ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

分かり合いたいのに その3 少しだけ分かり合えたかも?な完結編

この日記はふたつ前とひとつ前の日記からの続きです。

格闘しているレッスン日記でごめんなさい。

とはいうものの、この話はここでひと区切り。

最後まで読んでいただけたら、後味は悪くない…はず(笑)

ある日のこと、めえちゃんが、わざわざわたしにぴったりくっついて鼻をくっつけて、隅々までくんくんと匂いを嗅いで。

「てめえは納豆くさいんだよ。キモイばばあ!!(どうよ、笑)」と言い出したことがあって。

その日のわたしは虫の居所が悪かったのか、超大人気ない態度で、かんかんになって怒ってしまいました。

「めえちゃんだって子どもだから汗くさいんだからね!!

生きてるんだから、人はみんな何かしら匂いはするものなの!!」

売り言葉に買い言葉でかなり語気荒く言ってしまいました。

「ふーーーーん!?」

ちょっと馬鹿にしたようにそう言っためえちゃんは、その後特に反応はしなかったのですが。

翌週、デオドラントスプレーの匂いをぷんぷんさせつつ、レッスンにやって来ました。

!!!

明らかにわたしが前の週に言った「めえちゃんだって臭い」を気にしたに違いありません(涙)

「ひゃーっ!!とんでもないことを言ってしまった!

大人気なかったにもほどがある…」

突然我に返り。

こういうのは一刻も早くちゃんと謝っておかないと。

後で大変なことになるかもしれない…と、その日のうちにお宅まで伺って、おかあさんにあやまりに行きました。

めえちゃんのおかあさんに一通り事情を話したら、びっくりなお返事が返ってきました。

「それくらい言ってくださってよかったです。」

「めえにはいいクスリです!」

「ほんと、この子、この頃まったく言う事きかないですよね?」
「実はわたしももう1週間もめえとは直接口をきいてないんです。

兄弟を通して話してます。ずっと喧嘩してますから…」

とおっしゃるではないですか。

ええーーっ!?この態度は、ピアノだけじゃなかったのか!!

聞けば公文でも先生とトラブルになり。

プールはコーチがほとほと困ってしまい勘弁してくださいと言われて休会中。
体操は年子の妹と一緒なので、なんとか通っているそうですが。

彼女は感じ過ぎてしまうのだそうで。

とんでもなくプレッシャーに弱くて、明日プールのテストだと思うだけで、夜中に泣きながら「きっと落ちる。怖いよ~」と訴えたりするのだそう。

かわいそうに…本当にいろいろなプレッシャーを抱えているんだなぁ。

なんだって決してできない子じゃない、むしろできる子なのに…(涙)

そもそも習い事、そんなにやっているんだ!というのにもびっくりです。

さらに。

「先生にまで『納豆くさい』を言ってるとは知りませんでした!

さすがに母親にだけかと思ってました。本当にすみません。」

とおかあさん。

「『納豆くさい』は、わたし(おかあさん)に叱られるといつも反撃に使う常套句なんですよ。」

「わたし、納豆は食べられないんです。それなのに言うんです。」とおかあさん。

あれれ?…思わぬところで謎が解けたぞ!?(笑)(笑)(笑)

「わたしが何かひどい加齢臭のようなものを漂わせているのかも!?って実はずっと気に病んでいたんです。」
と正直に言ったら、今度はおかあさんの方が平謝り(笑)

「もっと早く言っていただいたらよかったのに、すみません。」と言ってくださいました。

ほんと、なんでもっと早くちゃんとおかあさんと話さなかったんだろう?

こんなにもうまくいかないことを、恥ずかしいことだと思ってしまったわたしがダメダメでした。

まあそれでも、いろいろと誤解が解けたので、よかったです(笑)

『納豆くさい』という言葉は「それを言うと相手が嫌がらせてダメージを与える効果が高い」って知ってしまったみたいで。ほんとに手に負えないんです。とおかあさん。
そういうことか!!なるほどね。

わたしは納豆が大好きだし、本当に自分から納豆臭がするのかと思って、しばらく前日の水曜日から木曜日の昼は納豆はやめてました(笑)

そもそもマスクしてるんだよ?

たとえほんとに匂うくらい食べたとしても、マスク越しでしょ!?

