ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

奈良旅日記 7月11日編 その3 岡寺

 石舞台の次の目的地は「岡寺」と決めたのはいいのですが、石舞台からまっすぐに北上していく道は、地図で見ると「急な坂道」と書いてあって、暑さと自転車漕ぎで疲れていたわたしたちは、この計画は断念して来た道を少し戻り、風情のある古びた街並みを走って飛鳥寺の方へ出ようと思ったのです。

画像は途中信号待ちで撮った空。前回ライブの時に来た時も、このあたりはこんな空の色をしていて、わたしの中で明日香の空というとこんなイメージです。雲の流れがとても速くて、多彩なグレーのグラデーション。
雨がようやく上がったので蒸し暑い合羽も脱いで気持ちよく走っていたら「岡寺はこちら」と書いた標識が出てきてびっくり。こちらからも行けるらしいのです。
「これが目に入ったということは、やっぱり行った方がいいってことかも!?」ということになって、やっぱり当初の目的通り岡寺を目指すことになりました。
曲がってみたはいいけれど、ここからが結構な上り坂で、久しぶりに自転車を立ち漕ぎしました。
考えてみれば「急勾配を上がらなくてはいけない」と書いてあってやめたわけで(笑)どっちの道から行こうが坂道は避けては通れないのです。そりゃそうだ。
息をはずませながらしばらく行くと自転車置き場があって、ここからは徒歩です。
更に急勾配になっていて、だから自転車はあそこまでなんだなという感じ。
途中お店があったり民家が何軒かあったのですが、なんだか急勾配の上に斜めに立ってるような不思議な感じがしました。
「うっかり家の前に何かものを置きっ放しにしちゃったら、坂を転がり落ちて取りに行くのが大変そうだよね!」なんて言いながら歩きます。
ちゃんと踏みしめて歩かないと危険な感じです。
それより何より「この先にお寺がありそうな感じじゃないんですけど」…なんて言いながら(笑)
そんなこんなで息も絶え絶えにしばらく登っていくと、山の上の方に三重塔がちらちらと見えてきて「うわぁすごい。」と思わず声が出ました。これってもしや桃源郷!?という景色です。

ここに近くまで行って撮った画像はこんな風です。興福寺五重塔薬師寺の東塔、西塔は近くからはなかなか画像に全部を納められませんが、ここの三重塔はちゃんと一枚にすっきり収まりました。
まだ新しい感じでとても美しくて、四方にライトがあったところを見るとライトアップされることがあるのだろうと思われます。山の中腹にあるこの三重塔が、静かな明日香の地でライトに浮かび上がるところを考えると、想像だけでうっとりです。
さて。やっと岡寺の門が見えた時にはすでにぐったり。門のちょっと手前には駐車場もあって車で来たらもっとずっと楽だったんだろうなあとも思ったわけですが、もっと年を重ねたら歩いてくるのはとうてい無理だろうし、苦労したからこそ感じることができたものもたくさんあったような気がするし、今回は自分の足でたどり着けたということがとっても素敵なことのように思えました。
お寺の静かな雰囲気といい、山の中腹からの景色といい、とても清々しい気持ちになれて、いい思い出になりました。
門から入ってわりとすぐのところに蓮の花がありました。
蓮の花のイメージは、水の上に浮いている感じなのですが、ここ明日香で見た蓮はこんな風に鉢植えのものが多くて、茎がするする〜っと伸びたところに可憐な花が咲いていました。
 
最後の画像はこの地の標高を示したもの。高いところにあるんだなあと実感です。

ここのお寺は厄除け観音霊場なのだそうで、またの名を龍蓋寺と言い、この近辺の農地を荒らす悪龍を閉じ込めたとされる「龍蓋池」が今もあるのだそうです。
びっくりしたのがたくさんある仏さまがピカピカに磨かれたガラスの向こうにいらしたこと。お寺という場所と仏像とガラスがなんとなく不似合いな感じがしてとっても印象に残りました。
 
そして画像は三重塔があるところから見た景色。いかに高いところにあるかがわかると思います。もうひとつの画像はもうちょっと遠景で、下の方に見えるのが明日香の村や遠くの山々が見えました。
この景色を見ながら、かなり標高が高いところにひっそりと建っているからこそ、この場所のこの静けさや美しさが長く守られているのだと思ったりもしました。
お参りを終えて坂を下っている途中で、韓国の方に声を掛けられました。
この方は昨年から京都に住むようになったという同世代かもうちょっと上くらいの男性で、どうやら大学の先生みたいでした。観音さまが大好きで京都のお寺もたくさん巡ってらっしゃるそうですが、わざわざこの日は奈良にも足をのばされたのだそうです。
そういえばお昼を食べていないのですが、不思議とふたりともご飯休憩のことはまったく考えておらず、「次は飛鳥寺ね!」なんて言いながらまた自転車に乗って出発です。