ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

あまりにもありえない話

またまたこういう話ですみません・・・という話です。今日は仕事のお話です。
ここのところこんなのばっかり続いてますが、悪戦苦闘日記で、自分の未熟をさらす話とはいえ(笑)書かないわけにはいかない話のような気がするのであえて書きます。
コウイチさんの番組の数々とか、堂本兄妹の話とか、玉置さんの話とか、LFの話とか、ASKAさんとつよしさんの話とか、楽しい話もいっぱいあるし、多分全部ちゃんとついては行っているはず!?なのですが、とりあえずこれを書いてから次にいきます。
楽しい話から読みたい方は明日以降においでくださいませませ。
今日のところは遠慮なくまわれ右でよろしくです。
なかなか更新できずにいたのにはワケがあって、それはあまりにも大きな心配事があったからです。
実は10日のレッスン直前に、いつも泣きながらレッスンして帰る保育科の大学生のNちゃんの生徒のお母様からメールが来て
「本当に申し訳ないのですが、うちの子に今日レッスンに来るようにメールしていただけませんか?」というのです。
え?今日はレッスン日だし、彼女は無断で休むような子じゃないし「レッスンに来るように」ってどういうこと?????
そう思いつつも、言われた通り「今日はレッスンよね!?海外研修どうたった?話を聞くの、楽しみにしてるからね。待ってるよ!」とメールしてみたら「はい!わたしも早く先生と話したいです!」というメールをくれたのです。
ほらやっぱり。おかあさまったら、なんであんなメールをよこしたのかしら?
ところが・・・
時間を過ぎても彼女は現れず。
え?なんで?
15分をすぎたところでメールしてみたら「やっぱり体調が悪いので休みます。」とのこと。
明らかにとってつけたような言い訳。
こんなことは初めてです。
そんなわけで、おかあさまに折り返しメールしたら、おかあさまから
「実は家にもずっと帰ってきてないんです。ちょっと家の方でいろいろありまして。何か悩み事がたくさんあるのはわかっていたのですが、もう二十歳なんだし・・・ちゃんと話を聞く余裕もなくほったらかしちゃったら、それが悪かったんだか、なんでもイエスって受け入れてくれる場所へ逃げ込んでしまいまして・・・
家には大学のヨーロッパ研修から帰国して以来、一度も帰って来ていないんです。」とのこと。
それは大変な事態ではありませんか!!
そもそも彼女はとってもやさしい子だし、自分の気持ちよりも人の気持ちを優先しちゃうようなところがあって、そんな彼女が家に帰らないなんて、そんなご両親を悲しませるようなことをするなんて、よほどのことなんだろうと思ったのです。
その段階では、「なんでも受け入れくれる場所」ってことは多分、彼女がとってもなついているおじいちゃん、おばあちゃんのところにでも逃げ込んだのだろう・・・くらいに思ってました。
ところが先週になってもやっぱり連絡がなく。
なんどかメールしたら
「もう学校も行ってませんから。レッスンは結構です。」というにべもない返信。
もう10年来の付き合いですが、絵文字も何もない、そんな無機質なメールをよこしたのも初めてなら、学校に行ってないなんてことも初めて。「レッスンはもういい」なんて言われたのもやっぱり初めてでした。
ありえないメールです。
さらにそのあとは何をメールしてもまったく返信が返ってこなくなりました。
いえいえ、一度だけ・・・最後にメールが返ってきたのは、彼女がうちの生徒の誰よりもかわいがってくれたミントの死について、やっぱり彼女にだけはどうしても報告したくてメールした時。
「連絡ありがとうございました。」その時はとても律儀に返信をくれてそれっきり・・・
ああ、彼女らしいなぁ。
実はここのところ、彼女はずっと何事にも無気力に見えたし、夏休み中はバイトばっかりやっていて、学校のもろもろからまるで逃げようとしているかのように見えていたのです。
このままではピアノも含め、たくさんの教科で進級が危ういし、ピアノだけは練習をしなければ絶対にうまくはならない。
おかあさまは「もう二十歳なんだから、自分の責任で」と見ないフリをしながらおっしゃるけど、二十になったからと言ってすぐに大人になれるはずもなく・・・もうちょっとやさしくしてあげたらいいのに・・・とは思うけど、わたしはピアノの先生に過ぎないわけだし、彼女とオトートが同級生で、同級生の母でもあるわけで、余計な口出しができるような人格も経験もないわけだし・・・
だからと言って、わたしまで現状を見て見ぬフリをしちゃったら、彼女は絶対に単位を落としてしまう・・・と思っていたので、かなり「練習しなきゃダメ」「ちゃんとやろうよ!」「毎日ちょっとずつやりなさい!」
と、この夏はいつになく叱ってばかりいたことを思い出しました。
ああ、おじいちゃんおばあちゃんに、わたしは彼女をただただ苦しめるだけの敵だと思われたのかしら?
