ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 レッスン室近況 その2 来た〜っ!

これはちょっと前の話ですが、下書きしたままほったらかしてあったので、一緒にアップしておきます。
うちの生徒の中で、現在22歳の子がふたりいます。
22歳。そうです。オトートとも同い年。
片や保育科の大学4年生。片や社会人2年目ではじめて担任を持った幼稚園の先生です。
二人の家はそんなに遠くないし、共通の友達もいるはずですが、中学の学区が違うし顔を合わせたのは初めてです。
大学生の方のNちゃんが、ものすごく一生懸命なのになかなか上達が形になって見えなくて、他の子と前後ですれ違ってよけいに自信を失っちゃうとイヤだなあと思って、なるべく前後に同世代の生徒を入れないようにしていたというのもあるのですが、たまたまこの時の振替レッスンでは、片方が早く来すぎて、片方のレッスンが長引いて、予期せぬニアミスが起きてしまいました。
正直根本的にはあんまりレベルは違わないと思うのですが、性格的にもNちゃんはネガティブでKちゃんは超がつくくらいポジティブ。
Nちゃんはもうつきあいが長いので、半分娘みたいに言いたいことをポンポン言えるけど、Kちゃんはまだ優等生の殻?(笑)をかぶっていて、本性は見せてない感じです。
そもそもKちゃんは幼稚園の先生をしているから、気が抜けないんだろうなぁと思うのですが、いつもどこか肩に力が入っていて、かわいそう。
息子と同い年だからというのもありますが、もうちょっと主張してもいいのよ!?という感じ。
幼稚園でも先輩の先生方がムリだとおっしゃるものをすべて引き受けて来ちゃうみたい。そしていつもてんぱってる。できません!って言うことがあったっていいのに、彼女はいつも肩に力を入ったまま、がんばります!と言ってしまう。
初めて担任を持った今年から、そんなにがんばりすぎてたら、いつかパンクしないかなぁ?わたしはちょっと心配です。
さて。
大学生のNちゃん。
幼稚園の先生だと知っている同い年のKちゃんの前で、試験曲のエチュードギロックはともかく、「虫の声」や「たなばたさま」を弾くのはとてもイヤだっただろうと思います。
弾いてはみたものの、全然うまくいかず。緊張からか、途中で右手と左手がずれちゃって、途中で修復不能な状態に…おーまいごっ!
「いつもならもっとうまく弾けたよ。テストの日じゃなくて、今失敗でよかったかも。でももう一度だけ弾いてみて。名誉挽回しよう!」と振ったら、案の定、師弟関係とは思えないくらい「やだね〜!」「もう帰る。いいから〜帰らせて!」と言いたい放題のNちゃんに、あきらかに面食らっていると思われるKちゃん(笑)
さらにNちゃんの大学のピアノの先生がイジワルなんだそうで「クソばばあが…」とか平気で言うのでわたしも「うちでは学校の先生のことをそう言って、あっちへ行けばあっちへ行ったで『プライベートレッスンのクソばばあ』とかわたしのことも言ってるんでしょう〜」なんて言ってみたり(笑)
「せんせ、ダメだ。もう弾ける気しない。うまい人が見てると思うとさらに弾けない。」
「あさって先生時間ある?レッスンの日じゃないけど、最近生徒減ったんならヒマだよね〜(笑)もう一度仕切り直しで来てもいい?」なんて言い…
言いたいことを言いつつもちらっと時計を見て「あっ!バイトに遅刻する!」と目を丸くしているKちゃんを尻目に「ありがとうございましたぁ〜」の「た」あたりにはもう姿が半分見えないくらい、風のように去って行きました(笑)
いつもだったら、帰る子優先で次の子は待たせてでも外まで送りに行くのが常なのに、玄関までわたしが行くことを彼女が拒んでいるような、そんな殺気立った感じがしました。
ああ、失敗したかも?
Nちゃん、わざとあんな言い方をして…(いくらなんでも日頃はあそこまでじゃありません、笑)恥ずかしかったんだろうなぁ。やっぱりKちゃんの前で弾かせるんじゃなかったかしらん?とか
まだうちに来はじめて一年未満のKちゃんに「ここはなんて教室なんだ!」と思われなかったかしら?といろいろなことが巡ったのですが・・・
なんとKちゃんが口を開いて最初に言った言葉は、「いいなあ」でした。
「え?何が?どこが?」と当惑して聞くわたしに「だってうらやましい。先生ととても仲良しで、言いたいことがポンポン言い合えて。」とKちゃん。
Kちゃんは長女で兄弟は妹と年の離れた弟だし、自分はもう社会人になっちゃったから、ますます甘える場所がなくなって、なんだかとっても孤独だ。言いたいことが言える相手もいない。いいなあ、ああいうあけっぴろげな性格の子。ああいう風に生まれたかった・・・と本音がちらり。
「じゃあ、これをきっかけに一歩踏み出してみれば?ああいうのもアリだってわかったわけだし、『わたしだってもっと見てほしかった、見てほしいのに!』と思う時もあるなら、ためしにキャラじゃないなんて思わずにそう言ってみればいいんじゃないの?」と言ったのです。
「はい〜↓」となんとなく語尾が下がる感じの返事。まだなんとなく納得してない顔。
う〜んと思いつつレッスン終了。
そして2週間が経ち…2歳児のお試し保育で3日後に「とんぼのめがね」を弾くことになったとKちゃん。幼稚園からもらったという楽譜があまりにもひどい上に、高いから適当に下げてと言われたとのこと。移調までしないといけないことになったのですが、まだ彼女に移調は難易度が高すぎて途方に暮れてました。
そこでレッスン時間内になんとか楽譜は正しく作り直してあげて、指使いを入れて、あとは練習するだけよ!という状態で帰したのですが…
レッスン後数時間して、メールが来ました。「先生助けて!お時間があったらレッスンの日じゃなくても見てもらっていいですか?」というメール。
思わずニコニコしちゃいました。
ああ、この間の話、ちゃんとねじれたり曲がったりせず、まっすぐに伝わったなぁと思ったのです。よかったです。
そして30分の時間外レッスンを終えて帰る顔は笑顔でした。
こうやってちょっとずつお互い寄って行けたらいいなぁ。なんせ彼女とのお付き合いはまだ始まったばかりです。
わたしもかわいげがないタイプの、どうして助けてって言えないの?というタイプの子だったので、KちゃんにとってNちゃんとの騒動がいいきっかけになってよかったです。
さて。
Nちゃんはどうした?とお思いの皆さん。
それが〜本人まったく気にしてなくて(笑)例の数日後のレッスン外の日にどこ吹く風でやってきて、その日はまあまあの出来で、なんとか合格した模様です。
この子も強くなりました。
4年生ももう夏休み。彼女にとっての最大の目標は卒業なので、ひとつひとつ単位を押さえて行けるように応援してあげたいです。