いつもたくさんの反響をありがとうございます。
「AGE DRUNKER」の日記にいろいろと深い感想を寄せていただいたり、そこから友人たちと現在進行形で長々と話がはずんだりもしていて。
書いてみるものだと思いました(笑)
同じように疑問に思ったり、語りたいと思ってらしたお仲間にたくさん会えてhappyです。
拍手コメントをくださったY.Sさま。いつもありがとうございます。
ほんと、またふたりに気軽に逢いに行けるご時世になるといいですね。
さて。
ここからのいくつかは、レッスン日記です。
ことの始まりは、昨年の5月の半ばのことでした。
緊急事態宣言がそろそろ開けようと言う頃から少しずつ準備を始め。
6月からレッスンを再スタートの予定で動き出しました。
ふぇるまーたをずっと前から読んでくださってるみなさまなら「ことちゃん」を覚えてらっしゃるでしょうか?
1年生の頃、場面緘黙症なんじゃないか?と思われた彼女は、昨年には6年生になり。
近年は、誰とでも話せるようになっていました。
5年生のラストの頃は、体育館で全校生徒の前でピアノの伴奏をしたいと手を挙げるまでになっていて。
いよいよ本番と言う時期にちょうど感染拡大と重なって、結果的に体育館で伴奏の夢は叶わなかったのですが、とてもいい経験をして。
進度はゆっくりだけどピアノもとても楽しんでいて。
わたしともすごく仲良しになって、なんでも話してくれるようになって。
帰りが真っ暗になる冬場は、毎週途中までたくさん話をしながら送って行ったりもして。
小さい頃はものすご~く大変だったけど、もう大丈夫…そんな風に思ってました。
そうこうしているうちに一回目の緊急事態宣言で、小学校と共に、ピアノも完全にストップ。
お母さまと折に触れて連絡は取り合っていましたが、再スタートの連絡をしたら、菓子折りを持って「一日でも早くスタートすることは可能でしょうか?」と相談に来られました。
えっ!?何かあった?と思いつつ、5月の最終週からリハビリスタート。
レッスンが始まってすぐにわかりました。
春休みから始まって5月まで。
大人ならそのくらいの時間、あっという間では?とさえ思えるくらいの期間ですが。
ずっとひたすらに家にいる間に、ことちゃんはまた、家族以外の誰とも話せない状況に戻ってしまっていたのでした。
学校にも行きたくない!人とも会いたくない!ということちゃんは、夢遊病のように淡々と学校へ通ってはいるものの。
学校でもずっとウトウト。
家でもごろごろ。
明かに覇気がなくて、異常なくらいよく寝るのだと言います。
あんなに好きだったYouTubeさえほとんど見なくなって。
感情があまり動いてない気がするとお母さん。
ピアノは?と聞いたら本人が「行く」と言うので、ここだけは戻したいと思ってましたとのこと。
もちろんそういわれたらとてもうれしいわけで。
再スタート。
他の生徒たちもみんなみんな戻ってきて、表面上はいつも通りの日常を取り戻しつつあってややしばらく。
ことちゃんだけはいつまで経っても「ここのところとても明るくなったことちゃん」には戻りませんでした。
一切無駄な話をすることなく。
自転車を買ったと聞いたので、どんなの?と聞いても無言だったり。
あえて流行歌の楽譜を出して、これ、やってみない?と誘ってみても。
たまに口を利いたかと思えば「ヤダ!!」
これだけ(笑)(笑)
一生懸命ピアノのこと、どうでもいいこと、いろいろ話しかけたり、興味を引きそうなことを言ってみても、反応がまったくなくて。
