慌てだったね〜と気がついたわけです。
意外と距離があるし、雨だし。

傘を開いて少し歩いてまた傘を閉じてバスに乗り込んでいくのですが、前で待っていたおばあさんは傘を持っておらず。

それに気付くやいなや、自然におばあさんの方に傘を差しかけて、一緒に歩き出す若い奥さん風の方。

「ちょっとやのに、悪いね〜おおきに!」とおばあちゃん。

「いやいや、ついでですし。」とにっこりな若奥さん。

譲り合ってバスに乗り込むふたりと「ゆっくり乗ってくださいよ!慌てることありませんからね!」と声を掛けてくださる運転手さん。

「なかなか雨がやまないね〜」「もっとムシムシすると思ったんだけど。」「でも、このくらいの方が楽やね。」と笑顔で会話をする、バス会社の方同士のおだやかな会話。

全員がしっかりと座席に座ったのを確認して、バスがゆっくりと滑り出します。

なんなの?このやさしさの連鎖は!と胸を熱くするわたしたち。

思わずうるうる。

それにしてもなぜバス会社の方には、わたしたちが天川に行く客だってわかったんだろう?
まさかまほろば館のおねえさんが手を回して伝えておいてくださった?とすら思ったよね?・・・なんて(笑)

いえいえ、そんなことはないでしょうけれど、もしかしたら先に待合所を出たおばさんが、わたしたちの存在をバス会社さんに伝えてくださったのかも?

あそこの人たち、旅行者風だし大荷物だし、あんなところでのんびりしちゃってるけど、大丈夫かしら?なんて。
この土地の方同士なら、自然とそんな会話も交わされそうです。

しばらくショコラ嬢とわたしは、ずっと下市口の駅でやさしくしてもらったおじさんや、ひとつ前の日記に書いた橿原神宮前の駅のアナウンスの話など、反芻トークをして、ただただじーんとしておりました(笑)

旅先で親切にされるとただでさえ、本当にぐっと来ますが、それだけじゃないんだな、多分。

ここの人たち、誰もが呼吸をするように自然に人にやさしくできる方たちで。
そのやさしさのオーラにすっぽりと包まれて、とても幸福な気持ちでいたのでありました。

首都圏ではここのところ、さらに電車の遅延が多くなって、急病人や人身事故もしょっちゅうで、公共の乗り物に乗っているときは、なんだかとっても戦々恐々としています。

うちの子らも時々押されて他の人に当たったとか、つまらないことで舌打ちされたり、席を譲ろうとして「よけいなことをするな!」と叱られたり(笑)遅延で怒鳴りあっている人を見て哀しくなったりして、電車の中では安易に心を開かないようにして、当たらず触らずで通り過ぎるなんてことを言ったりします。

実際になんらかで気が立っている人も多いし、もしくは眠りこけているか、スマホに夢中か?というのが普通で、だれもが疲れ果てて余裕がありません。

そんな毎日を送っていると、搾り出そうとしてもなかなかやさしさなんて出てきません。

そして勇気を出して行動を起こしても、必ずしもそれがいいほうに向かず、とんでもないしっぺ返しがかえって来たりもします。

そういう話をいたるところで聞く時代になってしまったから・・・こういうやさしい気持ちがさらに沁みるのだと思います。

やさしさってやつは、受けとるともちろんだけど、そばでやさしさを発揮する人、感謝する人を見ているだけでもとてもとても気持ちがいいものなんだなぁ〜と久々に実感しました。

忘れてたなぁ。

大人のくせに「そもそも人との距離感がわからない・・・」とか言ってる場合じゃなかったかも?
もっと心に余裕をもって暮らさないとなぁ。
まずは若い人や子ども達に大人がいい見本を示さないとだなぁ。

いろいろと考えさせられる、余韻が残るできごとでした。

そうこうしている間にも、バスは少しレトロで懐かしい下市の町を通り、気がつけば山間の道をどんどん入って行きます。

若い奥さん風の方は、わりと乗ってすぐの町中で、おばあちゃんは温泉センターみたいなところで、「おおきに」と運転手さんにごあいさつして降りて行かれました。

途中乗って来られる方も何人かいらっしゃいましたが、ずっと乗ってらっしゃるというよりも、あそこからここまで・・・という風に、ピンポイントで使ってらっしゃる地元の方が多かったです。

多分ここいらの方は何時にバスが出て、何時くらいに行きたい場所に到着するのか、知り尽くしてらっしゃるようでした。
大事な大事な、山の人々の足なんだろうなぁと思います。

レンタカーだとまっすぐにわかりやすい大きな道を選んで走っていくから、人々の暮らしはあまり見えませんが、バスだと集落を選んで走ってゆくから・・・

山深いところを走っていて、こんなところにさすがに人は住んでいないかな?と思いきや、突然、結構大きな集落が出てきたりして、次々変わる景色を追うのが楽しくてなりませんでした。

「つづれ折りの谷〜♪」で始まるKinKiさんのヒマラヤ・ブルーを気がつけば口ずさんでました。
まさにこの辺りはつづれ折りの山や谷の連続です。

乗降客が少ないので、どんどんバス停を飛ばして走っていきます。

バス停の名前に「○○邸前」とか、個人名がついていたりしておもしろいです。
家の前がバス停ってどんな気持ちだろう?わくわくするよね〜なんて話。

それにしても小さな集落がたくさんあるね!
ここにもあそこにも、人々の暮らしがあるんだなぁ!

そして自然のままの野山と、手がきちんと入った民家の花々や生垣。
どこにもある水の気配。

バスで行くのがこんなに楽しいとは思ってませんでした。

昭和の風情の看板やら、すごい坂道やら、不意に現れた集会場や学校やら。
すごい谷や山の景色。

そうこうしているうちに、あっという間に第一目的地「長谷」のバス停近くになってきました。

運転手さんに「丹生川上神社、下社へ行くには次で降りた方がいいのでしょうか?」と訪ねたら「いやいや、もうちょっとだよ!」「ちゃんと教えてあげるから、まだ座ってて!」とこれまたとても丁寧に教えていただきました。

そして「長谷」のバス停に着き・・・

降りるときに「今日天川まで行くの?」「だったら次のバスに乗る予定なんだね。」
「バスを待っているとき、進行方向のバス停のこっち側は狭くて危ないから、反対側で待ってていいからね。」
「降りたらまず、次のバスの時間をもう一度確認しておくんだよ。それからお参りに行って!」
「神社はちょっと戻ってあそこだから。すぐわかるよ、気をつけて!」

それはそれは丁寧に教えてくださいました。

なんて親切なんだ!

と何度かのしあわせのため息をつくわたしたち。

そして荷物を持って傘を差して、歩いていて気がつきました。

空気が全然変わってました。

おいしいなんてもんじゃない。

澄んだ空気の匂いと、澄んだ水の音。

今この時、奈良の山の中にいるんだね〜というのを強烈に意識していました。

ああ、しあわせだなぁ。

アドバイスに従って、バスの時刻をちゃんと確認して、一時間後にはここに戻ってくればいいのね!と確認して、歩くこと2分くらい?
丹生川上神社 下社に到着です。

ちなみに・・・大事なことを書き忘れてました。
バスで天川に行こうと思ったら、ICカードが便利です。
これもまほろば館のお姉さんに教えていただきました。

距離があるから、バス代が割りと高いし、小銭は?お札は?両替は?と考えるよりも、ICカードでピっ!と触れたほうが簡単です。

首都圏から行く方は、PASMOSUICAも使えましたよ。
行く前に多めにチャージをしておいたら、とてもとても便利でした。
参考まで。