ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 最近のレッスン室まわりのこと。

ピアノのレッスンに、5歳児が二人来るようになって、新しい風が吹き始めました。
どちらも、今のところとても楽しみにしてくれてるみたいで、先日は時間前にすでに親子で家の前でスタンバイ。
「ここで待ってるからいい。ってKが言うんで、早目に来ちゃいました。」とおかあさん。
気持ちが引き締まります。
ちゃんと期待に応えられるかしら?
プレッシャーっ!!

ピアノ教育はものすご〜く最初が肝心なので、わたしもレッスン日はそわそわ。
40分弱をどう組み立てようか、かなり一生懸命考えます。

ふたりとも何も言わなくても、入ってくるときにきちんとくつのかかとを持って、反対側を向けてきちんとそろえてくれます。
こういうのって、どこのおうちでもおかあさんが、子どもが小さい頃に本当に一生懸命定着させようとがんばるのですが、集団生活が進むにつれ、意外と忘れてしまったり、気恥ずかしくてわざとしなくなったりしてしまうのですよね。

でもスタート地点で愛情を持ってちゃんと教えられたことって、きっと本人のどこかに残っていて、大人になる道の途中で「やっぱりちゃんとしよう」と本人が思ったときに、ちゃ〜んと出てくるもののような気がしています。

わが子たちもそうでした。

特にうちのオトートなんて、恥ずかしがりなので、いつまでも挨拶やお礼がちゃんと言えなくて、母としてほんとに落ち込んだこともあったけど、今はもちろんちゃんとできてますしね(笑)
時間が経ってみると、あんなに悩むことでもなかったなぁと思うこともいっぱい。

そういう意味でも「今」が大事。明日のための今日。今あきらめないことが大事ってつくづくと思います。

うちの教室では、帰り際、レッスン室の中で深々と「ありがとうございました。」と言い合います。
ちびっこは総じてマネをするのが上手なので、こっちがていねいに頭を下げると必ずあっちも同じように返してくれます。
かなり深々と心をこめて「ありがとうございました。」と言うことにしていて、そうすると、そこまでふたりでふざけてゲラゲラ笑っていても、あっちも自然と居住まいを正して大真面目に言ってくれます。
なんとなく儀式化しちゃってるので、このごあいさつは大きい子たちともします。うちの教室名物です(笑)。

ちびっこふたりはまだまだ緊張が抜けなくて、若干しゃちほこばってます。
そしてお迎えのおかあさんたちもまだまだ緊張の面持ちで、見守ってらっしゃる感じ。
片方はひとりっこで、片方は3人兄弟の一番上のおねえちゃんなので、おかあさんも育児に不慣れなのだと思いますが、その一生懸命子どもに向き合ってがんばっている感じがひしひしと伝わってくるので、いつも手をつないで帰る後ろ姿に向ってこぶしを握ってしまいます。

ただ、ひとつ、ふたりがあまりに仲が良すぎて、ちょっとだけ困っています。
ムダに競争させたくないので、あえて違う教材でスタートしたのに、さらにレッスン日は別の日なのに、相手が何をやっているかがお互い筒抜けなのです。
気がつけば「Sちゃんがやったあれ、わたしもやりたい!」「Kちゃんがやってたおせんべのうたやってない!」と両方に催促されて、やむを得ず似たような進め方にになっちゃってます。
まっいっか。

そしてわたしは、またしても趣味的に大好きな導入ピアノ教育の教材研究を始めました。小学生の自由研究レベルですけれども(笑)
あんたも好きねぇ〜という感じですが、実は「これ」というベストな答えには、永遠にたどり着けない気もしていて、だからこそ、まだまだ探してしまうのですよね〜
そんなんで教えてお金もらっちゃダメだろう…という気がしなくもないですが、ええ、精進いたします。ちょっとずつでも。

最近またたくさんいい本が出ているし、あのウォークマンを壊した日に寄った池袋で見つけた本がよかったので、うまくレッスンに使えないか考えていて、ここのところ、毎日1時間くらいレッスン室にこもってあーでもない、こーでもないやっています。

たとえば最初に覚えてもらうリズムパターン、たとえば音当て、たとえば手遊び、いろんなバリエーションを作って、それをもうちょっと大きい子、2年生のモカちゃんや、4年生の手が小さいAちゃんに、レッスンの後実験させてもらったりもします。