バカバカしい…とアネに笑われていたのですけどね。

でも、それはそれとして。

一見、まったく馬耳東風で、人の話を聞いていないように見える彼女が、実はわたしの言葉を一週間後まで気にするほどよく聞いていたことがわかり。

うすうすわかっていたものの、子どもに言う言葉には気をつけないといけないし。

めえちゃんは実はあまりにも繊細なんだと気づいたわけです。

そういう子は経験上、絶対に音楽やピアノに向いているのです。
誰よりも傷つきやすくて、傷つくのが怖いから、先に相手を傷つけてしまう。

でもきっと、なんとかしたいという気持ちは絶対にあって。

だからこんなにこじれているのに、「ピアノをやめたい」とは絶対に言わないし。

あんなに険悪になろうと、怒り狂っていようと、レッスン日が来ればちゃんとピアノに来るのだと思うのです。

とはいうものの。

わたしもまた、彼女が来る日は胃が痛くて胃が痛くて。

さらにどう扱っていいものかと悩み始めました。

さて。

もうすぐ卒園式という3月のある日のこと。

来た時からものすごいハイテンションで、とても手に負えなくて。

なんとかなだめながらレッスンをして。

あと少しで終わるというタイミングで、突然視線を合わせたまま、わたしがまさしく今鍵盤を叩いているピアノの蓋を、そのまんま思いきり、勢いよく閉めようとしたのです。

すんでのところで危険を察知して、ピアノの重たい蓋をキャッチ。

事なきを得ましたが…

「怖~っ!!」となって、これには心底肝を冷やしました。

「ピアノの蓋を突然力任せに閉めないで!」

というのは、いつも生徒の誰にでも口をすっぱくして言っていることで。

ピアノの蓋はとても重いので、万が一手の上に落ちたら怪我をするし、どうかすると大けがにもなりかねません。
「絶対にピアノの蓋は両手で持って、そっとそっと開け閉めしてね」

というのはみんな耳タコなくらいわたしに聞かされていることです。

なのに目を見ながら、弾いてるそばからそんなことやる?という驚き。

しかし、その時はあまりに肝を冷やしたので、わたし自身一言も言葉が出ず。

やっと一息ついて。

「どうしたの?」「どうして?」と極力冷静に声を掛けたら…
めえちゃんは無言のまま、いきなりレッスンバックをさかさまにして頭からかぶってしまいました。

完全に拒否のポーズ。身体がぶるぶると震えてて。

多分自分の感情がコントロールできなくて、彼女自身が一番途方に暮れているのだとわかり、わたしもなすすべもないことが苦しくてたまらなくなって。

そっとバックを横にどけて、彼女の身体をそっと抱き上げたら、めえちゃんの方からむしゃぶりついてきて、膝の上でワンワン泣いてました。

20分くらいひたすらに泣いていたので、かなり時間が押してしまい。

泣き止んでご褒美のシールを選んでいるうちに、2番目のお兄ちゃんが来てしまいました。

かなりその場の空気がヘンだったと思うのですが、超マイペースな兄がご陽気に歌いながら入ってきて。

明らかに変わるレッスン室の空気。

ねえ先生、うちのトカゲの話聞く??とのんびり言いながら教材を開き。

コオロギ3匹も食べたんだよ!ね、めえ♪とめえちゃんも会話に引き込んでくれました。

「うん、かわいかったんだよ♡」

あれあれ、何事もなかったように普通に戻ったぞ?

