ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

生徒たちの音楽会

うちの生徒の7割が通っている小学校の音楽発表会があって、出かけていきました。誰が見に行ってもよい音楽会なのですが、昨年オトートが卒業してしまってわが子がいない学校に行くというのがちょっと気恥ずかしい感じがしたのですが、「せんせい、ぜったい見に来てよ!」と言ってくれる子もいて、生徒のいるクラスの演奏はすべて聴きました。
わたしの教室ではマンツーマンで教えているので、クラスメートの中に入って音楽している時、どんな顔をしているのかな?楽しんで音楽できてるかな?と期待半分不安半分だったのですが、違う顔の生徒を見るのがとても新鮮でした。実際には歌を歌っていても、楽器を演奏していてもみんなニコニコ「楽しい」を体中で表現していて、音楽の原点はこういうのだったと思わせられるような会でした。最近の音楽会ではただ歌を歌うだけではなくて、振り付けがあったり、せりふがはさまってオペレッタ風だったりとっても凝っています。そんななか、うちの生徒に限らず子どもたちがみんな舞台の上でも堂々としていてびっくりするようなクラスもありました。(ダメだしをするとしたら、指揮者をされている担任の先生で、先生方の方が断然硬くてもっと楽しそうにしたらいいのにと思いました。
今日演奏を聴くにあたりTちゃんがどんな風だか、実はとても気になっていました。彼女は小学3年生です。1年生の5月に入ってきて、半年ぐらいはとても順調だったのですが、その後左手を骨折して数ヶ月も腕をつったまま入院していたのです。その期間全く動かせなかった腕は退院してからもなかなか元どおりにならなくて、左手が思い通りに動いてくれず、ずいぶん二人で苦労してきました。本人はとってものんびりタイプで、みんながどんどん両手で上手に弾けるようになっていっても気にしていないように見えましたが、内心とってもこたえているに違いないとずっと気にかかっていたのです。そんなわけで2年生の一年間は、ずっと左手の本をやったり両手にトライしてはまた戻ったりと行ったり来たりを繰り返していました。ワークばかりがどんどん進んで行き、歌を歌ったりゲームをしたり、楽しいことを一生懸命入れながらレッスンをしても、メインのピアノが「弾けるようにならない」というのはコタエルだろうなあなんていつも思っていました。3年生になってからやっと少しづつ左手が思い通りに動いてくれるようになったので、みんなより2年遅れて今一生懸命両手の導入教材に挑戦していますが、この子が楽しく音楽できているのかどうかが折に触れて気になっていました。
ところが、Tちゃんのクラスが始まってみると、Tちゃんは1列目のど真ん中で先頭きって楽しそうに歌っていました。「お菓子の好きな魔法使い」は曲の途中で魔法の呪文をかける振り付けがあったり、せりふが出て来たりの楽しい曲なのですが、大きな体育館の後ろまで彼女の大きな声のせりふが聞こえたし、その後の「パフ」では堂々とリコーダーを吹いていました。お母様が横に来られて、「この間の参観の時の発表で『好きな教科は音楽です。』と答えていました。」と教えてくださり、ここのところの胸のつかえがおりました。おとなしくてあまり普段から自分の気持ちを訴えるタイプの子ではないし、わたしも不器用で生徒の心に上手に立ち入って行けるほうではないので、時として本当に不安になってしまうことがあるのです。「今日のを見て手の怪我の時にやめさせなくてよかったと思いました。日ごろ親の目からみてもおとなしいのに、今日はいつになく自信たっぷりでしたよね。」とお母様がおっしゃってくださったので、心底ホッとしました。