ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 「The Rainbow Star」

 いつも、CDを手に入れてなるべく早いうちに感想を書こうと思うのですが、なかなか書けません。なので今回はちょっとがんばって・・・と思ったら、例によって恐ろしく長文になってしまいました。簡潔という言葉がわたしの辞書から欠落しているのではないかと思われる今日、この頃。覚悟を持って読んで下さるという奇特な方は、続きを読むからどうぞお入りください(笑)
 このCDは、わたしへのエールだ〜!と勝手に解釈しつつ、聞き倒しています。とても好きです。最近KinKi Kids名儀でも、堂本剛名儀でも、こんなにあからさまに、元気がもらえるシングルはなかった気がします。とっても新鮮です。
 1曲目の「The Rainbow Star」は、最初のブラスの乾いた音を聞いた瞬間から、元気がむくむくと沸いてきて、気持ちがどんどん高揚していくのがわかります。いい曲だなあと思います。
 実は前にも言ったとおり、この曲を「心底好きだ〜!」と実感したのは、ライブの中でもおしまいの方でした。始めて聴いてから何回かは、正直に言うとピンと来なかったの。多分意外性たっぷりの転調や変拍子に、不思議に刻まれるリズムに、なかなか耳や頭が慣れてくれず、素直に歌が心まで届いて来なかったのだと思います。でも慣れてくると、これがとても気持ちいいです。Cowardの中の「CCK」なんかもそうでしたが、「タッタカタッタカ」と疾走感たっぷりに規則的にリズムが刻まれるところがあって、その部分を聞くと、気持ちが自然に前に押し出されるような感じがします。音楽って楽しい!音楽って素晴らしい!となんだか飛び出して声高に言いたくなってきます。
 それにしてもこの曲、CDを手にして歌詞カードと向かい合ってみると、全然イメージが変わるではありませんか。音の楽しさだけで盛り上がっていたわたしの頭の中に、あらためて歌詞が響いてきて、別の曲に出会ったような新鮮さを味わっているところです。ライブでは、お祭り気分で、ただただ跳ねながら「うれしいな!」「うれしいな!」と聞いていたこの曲ですが、歌詞にはものすごく前向きな力と、簡単には変え難い現実にたったひとりでまっすぐに立ち向かっていく決意やら強さやらが骨太に入っています。
 先に生で何度も聞いている曲に、CDであらためて出会い直すなんて、こんな出会い方は滅多にないので、とっても面白いです。今現在、もしかしたら「CD音源の方が好きかも」なんて思っているわたしもいて、そんな自分を面白がっています。やっぱりバランスが絶妙なんですもん。ひとつひとつの音が、とっても賢く緻密に計算され尽くして創られています。声と声のバランス、楽器と歌のバランス、トータルに聴いた時の混ざり具合。ライブ感とはある意味間逆な「完成度の高い作品」として味わっているところです。なんて言いつつ、また追加ライブが始まったらやっぱりライブが一番なんて言っているような気もしますけれど(笑)
 そういえば、HEY×3で披露されたこの曲の完成度のすごかったこと。何度リピートしたかわかりません。こちらはCDより、ライブより少しアップテンポでより疾走感にあふれていました。
 あんな風にライブですでに何度も何度も歌った歌を、ライブそのままのメンバーで生演奏で生歌で歌ったわけです。多分これってものすごく画期的?!特に今の音楽界の、新曲を短期間に売りまくって使い捨てるようなもったいない売り方では、何度も歌いこんで大切にはぐくまれたロングヒット曲は物理的に出にくいです。結果、短期決戦した後は、どんないい曲であっても「さ、次行こう」とせっかくの良曲が置いてきぼりにされて、残らないという気がします。なんてもったいない話でしょう。
 それを考えると、こんなに贅沢に何度も積み重ねられたチーム、作りたくってもそう簡単にはできません。当然チームワークばっちりだし、あれだけやって来たのですから全く危なげがありません。歌はもちろんのこと、ブラスメンバーにしても、コーラスメンバーにしても、ギターもドラムスも、曲に対して愛情と余裕を持って楽しんで演奏している感じがありありで、聞いていて本当に楽しかったです。適度に熟成された音楽という感じ。違いがわかる耳を持った人にはきっと伝わったと思うのですが。
 さて、カップリングの「いきてゆくことが」は、実は今のところ一番好きなナンバーです。相反するふたつの感情の間を揺れるようなテーマが素敵です。この3曲の中では、どれにも相反するふたつの気持ちが揺れていて、マイナスにあえて目を背けずに、それでも前を向いて行こう!という決意が底の方に一貫して流れている気がします。3曲を通して聴いて初めて完璧という気がします。
 音としては、機械的な不思議な音とアナログな手作りっぽい音が見事に同居しています。この曲のテーマともぴったりな気がします。
 最初のコードが不安をかきたてられるような感じです。声はあえて、淡々と。気持ちを押し殺して。それに重なるように入ってくるミュートの効いたペットの音がまた、更に不安をかきたてます。現代社会に対する無力感とか、絶望感とかやるせなさとか、そういうものが染み出すように流れていて・・・
 その流れを断ち切るようなドラムスの音とともに、急に音色の数もふえて、途中から突然甘々のフレーズが出てきます。声の音色も全然違います。やさしくて温かみがあって、そして色気たっぷりのボーカル。自分の身近なほんの小さい場所の中に確かに存在する温かい愛情あふれる場所。ストリングスに混じって小さくやさしく響いているフルートの音が、とても生きていて好きです。確かに愛情はそこにあるのに、なんだか心もとなくて、愛情を確かめるように手を握りなおしてしまう。身体に触れる。そんな日常。なんだか絵が浮かびます。江国女史あたりの著作にこんな光景の短編がないかしらん?
 この曲は既存の「御伽噺」に似ているようで、ちょっと違います。もう少し現実的で「ここは御伽噺の世界なんかじゃないよ」という感じがするのです。 一見ちっぽけだけれど、となりにある小さな愛情だけを頼りに、また不安でいっぱいの大海原に漕ぎ出していくんだな?と想像させてくれるようなラストが好きです。
 歌詞もなのですが、何より歌い方、声の音色がとってもエロティックで、聞いているだけでドキドキばくばくしてきます(笑)こんな甘い声で歌われたら、撃沈です。3曲目の突き抜けるような、カラッとした声の音色と正反対ですが、どちらの声にもとても心惹かれています。
 そしてものすごくカッコいいなあと思っているのが、ボーナストラックの「あなたが何処で今宵誰の腕の強さを想うか」最初のCHAKAさんのフェイクのカッコいいこと。歌詞の内容から察するに、決して幸せな現在(いま)を歌っているわけではなさそうですが、この力強いメロディーや歌い方が、単なる空元気(からげんき)ではないぞ!という気がして好きです。力強くて前向き。途中でボリュームが突然絞られてハッとさせられます。「Yeah Yeah Happy X'mas」の部分の、吹っ切れた場違いなくらいの明るさが好きです。これを夏に出そうと思う、その感性もなんとも面白いです。堂本剛の自作曲を聞いて、ここまでまっすぐに強さを感じた曲はこれが始めてだと思います。
 さあ、これらの曲たちは追加ライブでは歌われるのでしょうか?どんな風に料理されてまた出てくるのか、とってもとっても楽しみです。