でも、淡々とわたしに言われるままに課題を弾き、レッスンそのものは以前よりむしろ表面上はうまく言ってる?という感じ。
お休みすることもなく。
お洋服とか大好きだったのに、ちっとも構わなくなって、よれよれのシャツでぼんやりとやってきて。
ひたすらに言われるままに練習して、曲は仕上がったり来週に持ち越したりして。
大好きでとことん集めていたシールも無造作に貼ってだるそうにしています。
何の問題もなくやることはやっていますが、それがなんだかよけいにヘン。
夕方からのレッスンなのに、淡々と弾いていたかと思うと、マスクの下で時折ウトウトしていることもあって。
この子、お母さんに無理やり来させられているのでは?と思うこともしばしば。
とはいえ、たまたま緊急事態の前にワークととことん取り組んでいたこともあって、ワークを始めると、ものすごいスピードで黙って書き込んでいきます。
なので、ちょっと怪しい空気になるたびにワークを使いながら、なんとかレッスンをしてました。
ある時、おかあさんに「ピアノ、本当は苦痛なんじゃないですか?」と聞いたことがあって。
そうしたら…
「いえいえ。わたしは実は何も言ってないんですが、ピアノの日だけはずっとごろごろしていても、自分から起き上がって、自分の意思で出て行くんです。」
とおっしゃるのです。
「唯一自分の意思で出かけている場所なので、先生も大変だと思いますが、どうぞ続けさせてください。」
そんな風におっしゃり。
「元々学校が好きな子ではなかったのもあると思いますが、数か月の休校ですっかりなまけものになってしまいました。」
とおかあさん。
怠け者になったとは思わないですが、オトナの都合で学校に行かされたり行くなと言われたりすることに抵抗があったのかもしれないし。
安全な家の中にいることは、彼女にとってすごく安心で。
両親は共働きで、妹はまだ小さくて学童に預けられていたから、ひとりでずっと家にいることが苦ではない彼女は、その生活を手放すことにすごく抵抗があったのかも。
外からの圧力で環境が激変していくことに、彼女の心はついていけなくなってしまったのかも?と思いました。
半信半疑ながら、そこまでおっしゃるならと思い、暖簾に腕押しな感じのレッスンはずっと何か月も続いてました。
たまにわずかに笑った?と思えて有頂天になってみたり。
かと思うと翌週はまったく何をやってもうまくいかず…
でも、本人はうまくいかないこともちっとも気にしていない様子で。
以前はあえて「ありがとうございました!」のあいさつをしないで帰ろうとするという遊びをして、わたしの気を引いてげらげら笑ったりしていたのが…
ロボットのように淡々と「ありがとうございました!!」と言って帰ってゆく…
相変わらず学校にも行ってはいるようですが、宿題もやらず、友達とも遊ばず。
家でもぼ~っとしている日々は続いているようでした。
その彼女が、なぜか覚醒!?するきっかけとなったのが、昨年の年の瀬のことでした。
大好きな友人にいただいた生の木や草花をあしらったスワッグを毎年玄関に飾っていて。
いつもスワッグを挟んで生徒たちとの会話が弾むのが常なのですが…
突然ことちゃんが
「いつも年と同じ、森の匂いがする。先生、もうクリスマスだね!」
と言ったのです。
いえいえ。飾ったのはひと月近く前…と思ったものの(笑)(笑)
今日気づいたように、突然目が覚めたかのように言った彼女の言葉は強烈に心に残りました。
多分、レッスン以外の会話らしい会話を彼女の方から振ってきたのは、半年振りくらい?
