ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

2018 6月の奈良旅の記録 その2 十津川の宿

一日目の宿は、いわゆる十津川温泉という場所からは少し行ったところ、幹線道路の川側に立っていて。

お部屋に案内されると、目の前を大きな川が流れてました。

周囲に別の建物もないのでとても静かだし、車道の反対側は山。

まったく電波が来ていないので、ホテルのWi-Fiのパスワードを聞いて、まずは子どもたちに着いたよ~の連絡を入れました。

目の前の川の川幅はかなり広いですが、実際に水が流れている部分はそこまで多くはなく、穏やかな景色だなぁ・・・と(この日は)思ってました。

夏になるとこの宿の前の河原で川遊びもできるそうです。

小さい子がいるご家族で来てもよさそうです。

星空がとても綺麗なのだそうですが、残念ながらこの日は宿に着いた辺りから天気が悪くなる兆しがあって、星を見ることはかないませんでした。

でも・・・

なんとも美しい目の前の景色だけで、すでに十分という感じ。

翌日、Twitterにあげた画像がこれ。

この2枚は両方とも、泊まった部屋の窓ごしに撮りました。

いつまででも眺めていたくなる光景でした。

お部屋には、オットくらいかな?という感じの、落ち着いた男性の方が案内してくださいました。

網戸にすると、とても気持ちがいいですが、少しでも日が暮れてきたら、すぐに締めてくださいね。じゃないと、虫がいっぱい飛んできてとんでもないことになります!とおっしゃって。

もちろん蚊はイヤですが、そこまで神経質な方ではないので、なぜそんなに念を押されるのかな?と思っていたら・・・夕暮れ時、暗くなる少し前から、すでにして集まる、ものすご~い数の虫!!虫の寄り合い?状態なのでありました(笑)

なるほど~

もちろんご忠告に従って窓を閉めていたので、まったく無問題だったんですけどね。

真夏に灯下採集とかしたら、いっぱい虫が捕れそう!と虫好きのオット。確かに(笑)

他にも注意事項や案内を、とてもていねいに、よどみなく、わかりやすく話してくださったのですが、多分アジアのどこかのお国の方かな?

若干なまりのある日本語ですが、文法は完璧。そしてとても温かい雰囲気。

さらに、言葉の選び方がとてもていねいで美しくて、とても感じがよくて気持ちがいい方だね~とオットと言い合いつつ。

お茶をすすり、しばし休憩。のんびりと時間が過ぎてゆきます。

ここのお湯は、十津川温泉の源泉地「下湯温泉」に位置していて。

源泉から300m。たまたま一番源泉に近い宿なのだとか。

 お湯は源泉だけではかなりの高温でとても入れないので 「湧き水」を混ぜ込んでいるそうで。

お肌にも優しく湯冷めもしないのですよ?と言われていたのですが、実際とても気持ちのいいお湯でした。

わたしたちが泊まった部屋には、お部屋にも立派な木枠のお風呂がついていて、24時間入り放題になっていたのですが、夜はせっかくだし、あえて広めの露天風呂へ。

こちらもまた、とても気持ちよかったです。

そして夕飯。スマホを出して翌日の行程について何やら検索していたオットが映り込んじゃった(笑)

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前菜はこんな感じ。一見シンプルですが、画像ではわからないけど、とても味つけが凝っていて。主婦は外でそういう味に出会うととてもうれしいのですよね。

正直何より量がこのくらいで十分で、いつも旅館のご飯が多くて辛いわたしには、この宿の食事の量より質なところがとても気に入りました。

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こちらはメインの梅地鶏のすき焼き。お肉や和歌山の地野菜がとてもおいしかったです。

「すきやき」と言えば、関東と関西では違うのかな?なんて話になり。

オットとあーでもないこーでもない話していて、先に肉を焼いちゃっていいのかな?それとも先にお出汁を入れるの?なんて話していたら、オットがちょっと貸してみな~と皿を取り上げたタイミングで、先ほどお部屋でお世話してくださった方がいらして・・・

割り下の使い方を教えてくださいました。

この時、オットが皿を持っていたことで「この家では給仕するのは夫の方かな?」と思われたのか、その後おひつとかしゃもじとかを持って来られるたびに、オットの側に黙ってさりげなく置いてくださって。 