すんなりとめえちゃんの不機嫌は収まって静かになって。

「ここ座ってれば?」のお兄ちゃんの言葉に素直に補助いすにちょこんと座り。

わたしとお兄ちゃんの会話を聞いてました。

その日に限り、お迎えのおかあさんがなかなか現れなくて。

めえちゃんはお兄ちゃんがレッスンしている隣で待っていることになったので。

紙と鉛筆を渡したら、レッスンの邪魔することもなく、何やら静かにずっと集中して書いていて。

おかあさんがいらっしゃると同時にわたしが渡された紙には、びっくりするほどたくさんの文字が書いてありました。

ひらがなで、彼女のフルネームとわたしのフルネームが交互にいくつもいくつも書いてあって。

間がハートで繋がれていて。

「めえ♡レイン めえ♡レイン めえ♡レイン めえ♡レイン」のように。

一列にいくつも、何十行も書き連ねてあります。

その紙いっぱいに並ぶふたつの名前を見て、なんだか胸を衝かれてしまいました。

もしもわたしがイヤだったり、ピアノのレッスンがイヤだったりするのなら、きっと名前を並べて書いたりはしないだろうと思うのです。

ましてやハートではつながないだろうと思うのです。

お兄ちゃんの、ほわんとしたニュートラルな態度がめえちゃんを溶かしたのは明らかで。

そして彼女があの大騒動のあとで、無心にひたすらに書き連ねた名前。

うまくやるためのヒントをもらったような、少しだけ希望の灯がともったようなそんな気がした一日でした。

とはいうものの、それからも、アップダウンの激しい日々は続き…

ある日はレッスン室に入ってきた時からとても饒舌で。

幼稚園であったことをたくさん話したり、機嫌よくピアノも一生懸命やって、丸もたくさんもらって、何の問題もなく終わる日もあるのです。

やっと一山超えたかな?と思うとまた翌週は全然ダメで、一言もしゃべらず。
翌週は激怒していて、手がつけられない。
そんなことが交互にやってきてました。

今にして思えば、未知の「小学校に行く」ということが、彼女にとってはとてもとてもプレッシャーだったみたいです。

家でも突然泣き出したり、かと思うと同級生ののんびり屋さんの子をバカにするような発言をしたり。

不安定極まりない態度は、多分不安の裏返しだったのだと思われます。

そしてついにその日がやってきました。

その日はおかあさんと喧嘩して、また送ってもらうことを拒否。

一人でやってきためえちゃんは、いきなり玄関の扉を閉めている間にわたしのスリッパを履き、ピアノ部屋に駆けこんで電気を消し。

わたしが部屋に入ると同時に「スリッパきったね~」と言いながら、思いっきりわたしの顔に向かってスリッパを投げつけたのです。

「じゃあ、レッスンを始めるよ?」と言って。

そのまま何事もなかったようにレッスンはしましたが、実はスリッパが顔に飛んできた瞬間に「ぶちっ!!!」と完全に心が折れる音がした気がしました(笑)

「すみません、さすがに無理です。わたしの手に負えません!!」

今日こそ言おう…今日こそ言わなくては…と思いながらレッスンが終わったら、その日に来られたのがおとうさんで(笑)

しゅるるる~っ!!と冷えていくわたしの怒り(笑)

でもそこで終わらなかったのは、夜になって。

「まだ少し先ですけど、またそろそろわたしがくたびれちゃったので。

6月、またひと月、兄妹全員お休みにしようと思いま~す(*'▽'*)」

と言う顔文字つきの能天気なメールが来たことで。

元はと言えばおかあさまの気まぐれで、追加でレッスンをしたかと思えば、わたしがくたびれちゃった~とお休みにされて。

そのたび、子どもたちは振り回されるばかりじゃないか!!

わたしだってもういやだ!!

冗談じゃない!!!!

なんだか本気で頭が沸騰してしまい。

「なぜに、そんなに勝手なの?!」とさすがに怒りが沸いてきて。

「ひと月空いたあとのレッスンは、今度こそとても自信がありません」…というメールを返そうと思って入力を始めたのに…

書いたメールはなんとこれ。

「ほかの三人は多少お休みしても前回同様大丈夫だと思いますが、3番目のめえちゃんだけはなんとかお休みにしないでいただくことは可能でしょうか?」

!!!

はあ?レインバカじゃない???なんでそんなこと言った?

ジブンガシンジラレナイヨ…

呆れつつ、そう思ってました(笑)

なのに「レインの恐怖の二枚舌」が勝手にそう打ってしまったのです(笑)

