ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 ねこのキモチ

 今年初めて、沈丁花の花の香りがすることに気がつきました。かすかな香りです。近づき過ぎるとその強すぎる香りにくらくらするのですが、こんなふうにほのかに香っていることに遠くの方で気がつくのが一番好きです。
 この花が大好きになったのは、学生時代バイト先の喫茶店にて。青山通りの一等地にあったので、店を一歩出れば、花には全く縁がない場所でした。当時お店のバイトはほとんどが学生だったのですが、一人だけ50代のパートの女性がいました。その方はいつもレジの前で上品にやさしい微笑みを浮かべていらしたのですが、彼女はお店のお花の担当でもあって、季節を少しだけ先取りするのが本当に上手でした。なかでも彼女が毎年春の一歩手前の時期に抱えてくる沈丁花の香りはものすごく記憶に残っているのです。彼女のお手入れの行き届いたすべすべの肌、花を生ける手元が本当にきれいで、ネイルがきちんと塗られ、しわと言えば愛嬌たっぷりの笑い皺だけ・・・10代後半のわたしたちには、理想的に年を重ねた50代に見え、たくさんの10代たちに、あこがれを持って見つめられていたのでした。・・・あんな風に洗練されつつ、しかも優雅に年を重ねられたらいいな・・といつも思っていたものでした。
 香りで不意に彼女を思い出したわたしはというと、洗い物なんかでちょっと荒れ気味の自分の手を見ながら、ため息をついたりしています(笑)わたしってば、な〜にこんなに気を抜いているんでしょう?!あと10年弱で彼女の年になるわたし。主観的にも客観的にもかわいそうな50代にはなりたくないものです。
 さて、うちの猫は返事をするねこです。ルナもミントもそうです。今朝早朝の空気の中で、やらなくてはならないことを、声に出して誰に言うでもなくつぶやいていました。
 「お風呂掃除でしょ。」「にゃあ」「ゴミを出して〜」「にゃあ」「バロンの散歩は夜にして〜」「にゃあ」「Oちゃんのレッスンの教材は頼んだ〜」「にゃあ」・・・・???だんだん声のトーンが大きくなって、そういえばずっと返事をしていたことに気がつきました。
「な〜に?!うるさいな、まったく」・・・と言ったら、やっぱりそれでも負けじと大きな声で「にゃあ」 
 声のする方を見たら、ルナが上目遣いにずっとこっちをつぶらな目で見上げながら返事をしているのです。いやん、かわいい。人のくだらない誰にともなく言っているつぶやきに相槌を打ちながら、いったい何を考えていたんでしょう、彼女。こんな風にだんだん声が大きくなってきたところをみると、「わたし(ルナ)はここだよ!」ってアピールしたかったのかしらん?!
 このねこは、人に撫でられるはもちろん好きなのですが、少しの間撫で続けていると、だんだん居心地が悪そうになって来て、最後には逃げ出してしまいます。「あんまり幸せすぎると、なんだか不安になって居心地が悪いの」と言っているような気がするんだけど・・・と前に言ったらオットは「そんなことあるかい?!」とバカにして笑いました。
 それに対してミントは女王様のように、いつまでも撫でる手を止めさせません。手が止まると、「ちょっと〜止まってるよ〜」と言わんばかりに飛び切りかわいい声で「にゃあ」。催促も上手です。もしかして、ねこ共にあやつられているのは、こっちの方だったりして。
 同じ家に飼われていても全く性格が違う気まぐれお嬢さんが二頭。誇り高き彼女たちは、どっちもとてもかわいいです。