ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 成長したね〜!

 久しぶりにTくんの話です。彼と言えば、ずっと前から「ふぇるまーた」をご存知の方なら覚えていらっしゃるかしらん?昨年の10月にこんなことがあった3年の男の子です。この子に帰り際、呼び止められて、「先生、風邪で休んだ先週の振替は、後の時間が空いてるところにぼくを入れてよ」と言うのです。もちろんいいけど、なんでだろう?と思っていると、こんなことを言います。「後の時間がつまっていると、レッスンの途中で次の子が早く来ちゃったりするでしょ。そうすると、先生があわててボクの時間を切り上げようとするからイヤなんだよ」と。「そんなことないよ。次の子が来ても時間いっぱいは、ちゃんとレッスンするじゃない」と反論すると、「でもね、ちょっとでも長めの方がいいんだもん。後の子がいなければ、レッスンの終わりの歌もいっぱい歌えるし・・・お得じゃん。ボクは得なのが好きなんだよ」ですって。なんて素直な訴えであることよ(笑)この1年で本当に成長しました、彼。うれしいことを言ってくれるではありませんか。とても1年前には「早くレッスンを切り上げろ」と言っていた彼と同じ子とは思えません。
 こうやって時間をかけて、生徒たちとちょっとづつ仲良くなってゆく過程が案外好きなんだと思います。どの子とも最初から相性ばっちりとはいかないけれど、数年たってどうしてもこの子は苦手!と匙をなげるはめになった子は今のところひとりもいません。彼はかなり手ごわい方でしたが、1年たった今では、バイエルも上巻は終了間際だし、教科書とリコーダーをわざわざレッスンに持ってきて「先生、ボクのリコーダー、聞いてみたいだろうと思って持ってきてやったぞ」なんてかわいい生意気を言ったりします。
 最近思っているのは、流行歌やおもしろい歌が好きなのであろうと思い込んでいたわたしですが、案外子供たちはオーソドックスな昔からある歌や、教科書の中の曲を歌う機会をほしがっていると言うことです。
 前から何度か触れているとおり、わたしはレッスンの最後の5分に必ずなんらかの歌をピアノで伴奏をしながら歌うことにしています。この時の歌は、なんでもいいことになっていて、アコーディオンの横森氏のように、適当にアドリブで伴奏しながら、「何でも弾くよ」と言うのですが、人気が高いのは案外学校で習った歌が多いです。アニメの歌や流行歌より、学校で歌った歌をリクエストに応じて伴奏してあげた方が、とても喜んで歌います。季節にも敏感で今だったら、「あわてんぼうのサンタクロース」学年末には「思い出のアルバム」春先には「おぼろ月夜」。「パフ」や「ちびっ子カウボーイ」「富士山」や「巣立ちの歌」「たんぽぽ」や「いるかはざんぶらこ」「夕焼け小焼け」や「大きな古時計」なんかも大好きな曲らしく、リクエストが多いです。
 そのほかには「ピアノランド」という教材の中の歌たち。ピアノで弾くことも歌うこともできる曲集なのですが、この曲たちはうちの生徒たち限定で、大流行中です。生徒たちはみんなどの曲も歌えるようになっているので、幼稚園児のレッスン途中に次の高校生が突然入ってきても、歌う時間には一緒に盛り上がることができます。たまたま居合わせた違う学校の子同士でも、一緒に歌うことで瞬時に親近感が沸くらしく、何度か目には帰り際に手を振り合ったりします。この曲集から1曲は歌わないと、調子が出ないという子もいます。
 この曲集はとりわけ面白い歌が多くて「おばけやしき」「だいぶくじぞう」「まーちゃんのバナナ」「宝のダンジョン」「逃げ出せロック!」なんていう面白いタイトルがついていて、子供たちはテンポを揺らしたり、声のトーンを変えたりしながら、ものすごく表情たっぷりに歌います。
 たまたま防音室で、外に音が漏れないというのもいいのかもしれませんが、大声で歌うということは案外ストレス解消にもなるようで、どんなにピアノそのものがスランプで、レッスン本編ががっかりするような展開になっても、歌のおかげで最後には笑って「また来週」と言えるというのが、とってもありがたいことだと思います。