その実、普通に手を伸ばしてわたしがやったわけですが・・・以前に、旅館などで、当然のように妻の側に給仕セットを置くのはどうか?みたいな論争を見たことがあって。

どっちがやるにせよ、男の役割はこれ、女の役割は当然こっちだろう?と決めつけられるのもなんだか窮屈だし。

この家のやり方はどっちだろう?とまずは考えて置いてくださった心遣いは、とても素敵だと思いました。

さりげないおもてなしの心の美しさよ。

オリンピックの招致の時のプレゼンでも大きなウリにしていた「お・も・て・な・し」は「日本人の専売特許?」みたいに思われがちだけど、多分そんなことでもなくて。

日本に生まれさえすれば、何の努力もなく「気配り、気働き」や「おもてなしの心」が培われるものでもなければ、心遣いは日本人だけが持っている技でも特性でもなく。

「心」というものはきっと、人種やお国柄に宿るのではなくて、その人の経験とか心情とか、心根に宿るものなのだろうと思いました。

この方はその後も、さまざまな場面で、細やかにさりげなく気遣ってくださって、滞在している間、とても気持ちよく過ごすことができたので、今思い出してみても、ほっこりします。

さらに、こんなこともありました。

この「源泉100%」のアイディアは、離れて暮らしてらっしゃるこの方の奥さまがここを訪れたとき「源泉100%のお風呂に入ってみたいわぁ」とさりげなく言われた、その一言で思いついたのですって。

一旦栓を抜いて、源泉の方だけお湯を出して浴槽いっぱいに張ってください。

すぐに入ったらとんでもなく熱いので、そのまんま翌朝までほっておいてください。

翌朝になったら、きっとかなりお湯が冷めているはずなので、ぬるければ源泉を足して、適温まで温めて入ってください。そうすれば源泉100%が体験できますよ!という話でした。なるほど~

内風呂だからできる技ですけど。そして湯量が半端ない、山の中の温泉だからできることなんだなぁと思いつつ。

一緒に貼った画像の、陶器の洗面ボウルもとても素敵で、歯を磨いたりお化粧したりするたびに、しあわせな気持ちになりました。

飲み水やお料理に使われている水はすべて、湧き水から引いているのだそうで。とてもおいしかったです。

翌日は、雨音で目が覚めました。

早朝からかなりの本降りで、雨音が規則正しく屋根を打っているのを、静かに聞くのもまた風情があって。

そんな中、教わったやり方で、お部屋についていたお風呂に入り至福な時間を・・・

なるほど、源泉だけにしてみると、さらにお湯がやわらかくて気持ちがいいです。

さらにお風呂があるベランダから見える景色が、まるで切り取られた絵。

東山魁夷っぽい景色の美しさときたら・・・白い馬を空目しました(笑)

雨とあいまって、まるで異世界へ迷い込んだかのよう。

ああ、洗濯機も回さなくていいし、ごはんの心配もしなくていいんだ!

そして朝っぱらからのんびりとお湯につかっているなんて・・・本当にしあわせだなぁとしみじみしちゃいました。

朝食後、帰る頃になって、宿の方から何年か前の大雨の時のお話を伺いました。

この日もなかなかの大雨でしたが、その時はとにかく豪雨が長かったのだそうで。

多分平安神宮のライブが中止になった年の、あの台風の時の話じゃないかな?

3日間くらい、ずっと前線が停滞し、まったく雨が止む気配がなく。

やっと降りやんだと思ったら、前の道が冠水。

かなり高いところまで水が来ていて、数日外へは出れなかったそうです。

そして水が引いてから行ってみると、川側の方にあった露天風呂が、流されてきれいになくなっていたそうです。

その時はさすがにどうなることかと思ったそうで。

滅多にはないけど、そういうこともある・・・

と淡々と話してらっしゃるその口調から、山に暮らす人の覚悟が見えたような気がしました。

その日も、話している間にもどんどん雨足が激しくなってゆき、ちょっと恐怖を感じるくらい、地面を強く叩きつけていて。

みるみるうちに、部屋の前の川幅も広がってゆくのがわかり、水が轟々と流れていくさまは、少し怖かったです。

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この画像で少しはわかるかしら?上のTwitterの画像の時とは若干流れや、土のえぐれ方が違うのです。

簡単に前に川があって素敵!なんて言葉で済ませてはいけないね~なんて。オットとしみじみと言い合ったのですが、まさかその旅からほどなく、西日本で豪雨災害が起きるとは、まったく思っておらず。

タイミングがあと数週間ずれていたら・・・旅に出る気になっていただろうか?と思ったりもしました。

かと言って、その時みたいなことは、何十年に一度?100年に一度あるかないかだそうだから、住んでいる方々は、年柄年中、きっと危ないに違いない!とおびえていては暮らしていけないし。

川は一方で恵をくれるものでもあり、観光産業の目玉でもあり。

天候がよほどの時は別として、危険もありえないわけじゃないから、旅に行くべきではない?というのも違うと思うし。

いろんなことを考えさせられた旅となりました。

十津川は、本当にいいところだったので、実はまた行きたい!!と、もう思っています。

本当に美しくて静かで、とても魅力的なところでした。