ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 ゴミ置き場に捧げる5分

 つい先日、たまたまNHKにチャンネルを合わせていたら、杉良太郎氏が出てました。彼は、わたしの母世代くらいのスターだと思うので、わたしはあまりよく知りませんが、流し目が有名で、大スターだったということと、ボランティア活動をたくさんされている方だということは知っていました。
 この方のボランティア精神のルーツはおかあさまで、まるで日本のマザーテレサのような方だったとか。誰にでも献身的にやさしいステキなおかあさまだったらしいです。
 そのテレビを見ていて、ふと、ご近所のIさんという方を思い出しました。Iさんは70代後半とおぼしきご婦人で、大きなお庭がある平屋建てのおうちに80歳を過ぎたご主人とおふたりで暮らしていらっしゃいます。
 いつも小ぎれいでステキなお洋服を着ていらっしゃる奥様ですが、一方でとっても気さくな方なので、よく立ち話をします。若々しくて話題も豊富で、わたしも年を取ったらあんな風なステキなおばあちゃんになりたいと思わされる方です。
 そのIさんとはよくゴミ置き場でお会いするのですが、ある日、会うたびに袋を持って、ゴミを片付けたりお掃除をしたりされていることに気がつきました。
 「自主的に毎度お掃除をされているんですか?」と聞いたら、「ゴミの日は週にたった4回だから、そのたびに5分間だけ、週に20分だけゴミ置き場のために時間を捧げることにしているの」とおっしゃいます。
 実はわたしたちが置いているゴミ置き場は35軒くらいで使っているのですが、このうちの10軒がひとつのアパートで自治会に所属していない無法地帯で、何度誰かが注意してもそれはそれは滅茶苦茶な捨て方をします。
 大家さんも東京で、普段の暮らしにはまったくノータッチだし、住人は皆さん若くて夜中に帰って来られるような方ばかりなので、夜中にごそごそゴミを捨てるし、そもそも仕分けをまったくしないしで、カラスや野良猫の餌食になって、このあたりでは、常にワースト1のゴミ置き場という不名誉なレッテルを貼られているのです。
 もちろん他の人たちも気がついてはいるのですが、あまりにも汚いので、ゴミ当番の日以外は近寄りたくない場所というわけで、ゴミを出すやいなや、そそくさときびすを返して小走りに走り去るというのが一般的(笑)
 そんな場所でゴミ当番でもないのに(半年に一度、1週間だけは順番で回ってきます)ひとりこれ見よがしに掃除をするのもイヤらしいかしら?なんて思って、腰が引けていたのですが、そんな中、黙々と5分間をゴミ置き場に捧げるIさんがとってもとってもカッコよく思えたので、半年くらい前から、その場に一緒に居合わせた友達とわたしも、マネをして5分間だけゴミ置き場に捧げるということをやってみることにしました。
 始めてみると自分のタイミングで好きな時にちょろっと手を出すだけなので、意外と簡単です。5分間でやれることは結構あって、出してはいけないものをより分けて、ビニールに入れるくらいはできるし、カラスよけネットからはみ出したゴミをネットの中に押し込むだけでもだいぶ汚れ方が違います。わたしたちはIさんのマネをしているだけですが、それでもなんでもやらないよりはやった方がマシというわけです(笑)
 それにしても絶対に公共の場を使うモラルが低下していると思うこの頃です。いつもぐちゃぐちゃに捨てるゴミの中に、必ずピンクの口紅がついたたばこの吸殻がいっぱい詰まった赤ちゃんの粉ミルク缶があって、それを見るとゾッとします。
 一方でIさんみたいに誰に頼まれたわけでもないのに、ひとりでも黙々と動いている人もいるわけで、彼女のような存在がもっとこれからの日本をになう子どもたちの目に触れて、いい方向に感化されてくれるといいなあと思います。