その日はびっくりし過ぎて、それ以上はたいして会話も弾まなかったですが(笑)
このままうまくいけばいいなあと祈るような気持ちで帰して。
何度も何度もその短い会話を反芻したりしてました(笑)
急激な変化ではなく。
だんだんにだんだんに、ゆっくりゆっくり…少しずつ意志表示をするようになって。
今年の2月くらい「急に『こと』がお友達と遊びに行くと言い出したので、万が一ピアノに数分から10分くらいの誤差で遅れるかもしれませんが、あまりうるさく言いたくないので、どうぞご了承いただきたいのです。」
とメールをいただき。
とうとう自分の意思で外へ出始めたのかぁ~と感慨深く思ったりもしました。
その後も徐々にですが、表情が明らかに穏やかになって。
彼女らしい豊かな感情表現も戻ってきました。
そして、ピアノの方もまた表情豊かになっていって。
元々は「初音ミク」やディズニーの名曲やら、知っている曲を弾くのが大好きだったはずが。
一時期断固拒否モードだったのが…
いつの間にか元に戻ってまた「あれやりたい!」「これやりたい!」と言うようになりました。
正直、黙って言われるがままにレッスンをしていた頃の100倍めんどくさいですが(笑)
今の方が断然わたしも楽しいし、やりがいを感じています。
おかあさんも腹をくくられて、こまめに連絡をくださり。
お互いに必要なことは情報共有しつつ、共に見守ってきました。
そして3月。
小学校の卒業式の日、わざわざことちゃんが卒業式の帰りに、おかあさんといっしょに我が家に寄ってくれたのです。
「先生、わたしの卒業式のワンピース、見たいでしょ?」
「ねえ、一緒に写真撮ろ!?」
と言ってくれて、仲良く画像に収まった瞬間、どれだけうれしかったことか!!!
ちょうど、別の生徒のことでとんでもなく悩んでいた時期でもあって。
ことちゃんが、わざわざわたしにワンピースを見せるためだけ、一緒に写真を撮るためだけに寄ってくれたことに、どれほど励まされたかしれません。
そんな風に、予期せぬ環境の変化もあって、昨年から今年のレッスンは超波乱含み。
あっちでもこっちでも今までになかったようなトラブルが散発的に起きているのですが…
幸いにも「ああ絶望的かも?」と思うたび、別の生徒とか教室の卒業生が不意に現れて。
偶然の成り行きから心を引っ張り上げてもらったり。
「わたしもそんな時期あったよね!?」とヒントをもらって助けられるという現象が起きています。
ありがたいことだなあと思います。
ちなみに。
やっと慣れたところで、小学校から中学校へ。
また環境が変わるしどうかなぁと思っていたことちゃんは、思いのほか中学校に順応して、マイペースで楽しく通っているそうです。
ピアノと同じくらい絵が好きな子で。
美術部に入ったそう。
週2回くらいのペースでのんびり部活にも取り組みながら、ピアノも楽しんでくれてます。
時々びっくりするのが、ほとんど言葉を発しなかった時期に、一方的にわたしが話していたことを意外と彼女がわりと覚えてて。
「先生、あの時、あんなこと言ったよね?」なんて不意に話題に出てくること。
聞いてないように見えて、ちゃんと聞いていたんだなぁと思うと感慨深いです。
彼女との付き合いも7年目。
両手を上手に使い分けて弾けなかったり。
楽譜がいつまでも読めるようにならなかったり。
いろんなルールがなかなか覚えられなかったり。
たくさん苦労した分だけ、わたしにとっても彼女は「先生」のような存在で。
どれだけ試行錯誤したかを考えると、ほんと大変ではありましたが…
彼女と出逢い、彼女の「できない」に心を寄せ、向き合ったおかげで、実はわたしの方がいろいろなことを教えてもらった気がしています。
その経験は何物にも代えがたく、次の生徒と向き合ううえで、いっぱい役に立っています。
どんなに歩みがゆっくりでも、あきらめずに続けていれば、いつかは実を結び、ちゃんと弾けるようになるということも、彼女がわたしに教えてくれました。
もう中学生だし、どこまで一緒にピアノができるのかわかりませんが、今しばらく楽しい時間が続くといいなあと思っています。
さて。
このあともうひとつ、とんでもなく心を消耗したレッスンの話を書きます。
その話まで書き終えないと、自分の中で一区切りとはいかない気がしてて。
とはいうものの、ほぼ解決したかも?というところまできていて。
なんとか救いがない話にならずに済んで、わたしの体調も戻ってきつつあります。
やっぱり不安って万病のもとでした。
そして自分の体力とか「ずぼら」を過信してはならないとも徹底的に反省させられましたのことよ。
こちらは2回くらいに分けて書くかもしれませんが…
よかったらそちらの話もお付き合いいただけたらと思います。