本人たちにはやさしい教材だし、早く帰りたいだろうに終わってから引き留めてるわけですが、意外や意外。この子たちが結構喜んでつきあってくれます。
いろんなアイディアを出してくれたり、小さい子用の手遊びをノリノリでやってくれたりもします。

ということは、逆に言えば、彼女たちのレッスンはここのところちょっとマンネリだったかも?と反省したりして。
どういうのやりたいの?とついでに聞いてみたら、あれやりたい!これやりたい!この曲弾きたい!いっぱい出てきました。うわぁ、やる気満々だ。びっくりです。


この間日記でも触れたものすごくおとなしい子、6年生のAちゃんが、初めてすごく大勢の人前でピアノを弾くことになりました。
1年生から6年生までの全校イベントでピアノを弾くことになったのです。
ちょっと行きがかり上という側面があるらしいのですが、今まで一度もオーディションすら受けたことがなかった子なので、おかあさんもすごく驚いているんですって。
というわけで、自力でやるのは不安ということで、がっつりレッスンに持ってきて、一緒にただいま特訓中。
なんせ人前で弾くという経験をここまでかたくなに避けてきてるから、緊張が半端なくて、弾けるには弾けるけど、テンポがものすご〜く不安定なのを本人が一番自覚してて、不安だ〜不安だ〜というのが伝わってきます。
言葉少なにわたしを見上げるような目線(笑)
久々に彼女に巡ってきた大事な瞬間だと思うので、実はわたしも上手に弾かせてあげられるのかどうか不安なのですが、ここは余裕を見せて一緒にがんばるっきゃないわけで。
せっかく心を開いてわたしを頼って持ってきてくれたんだから、よ〜し、不安ごと一緒に共有していこう!という気分です。
まだもうちょっと先だけど。うまくいくといいなぁ。


幼稚園の先生のKちゃんが、今弾いているのは「青い空に絵をかこう」という保育関連の曲なのですが、この間幼稚園で、初めて子どもたちにこの曲を教えようと弾き歌いをしたら、めっちゃ評判が悪かったそうで(笑)
口々に「この曲、いやだ」と言われちゃったって。凹みつつ持ってきました。

「え?なんで?」
びっくりです。いい曲なのに。

幼稚園でやったように弾き歌いを見せてもらったら…ピアノだけなら全然上手いのに、歌が入るとあまりにもひどい、ひどすぎるということが判明しました(笑)

あれ?緊張したから?と思い、何度かその場で練習してもらいましたが、全然ダメダメなので、試しに「わたしが伴奏してあげるから歌だけ歌ってごらん。なんでこんなにひどいの?」と思わず口に出して言っちゃった(笑)

ところがですよ。ところが。

歌だけを歌ってもらったら、「Kせんせーの歌」があまりに魅力的でびっくり!やっぱりプロだなぁ。
「青い空に絵をかこう。大きな大きな船♪」とひとふし歌っただけで、ものすご〜く心を惹きつけられました。
明るくてとってもかわいらしい声。歌のおねえさんみたいです。
きっと子どもがあこがれるだろうなぁというさわやかな歌声です。
でありながら、滑舌がよくて、歌詞がとっても聞きとりやすいのですよ。
「エイヤー!」の掛け声のところなんて、なんてさわやかにきっぱり歌うんだ!
歌が巧いっていうよりも、人を惹きつける力が半端ない歌声なのです。
伴奏しながらどんな表情で歌ってるのかな?とちら見したら、すっごいいい笑顔。
おぉ、プロってる時の彼女の片鱗を見たぞ!と思わず興奮してしまいました(笑)

スゴイね!さすがだ!とほめちぎりつつ…
歌が完璧…ということは…やっぱり弾きながら歌うっていう、その動作ができないってことなんだから、ひたすら練習!練習あるのみ!
答えは簡単でした。ぷぷぷ。ファイト!



さらにさらに…
中学で吹奏楽部に入ったMちゃんは、まだ入ったばかりなのに、なぜかコンクールのAチームにピアノパートで入ることになったそうで、ただいま大騒ぎして、練習しています。
2〜3年生のピアノが上手な子は楽器パートで重要なので抜けられなくて、一年生の中でオーディションをして選ばれたのだそうです。
曲は「マノンレスコー」
ものすごく美しくていい曲ですが、この曲、現代曲っぽいテイストで、譜読みがなかなかにむずかしくて、先日助けて〜とやってきました。
マノンレスコーと聞くと、岩崎良美ちゃんが出てくる世代なものですから、この曲名を聞くたびに、「わたしはマノン〜♪マノンレスコー♪」がよぎります。
もちろんそんなことは生徒には言わないけど(笑)

