ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 海老で鯛を釣る・・ならぬ。

 「口紅で生徒を釣る」書き方がいやらしいなあ、下品。じゃあ「月謝で口紅を買う」これは?う〜ん、これではイマイチつまらない。何のひねりもないなあ。
 何の話かっていうと、昨日の出来事です。前に化粧品の講習会につきあいで言ったことは日記に書きましたが、あの時は値段があまりにも高くて全然興味が沸かなかったのでした。ところが、この時にもらった無料サンプルの口紅がとても気に入ってしまったのです。口紅だけならば、それほど高価というわけでもありません。でも、押しの強いセールスをされて、騙されるように何万も払うのは絶対にイヤです。なので、おそるおそる販売店に「口紅だけしか買えませんが、それでもよければ売ってもらえませんか?」とあからさまな警戒口調で電話を掛けました(スイマセン)
 そりゃあ「ダメです」と言うはずもなく、「押し売りじゃあるまいし、絶対に他の物を無理やり押し付けたりしませんから」と約束してくれたので(約束させるアンタもどうかと思うけど)何時に行くか決める際、普段は絶対に初めての人に自分の職業を明かしたりしないのに、何故か「ピアノを教えている」と口にするわたし。そうそう、夕方は忙しいという話からそれを言ったのでした。そうしたら、急に電話口の店員さんの声のトーンが上がり、「うちの子のピアノの先生を探してたんです。先生〜火曜日か木曜日空きがありませんか?」と勢い込む店員さん。変な流れです。声のやりとりだけでいきなりこんな話になったのにはわけがあって、たまたま電話に出られた店員さんが隣のおばちゃんと公私ともに懇意な方だったのです。おばちゃんから、わたしのことは「娘代わりのような子」と聞いていた店員さんは、「この人なら大丈夫」と直感したんですって(ホントかなあ、笑)
 それから数時間後、化粧品の販売店で紅茶をすすっているわたしがいました。口紅一本を買うために寄ったわたしに、コスメについて、業界について様々なマニアックトークを繰り広げる先ほどの店員さんのIさん。聞くほどにお仕事に対する情熱やら、ご自身のコスメ遍歴の半端じゃない歴史やら、興味深い話になってゆき、身を乗り出すわたし。何の分野であれ、自分の仕事に熱意があってやる気満々な人には無条件で惹かれてしまいます。わたしはコスメのことはちっともわからないけれど、彼女の話を聞いているのはとても楽しかったし、気がつけばもっと聞いてみたくなっているわたしがいて、ハッとしました。もしかして、セールストークにはまりかけてる?!それだけ話をさせておいて、購入したのは口紅一本で申し訳ない気がしたのですが、「そういう約束なんですから」と向こうからおっしゃってくださり、とても助かりました。いい人です。
 次に「化粧品の話はここまでにして」とおもむろに彼女。次はピアノの話をしましょう。ということになり、さっきの彼女の情熱に刺激されたわたしは、調子に乗ってレッスンについて、音楽についてちょっと語りすぎてしまいました。彼女がまた良い聞き手なのです。「子どもを習わせたい」はさすがに社交辞令かな?とちょっと疑っていたのですが、そんなことではなくて、「4年生の娘がピアノをやりたいと言っているけれど、この年で初めても、それなりに弾けるようになるのかしら?教材は何を使うの?」などいろいろと質問をしてくれて、最後には具体的に体験レッスンの日の候補日まで決めました。
 「この間からずっと先生を探してたんですよ。たまたまわたしがこの電話を受けたのも、偶然ではないかもしれません。わたしにとっても、これは大きな出会いかも」とたいそう喜んでくれました。本当に不思議な展開です。お互いに「が〜っ」と自分の仕事について語ったので、人となりがちょっとわかったような気になって一気に打ち解けて「何年生まれ?」と確認しあうと、なんと同級生でした。「え〜??若いですねえ。お肌もツヤツヤだし」と感心するわたしに、「そりゃ、うちのコスメ使ってますから」と彼女。危ない危ない、セールストークにやられかけてます。「お電話で聞いた感じだと落ち着いた声で大人っぽい方かと思っていたら、レインさんも『かわいらしい方だわ〜』と思ったんですよ」と彼女。(そこ〜!わたしの顔を知っている友人、家族の皆様、笑うとこじゃありませんのことよ!お世辞だってわかってますってば!)「持ち上げ合っちゃってますね、わたしたち」と爆笑。こういう偶然が余計に距離を縮めてくれて、ほんの10分のつもりが、1時間近く話しこむわたしたち。不思議です。
 というわけで、冒頭のように、口紅を買いに来たつもりで、生徒をゲットしたかも・・・という話になるわけです。「うちの子が習うことになれば、うちの子の分の月謝で、コスメ買えますよ」と彼女。「それは、それ。これはこれですから」とわたし。そしてくすくす笑い合う楽しい時間。
 さてさて、生徒はひとり増えるのか?わたしのコスメ事情は変わるのか?追って経過を報告したいと思います。