そこでお母さんから当然のように「えっ!?なんですか?どうしました?」とメールが来て。

 その時に覚悟を決めて、続けて書いたメールはこんな内容でした。

ほかの子たちはひと月休んでもきっと大丈夫ですが、わたしがとても心配しているのはめえちゃんです。

前回長いお休みのあと、ひと月後に途方に暮れていた姿が目に焼き付いていて、とても心配になってます。

できていたことを忘れてしまい、できなったことが本当にこたえていて。

あれからもうずいぶん経つのにいまだに引きずっています。

弾けなくなって、ピアノを楽しみたいけど楽しめない。

自信がないからさらに弾きたくない。

でも本当は上手に弾きたくて。

弾けたときのイメージは脳裏に残っていて、いつもとても悔しそうです。

カッコワルイのがとにかく嫌で、弾かないから余計に弾けなくなっちゃう…

わかっているけれど、素直に弾けない…

その葛藤が手に取るように伝わってます。

そしてすごくやる気満々で甘えっ子のように褒めて褒めてと言ってくる時と。

何も受け入れてくれなくなって。

黙り込んでしまい、わたしがシャットアウトされる時の落差があまりにも激しいです。

そんな時でも、ふと心がほどけて、身体ごと預けてきて甘えたり。

わたしにしがみついてため息をついていたり。

助けをもとめているように感じることも多くて。

わたしはめえちゃんが大好きだし、いつだって幸せでいて欲しいので、

ここのところ実はずっと「苦しい」を分け合っているような気がしています。

今成長過程で、とてもむずかしい時期ですし。

小学校に入ったばかりで繊細なめえちゃんなので、気苦労も多いと思うのですが。

元々わたしとの相性は悪くないと思ってますし、彼女のようなタイプの子とは、毎週顔を合わせて何年もかけて信頼を築くことがことさら大事な気がして。

めえちゃんだけでもやはり続けて預かりたいと思いました。

 はぁ?何言ってんの?

おーまーえーはーバーカーかーーーー!?

(笑)(笑)

メールを出した後も、な~んであんなこと言ったかな?と、ずっと後悔していたのですが…

なぜかなぜかなぜか…

このメールがきっかけになって、物事がすべて好転したのです。

おかあさんからは

「先生のメールの情熱に感動しました。」

とメールが返ってきて。

「これからは一日のうちのどこかで、少しでもめえに付き合って、楽しく一緒に弾いてみようと思います。」とのこと。

いとありがたし!!!

実際、毎日時間をちゃんと作ってくださったようで。

3番目でどこか放っっておいても大丈夫と思われがちだっためえちゃんは、おかあさんとの時間をとても楽しんだようでした。

「考えてみたら、手がかかる上下にかまけて、あんまりめえと一対一になったことがなかった気がします。」

とおかあさん。

そして。

しばらくの間、毎日ピアノの横で10分ただただ座ってくださっていた、たったそれだけで。

明らかにめえちゃんの心は安定しました。

それと同時に彼女が心配でたまらなかった小学校入学となり。

不安だった小学校生活は、想像よりも怖くもなくて。

友達もすぐにできて。

気がつけば、学校の先生で「先生」と呼ぶことにも慣れたのか

わたしのことも「せんせ~!!!」と言い出してるし(笑)

そしてそして。

めちゃくちゃ元気にやってきて

「今日は両手でかっこよくできたから見て見て~」と言い。

ちゃんと練習してあるから自信をもって披露してくれて。

わたしももちろん遠慮なく褒めちぎって。

そこまでいけば、どんどん自分で山をも登っていく賢いめえちゃんなので。

今はすべてが少しずつ前に向かって動き出した実感があります。

気がつけば、暴力もすんなりと収まって、ここふた月ほど一度も出てないし。

「てめえ」と言われることもなくなりました。

何よりご本人の顔が本当に穏やかで、こんなによく笑う子だったことをすっかり忘れてたんだなぁと思い出しました。

ああ、もっと早くにいろんな思いを本気でおかあさんにぶつけてみればよかったです。

ひとりで抱え込んだことが一番の失敗でした。

とはいうものの。

こういう繊細で心のコントロールがむずかしい子は、またこういう日々がやってくるかもしれないと思っています。

6年生になる頃にはまた反抗期だって来るでしょう。

でもでもでも。

次はもうちょっと上手くやれるかも?と、今は少しだけ思えるようになりました。

彼女との関係が修復し始めてから、徐々にわたし自身の体調も良くなってきて。

このままいろいろなことが好転していくといいなぁと思っています。

そして6月がやってきたので。

今月はめえちゃんと少しじっくりと向き合う期間になればと思ってます。

ふたりの兄と妹に挟まれて、きっといつも少しだけ重たい荷物を背負っているであろうめえちゃんに幸多かれと願ってます。

実はわたしは子どもと向き合うのは得意ではないとわかってしまい。

正直あまり自信はありませんが…

これまでの彼女との日々はほとんどピアノ以前の問題で。

やっとピアノの先生としてスタート地点に立った感じ。

今後もあきらめず、じっくりと人と人として、付き合っていきたいです。