ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 奈良日記 その3 興福寺の仏像たち

 鹿Tシャツを見た後で、真っ先に向かったお寺は、近鉄奈良駅からほど近い興福寺でした。
 ちなみにこの画像は泊まったホテルにほど近い、池側から見た五重塔です。水に映った五重塔がゆらゆらとそれはそれは幻想的に見えたのでデジカメで撮りました。形があるようでないような、どんな形にも見えるような・・・いつもは「考える葦」なんかじゃなくて、どちらかと言えば「えいや〜!」で目をつぶって飛び込んでしまう無鉄砲タイプなのですが(笑)この旅ではなぜか考えさせられることが多かったです。
 興福寺には、五重塔法隆寺夢殿と同じ八角円堂の北円堂、南円堂、三重塔などがあります。
 ひととおり、いろいろな建造物を鑑賞してから、この中にある国宝館に入ったわたしたちは、かなり長い時間をかけて、ゆっくりと仏像を鑑賞しました。
 (以下、触れる仏像については、このページのデータベースから検索して画像や説明を読むことができます。)
 その中ですごく心に残ったものがいくつかあって、たとえば教科書でもお馴染みの阿修羅像の実物は、写真を見て思っていたよりもずっと繊細で、憂いのある少年のようなお顔をしていました。
 また、五部浄像も心に残った仏像です。
 不思議と憂いを含んださびしそうな顔の少年のような仏様が多く心に残り、わたしのこの時の心の状態を反映しているのかしら?なんて思ったり。もしくは単に「明るくてもどこかにちょっと影がある、奥行きが深そうな人に惹かれる」という自分の好みの話なのかも?なんて思ったり。
 もちろんしみじみするだけじゃなくて木造天燈鬼・龍燈鬼立像なんていうユーモラスなものもあったのですが、これらもまたよく読んでみるとユーモラスなだけじゃなくて、深いことが書いてあったり。
 かと思うとヒンズー教の神様とのつながりが色濃くある話が説明書きにあったりして、マレーシアで華やかで極彩色のヒンズー寺院をよく見かけていたわたしとしては、すごく興味を持ったりもしました。
 いろいろな仏像にいちいち興味を引かれ、なかなか前に進めなかったわたしですが、更にわたしの心に残った仏様があって、名前までは覚えていなかったものですから、家に帰って来てから一生懸命興福寺のサイトを見て、あれは何だったんだっけ!?と探してみました。
 ひとつは須菩提像(すぼだいぞうという仏さまで、

とらわれのない心、かたよりのない心である「空」を、最もよく理解していたので、解空(げくう)第一の人と称された。

と書いてあります。
以前に般若心経についてやさしく書かれた本を読んだとき「色即是空」の意味として書かれていた言葉が蘇ります。そこには「とらわれのない心、かたよりのない心、こだわりのない心」と書いてあって、その言葉がとっても心に残ったのですが、その「空」を最も理解していたとされる方の像に、なぜかはわからないけれどとても惹かれたことにちょっとびっくりしました。
 この仏様に強く惹かれたということは、「空」の心をもう一度思い出しなさい!というわたしへのメッセージかしら?なんてそんなことを思ったりもしました。
 またもうひとつはというと沙羯羅像(さからぞう)と言う仏像でした。これに関しては、お顔そのものにとても惹き付けられて記憶が鮮明だったのですが、さっき探し当ててからその説明文を読んで更に鳥肌が立ちました。

八部衆の「龍」に相当する。
水中の龍宮に住み、雨を呼ぶ魔力を持つ。釈迦誕生のときに清浄水を注いで祝った。
像は頭に蛇を巻き、その頭上で蛇頭を立てる。左を向き、少年の顔にあらわす。

こんな風に書いてあったのです。ここでもまた「龍」です。雨の神様です。何の先入観もなく、とても惹き付けられてしまいました。
 実は、マレーシア時代の友達のひとりが、最近とても仏像に凝っているのだそうです。「仏像はいいわよ〜」とは聞いていましたが、これほど惹きつけられるとは思いませんでした。
 ひとつひとつの作品が、とてもスケールが大きくて迫力満点です。息をするのもはばかられるような緊張感と、歴史を超えて残ってきた重みも感じます。
 いろいろな仏像をじっくり眺めていると、なんだか自分自身の心の奥底まで見透かされているみたいな気持ちになって、ただただ「ちっぽけなわたし」を意識しながら呆然と立ちすくんでおりました。
 ここを出て、他にもいろいろな場所を回ったのですが、なぜかライブの途中で不意に、ここで見た仏様の顔が脳裏に浮かび、ライブのことを思い出すとき一緒に仏さまをも思い出します。
 一緒に熱心に仏像を見ていたショコラさんも、どうやらライブ中に仏像が浮かんだそうで、ふたりとも脳内では仏像と244さんがコラポしていたわけです(笑)不思議〜!
 こんなことも奈良ならでは。いい思い出になりました(笑)