ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 プラトニック 第一話まで

旅行から戻って1週間とちょっと。折しも、ドラマ「プラトニック」が始まる直前直後。
旅行の写真だけはなんとか整理しましたが、こっちも手つかずのまま、右往左往。
ドラマの番宣番組もあったりして、ふわふわふわふわしながら暮らしていたので、なんとなく心ここにあらず(笑)
一話見終わったらちょっとは落ち着くかと思いきや、さらに心ここにあらず(笑)
完全にもろもろストップしちゃってるし。
どうよ、これ。

久しぶりにドラマに魂ごと持っていかれました。
本望です。


そもそも木曜日からふわふわそわそわは始まってました。
仕事が終わってキッチンに上がってきたら、母からメールが来ていて「明日つよしくん、昼のNHKに出るから見た方がいいよ!」というもの。
うちの母はわたしが相変わらず全然NHKを見ないと思い込んでいるので、NHKの番組につよしさんが出る時は必ずあちらから連絡があります。
この年になって娘に教えてあげなくっちゃと思ってくれる母がいるってしあわせなことだなぁとかみしめつつ(笑)「そうなんだ!ありがとう!」とメールを返すいい年の娘ってば。むふふ。


BSコンシェルジュ中山美穂ちゃんや吉田栄作氏のインタビューもとても興味深く見ました。
この番組とつよしさんが出た「スタジオパークからこんにちは」の前半部分でかなりドラマについての期待が高まりました。
(後半部分のことや、野島さんとつよしさん話に関しては別途、エントリーを分けて書こうと思います。)


以前岡田くんの大河ドラマの始まる前の番組の時も思ったのですが、NHKは番組宣伝がとっても充実しています。
見ごたえがあって、前置きなしに本題にすっと入り、ドラマそのものに興味が沸く作りになっています。
これが民放だと、放映当日の朝からいろんな番組にちょっとずつ顔を見せて、ドラマ見てくださいね!と宣伝するパターンが多い気がしますが、これは必ずしもドラマそのものの紹介というわけではなくて。
たとえばキャストさんたちの空き時間の過ごし方だったり、共演者さんたちとのおもしろトーク。主演の方が最近はまっている食べ物とか、マイブームとか。
ファンの人はそれはそれとして、テレビにたくさん出ることが単純にとてもうれしいし、そのキャストの人となりがわかるのは偶然見た人にとっても興味を引かれることでもあります。
でも、ドラマそのものに深く切り込む感じではないのですよね。

それに対してNHKの番宣は、ちょっとネタばれし過ぎ?というくらい内容にも深く触れながら、これでもかと「見てみませんか?」と勧められるイメージ。
どんなところに苦労して撮ったか、撮っているかを演者や脚本家がつぶさに話してくれるのがとってもおもしろかったです。

もちろんわたしはつよしさんのファンなので、つよしさんが語るドラマ話にはもともと注目しているし、テレビ誌などにも隅々まで目を通しちゃったりしてますが、番宣番組により、他の出演者目線の話がたっぷりと聞けたのもとてもおもしろかったです。

そして、番組を見ながら気がついたのですが、美穂ちゃんもそもそもがおとなしい方で、昔からそんなに口数が多い方ではなかったなぁと思い出しました。
とても饒舌でおしゃべりも卒がないタイプの俳優、女優さんもたくさんいらっしゃいますが、彼女は多分そういう方ではなかったような。
あんなに一世を風靡したキラキラのアイドルで歌手で女優だった方が、素の部分では意外とおとなしくて、自分が自分がと前に出ていく方でもなさそうというのが、当時もとっても意外な気がしてました。

そんな方が久々日本のドラマに主演するということで、撮影だけでも大変だと思うのに、BSコンシェルジュのような番組で、いきなりお客さんがたくさん入った場所でドラマトークをするのはきっと大変だっただろうなぁなんてヘンに彼女の気持ちに心を寄せてしまいました(笑)
最初の方は特に、声が震えてましたよね。


そして一般的なイメージはそうじゃないかもですが、ファンとして知ってみると、つよしさんもそもそもは静かな人だと思うし「普段は寡黙」「人前は苦手」というのが意外と美穂ちゃんとつよしさんの最大の共通点かもしれないと思いました。

