ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 仕方ないんだけど・・・

 10月にお受験する予定のうぜーよちゃんのことが、この夏のわたしの頭の数割を占領していました。なんせ、どう考えても時間が足りない中で、「一芸はどうしてもピアノを披露したいんです。1曲でいい、形にしてください。」と言うのです。「ピアノを習い始めてまだ日が浅く、わたしとの信頼関係も十分ではないこの時期に無理をさせるのは、どう考えてもわたしのやり方に反するし、自信がありません」と一度はお断りしたものの、結局押し切られてしまったのが7月初旬。幼児のための心理学の本からピアノの入門書から、お受験関係の情報から、海外の導入音楽教育のテキストまで、ずいぶんずいぶん勉強もしました。
 やるなら最大限の努力はしましょう・・ということで普通の子の3倍の時間を割いて、毎日のようにレッスンした日もありました。もちろんお母様にも協力していただき、毎日子どもの練習につきあっていただくようにお願いしました。
 そして8月最後の土曜日・・・やっと手の形が出来てきて、両手がサマになってきて「形になって来ましたよ」とうれしい報告を・・と思っていたのです。
 ところが・・・・お迎えにいらしたお母様が、「あれはもういいんです。」と突然おっしゃって大混乱。本人が「一芸披露はさかあがりにする」と言い出したんですって。「ピアノはわたしもついてなきゃならないし、逆上がりならもうできてますから。何よりわたしがくたびれちゃったんです。そう簡単には形にならないでしょ。先生ご苦労様でした。新学期からはまたのんびりペースでお願いしますね」と言うだけ言って、「急ぎますから」とすっきりした顔で、わたしに話をする隙も与えず去って行きました。
 頭をハンマーで殴られたような衝撃!とはこのこと。気持ちの整理がうまくできないわたしは、未だに納得がいかないのですが、どうにもなりません。
 これだけでも落ち込むには十分ですが、午後から来たうぜーよちゃんのおねえちゃんが更に火に油を注いだのです。大きなため息、「もういやだ」の連発。先週のレッスンで開いたままのレッスンノートと楽譜たち。「なんか、バカバカしくなってきた、やってらんねーよ」小さい声で言ったひとことをどうしても聞き逃すことができなくて、「本当にレッスンを受けたくて来てるの?やる気ある?」といつになくキツイ口調で畳み掛けてしまったのです。
 彼女は中学に入ってから入門してきた上、ここのところの妹のお受験騒動で、家族みんなの神経が妹に集中していることも知っているので、これまで細心の注意を払ってレッスンしてきたのです。案の定、夏休みが進むにつれ3倍以上やっている5歳の妹がどんどん上手になってゆき、イジケモードになってしまいました。自分は部活が忙しく、思い通りに練習できないことも拍車をかけたに違いないです。気がつけばあんなに熱心だった彼女は、ここ数週間全く練習しない子になっていました。
 もっと早くきちんと言うべきことを言っておけばよかったのに、腫れ物のように気を使いすぎたわたしにツケが回ってきたのかもしれません。
 それじゃなくても泣き虫の彼女は、結局泣いてしまってレッスンにならず、「火曜日の夜8時半からなら空いてるから、仕切りなおしのレッスンしよう」と言って帰しました。その火曜日が今日です。
 土曜日のダブルパンチで、すっかり自信喪失しています。放り投げるわけにもいかないので、日曜日の夜に便箋7枚に言い過ぎたおわびと、おねえちゃんに対する想いを正直に書いて渡しに行きました。もしかしたら、これで余計に引かれてしまうかもしれません。なに「うざい」ことしてるんだと思われるかも。でも、なにかせずにはいられなかったのです。妹のことで割り切れない思いを抱えていたので、おねえちゃんに八つ当たりしたってことはないんだろうか?とか、いろいろ考えてみたのですが、わかりません。
 ひとりでやっているので、こういうとき逃げ場がありません。わたしがこどもたちと解決しない限り、誰も間に立ってはくれません。どうにもこうにもやりきれないのですが、ここでおねえちゃんが「音楽嫌い」になってしまったら、ずっと悔やまなくてはなりません。
 それにしても、うぜーよちゃん、せっかくうまくなったのにな。どうしてあきらめちゃったんだろう。今日のレッスンだって、本当に楽しそうだったじゃない。しかも「さかあがり」に負けたとは(笑)ものすごい敗北感でいっぱいです。
 新しいすばらしい教材数冊。ソルフェージュの効果的な方法。お母様の協力の大切さ。無理だと思っていたことが実は無理ではないこと。(わたしが無理って決めちゃあいけないな)得たものも大きかったかもしれないですが、結局お受験に関しては最終決断はわたしにはないわけだし・・・レッスンの難しさを痛感したこの夏でした。