ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

[KinKi Kids] エール〜それぞれのソロからKinKi Kidsへ〜

Harmony of December

Harmony of December

 ちょっと前に立ち読みしたある音楽雑誌に、KinKi Kidsについてちょっと興味深いことが書いてありました。要約するとこんな感じです。

今年のそれぞれの活動は、偶然かもしれないが、数年来相方がやってきた方向性と類似していて、面白い。たとえば、光一さんがやった、自作曲を引っさげてツアーをするスタイルは剛さんっぽいし、100公演などというストイックなライブを1箇所でやるようなスタイルは、まるで毎年「SHOCK」に全身全霊で立ち向かっている光一さんっぽいと。
 来年の10周年に向けて、今年はわざとリリースを薄くするという手法を取っているらしく、そういうことはよくあること。多分今年のソロ中心の環境は、最初から想定の範囲内だったに違いない。

とまあ、こんな風です。
 この雑誌でも言われているように、一見正反対に見える二人が別々に考えたことがシンクロした!と思う瞬間は過去にも何度もあって、やっぱりこの方たち、正反対なところとそっくりなところを双方あわせもっていて面白いなあと思います。
 特に、ここのところのそれぞれのアルバムの作り方なんかを見ていると、内容というより作り方に共通点が多いです。
 たとえば、流行に捉われず、あくまでも自分の頭の中で鳴っている音を忠実に音楽にしていること。職人のように凝りまくり、粘り強く意見を戦わせ、作品つくりの細部にまで本人自らこだわっているところなんかも。そして人の意見や時代の流れにも揺らいだりせず、興味のある分野に対して一直線なところも似ています。
 今年のCDリリースとヒット曲の傾向を語っている様々な場所で、「今年はジャニーズのひとり勝ち」とか、「時代に乗せるために考え抜かれたリリース」「ヒットして当然の布陣」などと言われています。確かに毎週のようにジャニーズのリリースがあり、歌番組には常にジャニーズの誰かが出ていたし、ヒットさせるためのあらゆる工夫がなされていたのは、素人目にもあきらかでした。ネームバリューのある実力派の人に曲作りを任せ話題をさらうとか、時代が求めているらしい昭和歌謡風の曲に印象的なダンスを組み合わせるとか、人気ドラマの主題歌としてリリースするとか、etc.etc.
 ふたりのソロ曲を聞いている限り、その法則にはちっとも当てはまるよう見えません。それぞれがとてもいい曲で気に入ったし、リリースされただけでとってもうれしかったですが、レコード会社にしてもヒットを狙ってギラギラしている様にはぜんぜん見えないし、この人たち、ホントにあの事務所に押されてる?!と思うくらい、静かに静かにリリース日を迎えたような気がします。
 KinKi Kidsの曲にしても、曲自体はとってもいい曲だしふたりの歌唱力は際立っていましたが、だからといって「受けを狙った曲」であるとも、戦略的に考え抜かれた曲ともとても思えません。一般の人が一度聞いただけで思わず食いつくタイプの曲ではないし、かと言ってファン以外には、耳に馴染むほど聞く機会すらありません。
 たとえば「青春アミーゴ」とか「抱いてセニョリータ」みたいなタイプのちょっとなつかしめの昭和歌謡テイストの曲に大きなタイアップを付けてKinKi Kidsがリリースしたら・・・大物ミュージシャンに鳴り物入りで曲を書いてもらって大宣伝をしたら・・・多分もうちょっと結果が華々しいものになっていたかもしれません。
 でもあえてそれをしなかったのはなぜなんだろう?実は、今日ある病院の待合室で散々待たされてしまったので、暇にまかせてそんなことをぼ〜っと考えてました。暇人でごめんなさい(笑)もちろん憶測の域を出ないので、そういう考え方もあるのね?ぐらいに、話半分で聞いてくださいね。
 実は事務所にもレコード会社にも一見ほったらかしにされているように見えて、「それぞれが今、本当にやってみたい音楽」を、そもそもあまり縛りがないところでやらせてもらえたこと事態が、実はすごいんじゃないかと思ったのです。ちょっと前の日記に、「たとえばCM曲だったり、ドラマ主題歌だったりすればもっと聞いてもらえるのに」・・・みたいなことを書きましたが、そういう風に使い道の決まっている曲には、なにかと制約もあるんじゃないかと思うのです。詩はこんな風で、曲調はこうで。この言葉を必ず入れて・・・そうなるともう自由な音楽ではなくなってしまいます。彼らがソロでやりたいこととは、どんどん離れて行ってしまいます。
 実は彼らが、事務所やレコード会社からものすごく大切にされているからこそ、自由に時間もたくさんかけて、やりたいようにやらせてもらえたのかもしれません。言葉は悪いですが、使い捨てるつもりなら、今流行の路線で、飽きられないうちにどんどん連続リリースするという手もあるだろうし、本当に記録だけが一番なら、ヒットが約束されているような、大物アーチストに曲を書いてもらったっていいはずです。本人たちがなんと言おうと、事務所がノーを言うことだってできるでしょう。
 でも、あえてそれをしないで、彼らの考え方ややりたいことをちゃんと聞いて、ある程度自由にやりたいようにやらせてもらってリリースにこぎつけているということは、先の先まで視野に入れて、今は思う存分勉強させてもらっているとも考えられるのではないかと。
 その上、そんなやり方をしても、それぞれのソロは(爆発的ヒットにはならないにせよ)本家に傷をつけることもなく、恥ずかしくないセールスをきちんと残すことができたのは、やっぱり彼ら自身に力があるからだと思います。
 一部のファンの間で「夏模様」はあんまり売れなかったなんて言っている声も聞きましたが、今日、コンスタントに30万枚を売ることはそんなに簡単なはずがありません。
 「夏模様」にせよ、今度の新曲「Harmony of December」にしても、それぞれのソロとは全く違う色をしています。にもかかわらず、わたしみたいにそれぞれのソロにどっぷりはまり、ありえないくらい夢中になっていた人間を、ちゃんと苦もなくKinKi Kidsに呼び戻してくれました。今は、この1年の成果がどんな風に曲になって出てくるのか、うきうきしながら待っているところです。
 というわけで、今年のある意味怒涛の連続ソロリリースの最後に、真打登場!「Iアルバム」とっても楽しみにしています。それぞれソロで極限までがんばった実力を、1+1=∞にして見せつけてもらえたらうれしいなと思います。