ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 Robbie Dupree with specal guest Bill LaBounty

下の日記にも書いたとおり、全くの偶然にこのライブに遭遇することになりました。玉置さんのライブの帰り道、「ちょっと1杯飲みたいね〜」から始まったこの大冒険、ミュージックチャージが高くてぶーぶー文句を言うわたしを尻目に(ここしかすぐに入れる酒場がなかったの)、「まあまあ、ちょっと聞いてみようよ」というオットに引っ張られるように入ったのが「COTTON CLUB」というところでした。
 軽くウォッカをロックで飲みつつ待っていると、ほどなく今夜の主役たちが現われて、目の前でライブ。オットはもちろん、文句を言っていたわたしも、音の素晴らしさに釘付けになって、この往年のアーチストたちの名演奏、競演を心から楽しみました。
 会場がとても狭かったのがなにより素晴らしくて、演奏している人の息遣いが聞こえるくらいの距離です。メンバーが交わしあう視線も、デュプリーが出す指示も全部見えます。しかも偶然にもわたしはキーボードの手が完全に見える好位置でした。(何がなんでも、鍵盤を弾く人の手が見える位置に座りたいというのが、クラシックのピアノリサイタルを見るときに癖になっているのです)バンドの編成はボーカル、キーボード、ギター、ベース、ドラムス、パーカッションで、40人くらいの会場の大きさにぴったりな編成だったと思います。 
 よもや知っている曲があるとは思っていなかったのですが、「dance with me」とか、「Steal Away(ふたりだけの夜)」「This Night Won't Last Forever(涙は今夜だけ)」は聞いてみたら知っていました。これも後付で知ったのですが、「AORの2大カリスマが夢の共演」とパンフレッドに書いてありました。調べたところによるとAORとは「大人向けのロック」という意味らしいです。また、知っていた曲たちもヒットさせたご本人が歌っているとはよもや思っておらず、家に帰ってから「そんなすごい人たちの演奏を聴いたんだね」とびっくり。アダルティーでしっとり。繊細で、でも遊び心たっぷりな素晴らしいライブでした。
 途中で客席にいたゴスペルを歌いそうな身体が楽器という感じの黒人の女の人が舞台に呼ばれ、共に歌いはじめました。この方がまた体に似合わずものすごく繊細な歌を歌うのです。その他にも、ギタリストが、パーカッションを扱っていた人が、次々とボーカルをとり、また歌う人歌う人、素晴らしくいい声なのです。ある人はまるで演歌?と言うような心を鷲掴みにするせつない歌声、ある人は、さわやかに。個性の競演といった感じで聞き応えたっぷりです。
 さて、今夜の主役Robbie Dupree氏はというと、声を張り上げる感じではなくて、やさしくて温かみがある、楽器にもうまく溶け込む極上の美しい声でした。1940年代の生まれということで、ベテラン中のベテランですが、おごったところがないやさしい雰囲気がとっても素敵でした。
 「イマイチだったら、すぐに出ようね」と言っていた失礼なわたしたちですが、途中からすっかり降参して、ボトルワインを頼んでガンガン飲みつつ、体が勝手にリズムを刻み、指先がキーボードの指をコピーしつつ、勝手に動きつつ、もうノリノリ(笑)こんな風にお酒の入ったライブもとってもいいもんだなあと思いました。まわりのお客さんも、リズムに乗って体が自由に動いていて、とってもいい感じ。
 こんな風にさりげなく、力が入り過ぎない、でもグルーヴが心地よいタッチのキーボード、弾きたいのですが、自分では上手に弾けなくて、アクセントの加減とか、ノリ方にとっても興味があったので、酔っ払った頭と指で必死にキーボードのアクセントをわたしの体に刻みつけようとがんばりました。
 その時は、ちょっとわかったような手ごたえがあったものの、一晩寝たら、完全に忘れてしまってとっても残念。一度目の前で聞いたくらいでそんなに簡単に自分のものにできるのなら、とっくにできるようになってるって。バカじゃない、レイン。でも酔っ払った頭でそんなことに必死になっている自分が結構好きでした(笑)
 夕べのバンドのメンバーは、全体的にかなり皆さん年配で、テクニックをひけらかしたり、奇跡的なアドリブを見せたりとかそういうのではないのですが、終始心地よいリズムを刻み、なめらかに穏やかに演奏しながら、酒場に集まる様々なテンションの客相手に、気がつけば聴いている人たちの心を捕まえていくその姿を見ていたら、なんだかじんとしてしまって、胸がいっぱいになりました。
 いい音楽に触れること対しては、いつも貪欲でいたいなあとあらためて思いました。素晴らしい夜に乾杯!