ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 りんご農家 木村秋則さんの本 その2

追記:いっぺんアップしたものを、ひどく長いので2つに分けました。この「その2」は下の日記の続きで、3時代に読まれた方はすでにご覧になった文章です。
 どちらにしても長いので、パソコンで見た方がいいと思います。すみません。 
 さて。2冊目です。

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)

「りんごが教えてくれたこと」
 この本は1冊目にわたしが読んだ本よりもずっと専門的で、農業のあり方や彼の農業に対する考え方などが詳細に書いてありました。
 先にこれを読んでから「すべては宇宙の采配」を読んだら多分印象が全然違ったと思います。
 こちらは子どもから大人までとても読みやすくてわかりやすい農業の話がいっぱいです。
 しかも、りんごや農業を子育てや自分の仕事や人生におきかえても参考になるような話がたくさん載っています。
 ただ、わたしという人間はどこか面白みのある人、どこかヘン(失礼!)なところがある人の方が断然魅力的と思ってしまうタイプなので、その点から考えると先に「すべては宇宙の〜」を読んだのも、わたし的には正解だったかも!?(笑)
 とっても真面目な方や、超現実主義の方でもこちらの本なら多分大丈夫かと思います。
 というわけで感想本編へ。
 りんごにとどまらず、お米や野菜作りにも広げて研究してこられたこと、彼が実践し成果を上げてきたやり方が惜しみなく語られていて、農業についてまったく素人のわたしでも読んでいてとてもおもしろかったです。
 何よりも心に残ったことは、とにかく土を作物を観察することが一番大切という話です。「すべては観察から」という考え方は子育てやピアノの生徒とのかかわりにも応用がききそうなことがたくさん書いてあって、なるほどと思いました。
 また、自然の営みがいかによくできているかということがたくさん語られており、その自然の営みに逆らうのではなく、なるべく自然の状態に戻してあげた方が植物本来の力を発揮して大きく実らせることができるというお話もありました。
 たとえば雑草を敵ではないというお話。雑草や豆科の植物の役割として、土壌のバランスを取るということがあるそうで、土の中の何かの成分が増え過ぎるとそれを吸い取ってくれたり、たとえば土の中の足りない窒素を補ってくれたりもするそうです。いろいろな雑草がたくさん生えているということはそれだけいいバランスに近づけることができるのだとか。
 これを肥料でやろうとすると、実は撒いた肥料が100%使われるわけではなくて無駄なものがメタボな作物になってしまったり、土壌をかえって汚染してしまうことにもなるのだそうです。
 また自然のものではない化学物質が入った飼料を与えられているブタの世界でもいじめが起きてきて、群れの中に尻尾をちぎられた子がいたりもするのだそうです。この飼料とブタの行動の間にも何かの因果関係があるのでは?というお話です。
 また、農薬についても書かれていて、人為的に害虫を殺せばいいと言うものではないそうです。
 雑草がたくさん生え、太いみみずがたくさんいて、生命があふれ、すべてが循環し、命をつなぐための交流が頻繁に行われる土の上でこそすばらしい作物が育つのだそうです。
 だからと言って「自然のまま」ということはイコールほったらかしということではなくて、常に植物や土の状態を観察して、上手に手を入れてあげることが大切とも書かれていて、そこもまた子育てと一緒だと思いました。
 木村さんのりんごと普通の栽培方法で作られたりんごを比べる実験が載っていて、木村さんのりんごの方が圧倒的に長持ちし、しかも最後まで腐らず枯れていくという実験結果がありました。
 今、木村さんはあちこちに出かけていって、この農法をどんどん広める努力をされているのだそうです。
 木村さんの話を聞いた若者の中で、農業に戻ってくる人たちが増えているのだそうです。この農法はたいして道具はいらないし、なにより夢があるから…と木村さんがおっしゃっていましたが、なるほどと思います。
 また、この本では何を食べたらいいか、どんな風に子どもたちを育てればいいのか、どうあるのが理想なのか?というようなことも考えさせられました。
 とてもいい本に出会ったと思います。今年の集大成としてどうしても書いておきたかったので、今年のうちにと思い、まとめてみました。