ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 旅立ちの時

 昨日はオトートの卒業式でした。暖かくてとてもおだやかな春の日。今日はうってかわってとても寒いのでとっても幸運な日に卒業の時を迎えました。
6時半には家を出ないといけない往復3時間という遠い学校に行っていましたが、最後まで淡々と通い皆勤賞をいただきました。
学校に毎日通うということだけが価値観だとは思っていないし、通えるからすごいとも、通わないから、通えないからダメだともちっとも思っていませんが、将来壁に当たったときに、この3年間通い通せたということがひとつの自信として心に残っていてくれればいいなあと思います。
 彼は筋肉の疾患を持っているので、小さい頃から「なるべく筋肉を動かさなきゃダメ、疲れきってはダメだけれど、毎日たくさん歩くことはアナタの筋肉の寿命を長くすることでもあるんだから、甘えたことを言わないで足を使いなさい。」と結構キツく言ってきました。
 電車の乗り換えは2回あって、大きい方の乗換駅では、ものすごく広い駅の構内で階段の上り下りもたくさんあるし、歩く距離も半端ないので、ときどき大荷物の時もあるし、言わないけど実はへばってないかな?とひそかに心配したこともあって、こっそりオットが学校まで尾行したこともありました(笑)
その時はオットが舌を巻くくらいするする〜っと慣れた感じで雑踏をくぐりぬけて、うまいこと女性車両の脇の入り口から隣の車両に移って電車の席を確保したり、要領よくやっていて安心したこともありました(笑)
 相変わらず勉強は得意とはいかなかったですが、わからないからといってあきらめず、英検や漢検も落ちても落ちても何度でもトライして、英検2級あと2点で合格というところまで行ったのですが、残念ながら合格せず。それでもめげずにまだトライすると言ってるのはある意味すごいなあと思います。
 体育が十分にできずに悔しい思いをしたり、素早く動けないので事情をよく知らない生徒に「できないできないってそれで生きてる価値あるの?」などと言われて猛烈に怒って帰ってきたこともありましたが、ある時は先生にとり入って守ってもらったり、体育の時間に体調が悪くもないのに保健室に逃げてからかってやろうと待ち構えているワルとの直接対決をうまくかわしたり、委員をいろいろと引き受けて人脈を作って対抗したり、いろいろと知恵を絞っていて、意外と策士だなあと気がついたり(笑)一番の収穫は一生つきあえる親友ふたりと出会えたことだそうで、イギリス研修ではずいぶん深い話もしたらしいです。
 同じ姉弟でも、学校という器に合わせられず本当に命がけという感じでなんとか卒業したアネと、するりするりとかわしながらもうまいこと学校という場所に合わせながら卒業したオトートでは、全然違う学校生活だったと思いますが、どちらの3年間も客観的にみるとかけがえのない尊いものだと思っていますし(本人たちは今のところ、実はさほどとは思っていませんが、笑)終わってみればどちらの子にとっても高校という場が大切な人生勉強の場になったことは間違いないことだと思います。
 世の中にはいろいろなひとがいて、うまくみんなの中で泳ぐことは苦手でも、新しいことをたくさん切り開いていく子もいるし、与えられた環境の中で一生懸命まわりに合わせてがんばることを苦にしない子もいて。
 不合理なことを長になって変えて行こうと思う人もいれば、仕事や学校は我慢の場所と割り切ってその他の世界で楽しもうとする人もいたり。
「行かない」「つきあわない」ことで自分を保っている人も、がまん強く今いる場所で支える人もいて、誰に馬鹿にされようとも自分の世界を貫き通していつかは常識を変えてゆくすごい人もいて。
わたしたちが高校生の頃は、もうちょっと物事はすっきりとわかりやすくできていたような気がしますが、あの頃と比べて今の子どもたちはもっともっとよけいな心配ごとが増えたような気がします。
 そんな日々の中で節目を迎えたオトート。
大学が始まったら始業時間は多少後ろにずれますが、学校はやっぱり遠いです。
忘れもしない小学校1年生の時に難病の宣告を受けた時には、こんな風に普通に高校卒業の日を迎えることができるなんて夢にも思ってませんでした。あの時の絶望があって、今のしあわせの感度が100倍くらいにすらなった気がしています。
彼にとってはこれからが試練の時で、筋肉をいかに長く大切に維持するか、そうこうしている間に根本的な筋疾患の治療法が確立して進行の心配のない日がやってくることを祈るばかりですが、今までも彼は彼のやり方でがんばってやってきたのだし、これからもあわてず騒がず淡々と日々を送っていくのでしょう。
あまり助けにはならないけれど、ほど近いところから極力口は出さずに、そっと見守れたらと思ってます。
木の上に立って見る。親業はそうやってどこまでも続いていくのだろうと思います。
何もできないけど、いつも見てるよ。