ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 This Is It.

 オットと一緒に先週の土曜日にマイケルジャクソンの「This Is It.」を見てきました。
 妹に言ったら「おねえちゃんが行くとは意外〜」と言われたのですが、そうかしらん(笑)
 こんなことを言ったらファンの人に殴られそうですが、土曜日はオトートの学校があって5時半起きだったし、わたしたちがチケットを取っていた午後1時半くらいというと一番眠くなる時間だしで、睡魔に襲われたらどうしよう!?ととっても心配でした。
 実際に予告がえらく長くて、予告を見ている間に何度も意識が飛んで、こりゃホントにヤバイ!?と心配になったのですが、本編が始まったら全然眠くなるどころじゃなくてもうドキドキしながら釘付け@@@@
 上映時間は決して短くはなかったはずですが、あっという間でした。
 オットもわたしも、彼の曲の中で耳馴染んでいる曲は何曲かありますが、曲名をたくさん言えるほどのファンではないし、わざわざ音源を探して聞いたりするほどでもなかったのですが、聞いてみたらよく知ってる曲が結構たくさんありました。 
 映画に行ってから今日でちょうど1週間になりましたが、ふとネットに向かうと彼の曲の音源を探してしまったり、動画サイトで好きな曲を検索してしまったりするわたしがいて、オットともDVDにならないかしら〜DVDになったら手元に置いてじっくり何度も見たいよね〜すごかったなぁ〜と折に触れて話題にしています。
 映画本編はライブのリハーサルなので、ライブを創っていく過程がつぶさに見てとれるのですが、説明しているかと思ったら突然ひと節(ふし)歌って「こんな風に」と指示を出したり、歌いながらちょっとした手の振りをしたり、ターンをしたりというシーンがたくさん出てくるのですが、ちらっと見ただけで続きが見たい、完成品はどんなにすばらしいクオリティーになるんだろうとわくわくします。
 単純に彼の歌声や表現力にあちらこちらで圧倒されます。
 それはスクリーンのこちら側のわたしたちだけではなくて、ライブを一緒につくっているスタッフさんやダンサーさん、ミュージシャンのみなさんも同じだったらしく、リハーサルなのに、いつの間にかその場にいるお仕事仲間の人たちが熱狂して大盛り上がりになっている場面が何度も出てきたりしました。
 今回のライブツアーが発表された後も、「もう過去の人」みたいに言うメディアもたくさんありましたが、画面のマイケルを見ていたら、そうでないことは一目瞭然です。
 その歌声はさらっと歌っているだけでもまわり中を振り向かせる何かを持っているし、手を前にパっと広げるだけで、一度ターンするだけで、音楽の視界がパーッと限りなく開けるような、すごい感覚を覚えました。
 また、ディスカッションしながらどんどん進化していくステージの様子がつぶさにわかり、おもしろかったです。
そしてこれだけすごいライブがここまで高い完成度で出来上がっていたにもかからず、一公演も行われることなく、完成した作品を誰も見ることができないまま終わってしまったことが残念でならない気持ちになりました。   
 印象に残った歌やシーンはいくつもありますが、中でも「human nature」がとても印象に残ったので、家に帰ってきてからあちこち検索して動画を探したのですが、発売された当時の歌と比べてみると、今の歌声も全然ひけをとらず、それどころか以前よりも歌い込んだ分洗練されているし、表現力も増していて、今後も折に触れて彼の歌声に触れることができたらどんなによかっただろうと思いました。
 マイケルジャクソンが表現者としてすごい人だということはよく知っていましたが、この映画を見ていると、演出にも大きくかかわっていて、クリエーターとしてのマイケルジャクソンという人の横顔が至るところで垣間見ることができます。
 あくまでも出発点は「彼の頭の中にあるもの」で、彼の言葉やイメージを優秀な演出家さんや音楽監督さんたち、ダンサーやミュージシャンたちが広げてゆき、彼の頭の中にあるイメージからはずれそうになると、納得がいくまで何度でも軌道修正してゆきます。
 途中、イヤモニが気になってちょっと苛立ったり、抱いているイメージを夢見るような表情で語ったり、いろいろな彼の素顔が画面からあふれ出てくるのですが、とっても繊細で研ぎ澄まされた感覚を持っていて、かつ人としても惹きつける何かをいっぱい持っている方でした。
 こんなに物事を感じすぎてしまう人だから、いろいろと誤解を受けることも多かったのだろうし、何かを言われるたびに深く傷つきどんどん自分の殻に閉じこもってしまったのもよくわかるような気がしました。
 こういう素顔や、いまだ世の中に出きったとは言えない素晴らしい才能が、亡くなってから始めて世界中の人にちゃんと理解されたということが、すごくもったいないし不条理だなあとも思います。
 小さいころからスーパースターの名をほしいままにしていた彼が、年を重ねるにつれ奇行だのなんだの言われたり、訴訟をたくさん起こされたり、お仕事以外のところでばかり注目されていたのが気の毒でなりません。
 着々と完成に向かうライブのステージを眺めつつ、葬儀の時に忘れ形見の女の子の口からあふれ出てきたパパへの愛の言葉だったり、友人のみなさんとの心温まるエピソードとか、いろいろなことが頭をよぎって、どうしてこのタイミングで天に召されてしまったのだろう、彼のステージを心から待ち焦がれていた世界中の大勢のファンや、一緒に彼の舞台をつくってきたスタッフのみなさんも、さぞかし残念でならないだろうという気持ちがあふれてきました。
 映画の上映期間は延長され、あちこちで見た人たちが絶賛している声を聞きますが、生きている間にその言葉をご本人に伝えられたらよかったのに。
 そして誰よりもご本人が一番ライブを最後までやり遂げたかっただろうなぁと思います。
 書いている間にもう一度見たいシーンがたくさん出てきてしまい、そんな気持ちを持て余しています。DVDになるといいなぁ。