そんなふたりなのに、二人とも尋ねられて演じる苦労とかを語っていくうちに、次第に「伝えたい」が勝ってきて、どんどん饒舌になっていくのも素敵。

二人ともがこのドラマのことを「むずかしい」といい、「とことん悩みながら演じている」と言ってましたが、見てみるとその心がとってもよくわかるような気がします。
「さじ加減」が本当にむずかしいんだろうなぁというのが伺われます。
現場でも演者のみなさんが、とても考えながら集中してドラマ撮影に挑んでいる様子が伝わってきたのもよかったです。


特に印象に残っている話は、つよしさんの「リズムという接着剤を作るのがむずかしい」という話。
自分とセリフとの接着剤、みんなとのセリフの接着剤。「ぽんと放り込まれた一文が、意味深に聞こえすぎないように、無神経に伝わらないように」
常にスピード感を探っているという話。
この辺り、つよしさんの言葉の選び方も含め、とっても好きでした。


そしてドラマ本編を見て…

一番最初に思ったのが「さじ加減」はちょうどいいんじゃないかな?ということでした。

ご存じの方も多いと思うのですが、うちの息子も小学校1年生くらいの時に、まだ治療法が確立していない難病の宣告をされ、場合によってはオトナになるまで命の保障はない…的な宣告を受けたので、沙良目線で娘のお誕生日を「今年も元気でよかった。神さまありがとう。」と毎年祈るような気持ちで迎える映像が流れたあたりは、心情がものすご〜く容易に想像できました。
この辺りとか、あんまりリアルに描かれていたら…きっと正直見てられなかったと思うのですよ。

それが、ほどよい感じにファンタジーのオブラートにくるまれていたので、怖がらず安心して見ることができたし、警戒心を抱いたり不快感を抱いたりということもなかったです。
ただ「ああ、わかるわかる」という気持ちをぼんやりと(ここ大事、笑)抱きながら、沙良や青年の気持ちにほどよく寄り添いつつ、ドラマの中の話として見れた気がします。


もちろんファンとしては、どうしてもつよしさんに目が吸い寄せられてしまうわけですが、印象に残っている箇所がセリフというより、表情であることが多いのがすっごく新鮮でした。
セリフがとにかく多いようにつよしさんは語っていたけれど、むしろセリフが多いようにはあまり感じられなくて、より登場人物の心情が先に迫ってくる感じがします。

たとえば沙莉に「魔法使い」と言われたところの、顔も動かさず、セリフもなく、目だけで語っていた長い間。
時折瞬きだけが通り過ぎていくこの絶妙な「間」の中で、青年の謎めいた瞳の中に一体どんな感情が隠れているのだろう?と、このシーンだけすでに何度見たかわかりません。

「年下は苦手ですか?」からのふたりのやり取りも言葉というよりは、ふたりの細かい口に出せない心情の変化、お互いの気持ちを量っているような視線の行き来が心に直接響いてきて、画面にくぎ付けになっていました。


意外と展開が速くて、ファンタジーの衣をまとい、どこかふわふわと筋を追っていた感覚が、一気に現実に戻るエンディングのアナザーストーリーの部分の衝撃ったら。

ここも主題歌「オネスティー」がかぶっているからセリフは一切ないわけですが、ここが全編を通して一番心に迫ってきたところ。
短い中に青年が病気を発症するまでの、多分ごくごく普通の、喜怒哀楽が豊かな、恋愛をしている健全な男子のプロフィールが凝縮されていました。
まったく語らずにここまで見せるってスゴイなあとただただ感動。
ただただ魅せられつつ、強烈に見ているわたしの心もまた動き出したのがここ。
遠のく意識の中で、必死に携帯に伸ばされた「手」が、必死に目を開けようとしながらあらがえず、とざされていく目蓋がどれだけのことを語っているか…
見終わった直後呆然としてしまって、しばらくはこのドラマのこと以外考えられなくなるくらい惹きつけられました。

そしてドラマと同じくらい、主題歌「オネスティー」と「ストレンジャー」もずっと頭の中で鳴っているという。

ちなみに大学生の頃かしら?新入社員の頃かしら。以前にもビリージョエルをひたすら聴き続けた頃があったのですが、こんな30年近く経って、またもやジョエル先生に心を焦がす日が来ようとは!!
今のわたしが当時のわたしのところにいって「あんた、これね、またほぼ30年後にもっかいがっつりはまるから!」と言ったら、昔のわたしはなんて言ったことだろう。
「そんなまさか〜」と笑ったに違いない。事実は小説よりも奇なりです。むふふ


