ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 目を凝らして

 21日。祝日の夜に、約束の時間ぎりぎり、7時半をちょっと過ぎて走りこんで来た生徒は、まるで「深夜のお仕事の帰りですか?」といういでたちでした。先週から気がついてましたが、びっくりするほど眉が細くなっちゃったし、アイシャドウ取れてないし。紫のタンクトップにぶっかぶっかのジャージ。腰パンにも程があります。パンツ見えちゃうよ(笑)
 ところが・・・練習はどうみてもきちんとしてあるし、特にギロックの「Moonlight Mood」は絶品でした。インベンションの指使いも、ぐちゃぐちゃだったのがちゃんと直ってます。NEWSの「チェリッシュ」はとっても繊細に、でも春らしくぽや〜んと上手に力が抜けて素敵に弾けてました。「すっごくいいね」と言ったら「にこっ」と照れて笑う顔は、幼くて無邪気で、小学校低学年の頃のまんまです。 
 先週の保護者会であんなにへこんだのは、この子のことをそこら中で「ボロクソ」に言われているのを聞いたせいもありました。(オトートと同じクラスなので、どうしても耳に入ってしまうのです。)実際に机のひどい落書きを見たら、どうみても彼女の筆跡。素行が急激に、本当におかしくなってしまったらしいです。保護者会にはとうとうお母様は現れず。さりげなくオトートに聞いたら、あちこちでトラブルを起こしているらしいです。オトート自身もわけもなく突き飛ばされたり、言いがかりを付けられたり、クラスメートとはそこここで小競り合いを起こしているらしいです。クラスメートの母として、ご近所として、このことをお母様と話した方がよいのかどうか、ずっとずっと考えてきました。もちろん、多分ご両親はご存知でしょうけれど。
 彼女のピアノを聴きながら、彼女の表情を見ながら、しばらくはこのまま何も言わずにレッスンを続けようと思いました。レッスン日を替えてもよかったのに、祝日にもかかわらずきちんと来た彼女を、6年間わたしの目で見てきた彼女を・・・お化粧の取れきれない瞳の奥を・・・ここでわたしが目をそらして逃げてしまったらサイアクだ。となんだか本能的にそう思います。これからどうして行けばいいのか、自信は全くないけれど、ピアノの先生としてとりあえずやれることをやるしかないな、と。