繊細でていねいなタッチと、表現力が素晴らしいと言って選ばれたそうで、わたしとしてもちょっと鼻高々。
でもあんまり時間がない上に、この子、超楽天的で、ちょっとほっとくとすぐにさぼるので(笑)しばらくはちゃんと見てあげなければと思っています。
それにしても心配し過ぎな6年生のAちゃんと、この、楽天的過ぎる中1のMちゃんは、家が近くて仲良しですが、性格は正反対です。

片や考えすぎ、片や考えなさすぎ。
だからこそ、Mちゃんはとりあえず手を挙げて、今まで数々の行事の伴奏をゲットしてきているし、片や同じくらい弾けるのに、Aちゃんは決してピアノを弾ける人!と言われても手を挙げて来なかったのですよね。

どちらもすっごくかわいくて大事な大事な生徒なのですが、ふたりともが本番で、思いっきり力を発揮できるように、陰ながら応援したいと思います。


そういえば、中3のうぜーよ姫が来た日に、保育園の頃にさかあがりがなかなかできなかったよねという話をして「先生、わたしの黒歴史知りすぎ〜!いや〜っ!怖〜っ!!敵に回したくない人ナンバーワンだわ!」とか言うので、ゲラゲラ笑っていたのですが…

その話をした翌日、レッスンの後、バロンの散歩中にとぼとぼと向こうから歩いてくる親子がいて、よく見たら、さっきまでうちに来ていた保育園児のMちゃんでした。

くしくも親子で、さかあがりの練習に学校のグラウンドに行ってきたんですって。
「どうやってもさかあがりができなくて、先生。」って泣きそうな親子。
けなげだわぁ。

あまりにもタイムリーだったので、前日のうぜーよ姫の話をしてあげたのです。
「これはね、運動神経とかじゃなくて、ある日突然、怖いとか、できないとか、そういう気持ちがはずれて、できるかも?というきっかけの日が来るんだよね。
今思えば、やりたいっていう気持ちが強すぎる間はダメなのかも。」
「な〜んて、先輩元保育園児が言ってましたよ!」と教えてあげました。

「そういえば、やりたい気持ちだけがかなり先に行っちゃって、これができなきゃ大きくなれないくらいの悲壮感がありますね〜」とおかあさん。

いやいやいや。

Mちゃんははじめての子だし、きっと他の子ができることがうちの子にできないっていうのがものすご〜く親子して堪えているんだろうなぁと思いました。

その後彼女(うぜーよ姫)は無事さかあがりを克服して、私立の小学校を受ける時に、特技「連続さかあがり」って書いたぐらいですから…という話をしてあげました。

「なんだか力入りすぎですよね、わたし」…とぽつんとおかあさん。

わたしも時としてそうだからものすご〜くわかります。

ものすご〜く追い込まれた気分になっていたそうなので、たまたま会えて本当によかったです。
誰かに話すとこういうのってちょっと落ち着いたりするものだと思うのです。

そしてふたりと別れてから、またウォークマンをして、バロンと続きの散歩をしてたのですが、不意にかかったのがKinKiさんの「I Will」でした。Jアルバム。
この歌はなんだか発売当初は自分の中で芯までたどり着けてないような、不完全燃焼な感じもあったのですが、この日聞いたらめっちゃ腑に落ちた気がしました。

「余計な心配させてよ〜ねぇ」

からの次の歌詞です。

「いつの日か君が ひとりになっても 愛された記憶は 君を守る」

「いつの日か君が ひとりになっても 遺された言葉は 君を守る」

確かこう続くのですよね。

何も恋人とか親子とか、そういう話に限ったことじゃなくて、先を歩いている者としての次世代へ送る歌という側面もあるのかしら。

プラトニックの青年症候群だかなんだかわからないけど、最近すご〜く考えていることがあって。
それは残りの人生、何ができるだろう?ということです。

多分に自己満足かもしれないけど、できることはひとつでもしておきたいなぁ。
いえいえ、別に今の自分の健康状態に不安があるわけでも、余命を意識したわけでもなんでもないのですけどね(笑)

なんだかわからないけど「このことについて、今、ちゃんと考えておきなさい!」と誰かに言われてるみたいな気持ち。
「この気持ちは〜なん〜だろう〜♪」(by 谷川俊太郎 合唱曲「春に」のフシで!)です。