だから、ピアノの先生からのメールはムシしなさいって言われた?
多分自分のここのところのやり方に自信が持てずにいたので、よけいにそんな被害妄想的なことばかり思っていたのだと思います。
そうしたらほどなく彼女のおかあさまからメールがあって更に衝撃のひとことが。
実は彼女、おじいちゃんのところじゃなくて、地元の彼氏のところに転がり込んでいたのですって。
その彼氏も無職なので、ふたりでずっと家にこもって一歩も外へ出ず、誰とも連絡も取らず、ほとんど立てこもっている状態になってしまっている・・・というのです。
こんなに驚いたのは初めてというくらいの衝撃を受けました。
なんてーこったい。
「Nは先生のことだけは信頼しているように見えたから、ひょっとしたら先生には何か言ってくるかと思ったのですが、やっぱりダメでしたか・・・」とおかあさん。
その「やっぱりダメでしたか?」もかなりショックでしたが、何より彼女を追い込んでいる一端をわたしが担っていたらどうしよう・・・もしも彼女に何かあったら・・・何もかもどうなってもいいと自暴自棄になったりしたら・・・という後悔と心配の気持ちでいっぱいで、生きた心地がしなかったのです。
その後、ご両親が彼の家に乗り込んで、彼女は家に帰ってきたそうですが、能面のようでまったく誰とも話をしないんです。まるで彼に洗脳されてしまったかのよう・・・
そんな相談、報告メールが毎晩のようにやってきて、心底堪えてしまってました。
ここのところ、ずっと生徒が減りがちだったうちの教室だし、とうとう彼女もやめてしまうのか。それもこんなかたちで・・・途中で投げ出すのも悲しいし、何より彼女に拒まれてしまったのが悲しすぎる・・・
まあ、いろんなことをぐるぐると考えていました。
オットや家族は「そこまでおかあさんが相談に乗るのはおかしい。」「ピアノの先生の範疇を逸脱してる」と言うし、中学校の先生をしている生徒さんにも「先生、生徒の家庭の問題には絶対に深入りしすぎちゃダメですよ。あとあと大変なことになって、どうかすると全部先生が悪いことになってしまいますよ!」と忠告されるし。「そのうち、日に何度も何度もおかあさまから相談メールがくるようになって生活に支障が出ますよ」は次第にそうなりかけていて、それはさすがに困ったなあと思ってました。
そして・・・今日も今日とて懲りもせず「レッスン、今日は来れるかしら?練習してなくてもいいから、時間があるならいらっしゃい」とメールしたら彼女から「はい!行きます!」との返信。
!!!
それは始まったときと同じように突然・・・
え?え?ほんとにくる?今日はほんとなの?
そして彼女がいつも通り、ふっつーにやってきました。
ちゃ〜んとわたしの最初のメールを覚えていてくれて、「あのね、まずはドイツのスイスの話から先生にしてあげるね」と海外研修の報告から始まってふっつーにふっつーにスタートしましたよ、レッスンが。
この間のことを聞いた方がいいのか、聞かない方がいいのか、戸惑いながらもいつものとおりに最初の30分レッスンをして、あと15分というところで・・・ふと左手がつまづいて止まったところで・・・
突然「先生!」と言ったまま彼女がこっち側に身体ごと預けてきて、そのまんま号泣しちゃって、レッスンはストップ。
しばらく嗚咽していた彼女ですが、ゆっくりと本音を話してくれました。
気がついたら、わたし、なぜか彼女の左手をぎゅっと握っていて、話を聞いていただけなのに、一緒になってぶるぶる震えながら聞いてました。
何も言わずにはいられなくて、不器用にわけのわからないことを、でもどうしても言わなくてはならない、言ってあげたいと思ったことを1時間以上、ふたりともティッシュやハンカチを片手に・・・ずっととりとめなく話したけど、ちょっとでも伝わったかしら?
