ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 大切なこと

 画像はFちゃんが、持ってきてくれた名刺と折り紙です。彼女は小学校の2年生ですが、今は学校でみんなでパソコンを使って名刺を作るという授業があるそうです。そして、その後で、1年生と2年生の名刺交換会が行われるそうです。すごいです。
 これに「ピアノがだいすきです。」と書いてあり、これを見たお母様が、「先生にも1枚あげたら、きっとすごく喜んでくれるよ」と言ってくださり、レッスンに持ってきてくれたのです。なんてうれしいんでしょう。
 彼女はものすごく才能に恵まれているのですが、ちょっとむずかしい子でもあって、どうレッスンを持っていけばいいのか、本当に考え込んでしまったこともあります。たとえば、こんなことがあったりもしたし、前には「レッスンがつまらない」と顔の前でおならをされて、大人気ないことに、かんかんに怒ったこともありましたっけ(笑)
 だから自分の顔とも言える手作りの名刺のひとことメッセージに「ピアノがだいすき」と書いてくれたことが心からうれしかったのです。
 実はここ数ヶ月、やっとお互いに模索してきた方法がうまくまわりはじめて、明らかに関係がよくなってきたなあと思っていたところでした。今は、練習も楽しそうだし、一時はわたしも彼女のレッスンの前には胃が痛かったこともありましたが、今は彼女に会うのが心底楽しみです。
 さて、名刺と一緒に写っている折り紙は、彼女と一緒に作りました。2枚の折り紙を持ってきて、レッスンの後で、わたしに手裏剣の作り方を教えてくれたのです。先週のレッスンで、「教えてほしい?!」と言うので、「うんうん」と言ったのを覚えていてくれたのでした。後から聞いた話では、「手裏剣」は作り方がとてもむずかしいので、わたしへの教え方をお母様と大特訓をしてくれていたらしいです。お母様には申し訳なかったですが、感心したのは、彼女の説明がとてもわかりやすかったから。
 最初に紙を半分づつに切るというので、はさみを持って来ようとしたら、「はさみがなくても切れる方法もママに聞いて来た」と言います。そして、「あのね、紙を折ったところを筋が白くなるまで裏、表って何回も折って。折り方が足りないと、破けるけど、白くなるまで折ってあれば大丈夫」と言いながら、実践してくれます。きれいに紙が切れました。
 更に折り方がむずかしいところを、お母様がすごく工夫して教えてくださったらしく、適切な言葉がたくさん出てくるのです。「半分こに折ったのを、ふたつ並べて、下の方はこんにちは、上の方はさようならに折ってみて」とか、「組み合わせるときの折り目はね、互い違い、互い違いだよ」とか。
 お母様がいかに彼女とちゃんと向き合い、長い時間をかけてくださったかが伺われる素晴らしい折り紙教室でした。
 考えてみたら、彼女の楽譜には、最近おかあさまがうすく指番号を振ってくださったり、丸がついていたりします。フルタイムで働いている方なのに、子供のレッスンにもちゃんと声をかけてくださっているんだなあと感心します。
 わたしも働いている母なので、どちらかといえば、「おかあさまの全面協力がないと、ピアノはうまくなりませんよ」とは言いたくないと思ってきました。その家その家に、事情はあるのですから。わたしが小さい頃、となりに母が座って泣きながら練習した思い出があって、それがトラウマになっていたもかもしれませんが(笑)
 そんなわたしですが、最近おかあさまの「魔法」?とも思えるような「ステキな力」というものがわかってきました。
 それはおかあさまに時間や情熱があるかどうか?・・・とかそういうことではなくて、おかあさまの関心がピアノや子供本人に向いているかどうかということです。極端に言えば、お母様が「あら、いつの間にこんなにじょうずになったの?」とか、「今日はどうだった?」と、ひとこと声を掛けてくださるかどうかで、どうも、生徒たちのレッスンがうまくいくか、いかないかに微妙ですが影響が出ていることがわかってきた気がします。
 うぜーよちゃんがお受験の準備を始めた途端、ピアノにも関心が高まったのも同様です。わたしは、お受験がいいかどうかはわかりませんし、わが子を私立に行かそうとは、ゆめゆめ思わないタイプです。でも、彼女のおうちの場合、危惧したようなマイナス面よりも、明らかにお受験を通して、母と娘の絆が深まったというようなプラス面が勝っているように見えました。
 彼女の家は商店をやっていて、本当に忙しいので、それまでは、保育園から帰ると親も子もぐったりで会話もなくぼ〜っとテレビを見ていたそうですが、お受験に追い込まれて、否応無しにピアノやお勉強を通して、親子でたくさん会話をしたのだそうなのです。「偶然の産物ですけど、子供たちふたりとの時間が、ものすごく楽しいことに気がついたんです」とうぜーよちゃんのママ。いつかうぜーよちゃんに「アンタは客なんだから」と言ったお母様とは別人のよう。最近はとてもレッスンを大切に考えてくださいます。
 Fちゃんとうぜーよちゃんに共通するのは、わたしとの会話の中にも、「ママがこう言ったの、ああ言ったの。」とたくさんママが出てくることです。そしてレッスンの曲が好きだの、これはあまり好きじゃないだの、トトロのこの曲がママも好きだの、自然にピアノについても、家族の会話に登場しているらしいです。
 そんなことをいろいろ聞いて、わたしの小さい子に対するレッスンの意識もちょっとづつ変わり始めています。入門の相談に来られたお母様に、「レッスンをお母様が、びっちり見てあげる必要はないですが、興味関心を持って、お子さんのピアノのことをいっぱい話題にしてあげてください。それが上達の秘訣だと思います。」と言うようになりました。もちろんお母様じゃなくても、お父様でも、おばあちゃんでも誰でもOK。わたしだって、レッスンに来た一人ひとりの日常にもっと関心を持って接してあげた方がよさそうです。多分、子供って自分に関心が向いていると感じるだけで、想像以上に心の安定が図れるような気がします。安心して実力を十分に発揮できるのかもしれません。
 Fちゃんはレッスンで「はじめてのかなしみ」という曲を情感たっぷりに弾きあげてくれました。「すごくいいね」と思ったとおりを言ったら、「パパとママも「ふうか」が弾いたらすごく悲しい気持ちになったって。すごいねってそう言ってた。」というFちゃん。「いい観客が名ピアニストを育てる」の第一歩かもしれません(笑)
 画像の関係上、これから書く日記は下へ下へと追加します。