おかあさんも妹のうぜーよちゃんも、おとうさんも・・・みんなみんな、あなたのことをとっても大好きだから、とっても心配してたのよ。
あんなかたちで出て行っちゃって、帰りずらかっただろうに、ほんとによく帰ってきたね。
学校も行ったの?がんばったね。でも納得して行ったの?大丈夫だったの?
ほんと、勇気があるよ!
そんなに早く大人になろうと思わなくてもいいんだし、言いたいことがあるんなら、遠慮なくなんだって言っていいのよ?
おかあさんにさえ、遠慮し過ぎ。おかあさんなんだから、なんだって言っていいのよ。
おかあさんも本当に心配してたよ。
わたしもだけど、おかあさんくらいの年になったってやっぱり子育てってとってもむずかしいし手探りなの。
いつだって不安だし、どうしてあげたら一番いいのか、ものすごく考えてるけど、間違えることもある。
うまく伝えられなくて泣いたり、苦しくて眠れないことだっていっぱいあるのよ。
でもね、ものすご〜くみんながNちゃんのことを大好きなのは確かだし、わたしだってそうなんだからね。
それを絶対に忘れないでよ。
あなたを大好きなのは彼だけじゃないよ。
長い人生、先を急がなくちゃいけないなんて思わないで。
まだまだゴールは全然見えない。それはわたしの年になったって一緒だよ。
何よりも大事なのはあなたの命だから。それよりも大事なものは何もない。
もう会えないかもしれないと思ってたから、またレッスン室に戻ってきてくれてほんとにうれしい。
人生の中でどんなに迷子になってもまだまだやり直しはきくよ。
いっぱい挫折した子は絶対に強いから。
ひとつひとつは絶対にムダじゃないから。
ああ・・・並べてみると陳腐だな。ほんとに陳腐でカッコワルイ。
でもあまりにも必死過ぎて、あまりにも自分がカッコワルイことにさえ、気がついてませんでした(笑)
今思い出してみると顔から火が出そうです(笑)
とりあえず彼女はまたレッスン室に戻ってきて、どんな結論を選ぶことになっても、たとえばたとえ大学を中退することを選ぶことになったとしても、ピアノの本当の楽しさを知るまでは、ピアノはやめないと言いました。
またムリさせちゃったんじゃないかな?わたし、そう言わせてはいないかな?
いろいろ考え出すとキリがないけど・・・今日はぐちゃぐちゃになりながらも、ちゃんとお互いに思っていることは言わなくちゃいけない日だったと思いました。
彼女もいろいろと・・・
学校のこと、バイトのこと、おうちでのこと、つらいこと、でもピアノや保育の勉強は嫌いじゃないこと、自分のペースで勉強できるなら続けたいという気持ちもあること・・・でも同級生から置いてきぼり過ぎて辛すぎること・・・一生懸命にやっているのに、できないのが苦しいこと・・・
とことん話してくれました。
わたしは彼女がどういう道を選んでも応援したいと思っているし、連絡を一方的に断つのだけは絶対にやめてよ!それ、ほんとに苦しかったんだからね・・・と伝えました。
わかりました・・・と笑顔で彼女。
まだまだいろいろ悩みそうだけど、もうしばらくそばで見守らせてもらえたらいいなぁ・・・と言ったらオットが呆れて、吐いて捨てるように言いました。
「オマエ、新宿の母にでもなったつもりか!!」
しかも彼女が必要としていることを言ったとはとても思えないというオマケ付き。
ああ、どうしてこうなんだろう。
今回ばかりは「ほんといつだって無駄におせっかい。わかってるってば。」
心底そう思いましたのことよ。懲りないなあ。