ああ、兄弟までの時間がもう1時間くらい欲しいな。
気持ちが上手に切り替えられなくてとてももったいない気持ちになりましたよ。 


ドラマの主人公沙良を演じる中山美穂さんもとても素敵でした。
掲示板の「僕のハートを差し上げます」を見つけたシーン。
ストレンジャーのイントロが流れて、目を大きく見張って、自虐的に笑ってから感情がこみ上げて、手で顔を覆って顔をあげる…あの辺りの心情の表現がとっても上手で、ものすご〜く心に残りました。
とても表情豊かで、目が饒舌に語り、まさしくセリフにない部分の余白を埋める演技ってこういうのかなと思いました。
最近はバラエティーでも本領を発揮して、すっごくその場を持っていく俳優さん、女優さんも多いですが、やっぱり演技をしていてこそピカピカとその光を放つ方が好き。

これらのシーンのみならず、登場人物各人が、セリフの中で心情や状況を無駄に説明しないところがとってもいいなぁと思います。
想像の翼を広げる余地があるなあという感じ。(by アンシャーリー、笑)
お話の中に自分の心ごと吸い込まれていくような、演者たちの素敵な力。


それからどのシーンも映像がとても美しく撮られていて、たとえば青年が登場した「雨に歌えば」の口笛のシーンの、スポイドから落ちる香水のしずく。
川の向こうに沈む夕日が青年の顔もオレンジに染める美しいシーンとか。
たとえば折り鶴をかざす夕陽のシーン。
「みかん色のひかり」のシーン。
印象的な美しいシーンがたくさんありました。

こうして並べてみると「夕陽」「夕陽の色」というのがひとつのテーマに通じているのかな?


他にもなんだかとっても引っかかって、これはなんだろう?と思っていたことが、Twitterを見ていて「ああ、こういうことだったのか!」とわかったこともあります。

たとえば、沙莉ちゃんが読んでいた絵本が「ともだちは実はひとりだけなんです。」という平岡あみさんの短歌集であったこと。
その意味深なタイトル。ちらっと見た、ヒリヒリするような作品とのレビュー(あえて、今は曖昧なままで…もしかしたら、全話見終わったあとで読んでみたくなるかもだけど。)

ともだちは実はひとりだけなんです (Billiken books)

ともだちは実はひとりだけなんです (Billiken books)

たとえば病室に置いてあった、タニコシナツコさんのぬいぐるみ。
ご自身のブログにて、このドラマに使われている作品の画像が貼られていますが、この方について調べていくと、ものすご〜く深いテーマが隠れていそうな気配です。検索していくうちに宮沢賢治というキーワードも出てきて、この物語の世界観ともリンクしていくのかなぁ?という予感がビンビンしてますが、あえて今はちら見程度にしておこうと思っています。あんまり先走りしちゃうとつまらなくしちゃいそうなのでね。

さらに謎つながりで言えば登場シーンの「Singing In The Rain - 雨に唄えば」。
この歌も深読みすると意味深だなぁと思います。
 

そして一話を見た感じだと一瞬、青年のすべてを投げ出して捧げてしまいそうな、そんな横顔に、オスカーワイルドの「幸福の王子」も浮かんだのですが、あの物語よりは登場人物みんながもっとずっとちょっとボタンを掛け違えただけの「普通の人」に見えて…
青年によって、みんなが元来持っていた他者を思う純粋なやさしさとか、心の平安とか…いろんなことが思い起こされ、どんどん息がしやすい環境が整っていくのかなぁと…そんなことを妄想しました。

さらに、これはちょっと蛇足ですが、わたしが今期もうひとつとてもはまっているドラマ「サイレントプア」の深田恭子ちゃんの役柄ともちょっと似ている気がします。
自分の中にある苦しみを、とことん人のために尽くすことで昇華させようとする人たちを描いた物語のような、そんな気もして。
あくまでも現時点の想像としては…ですけどね。

どっちみち、青年にとっては先にあるのは「死」だということが、とても悲しいことのようにも思えるけど、「誰もが生まれた瞬間に死に向って歩き出す」という言葉もあるし。
(これはうちの子の病気がわかって「なんて残酷なこと」…と一番どん底な気持ちに陥っていたときに、なぜか言われてすとんと腑に落ちた、ちょっとヘンだけど開き直るきっかけ、ある意味勇気をもらった言葉です。)
誰の寿命だって、ほんとうのところ誰にもわからない。

元カノ、美緒子ちゃんとの間に何か展開があるのか、それとも沙良や登場人物たちとの間が一方的なものじゃなくて、青年にとっても安らぎや心の平安を運んでくるものなのか…

今はまだ全然わからないけれども「青年」にとってもこの出会いがしあわせをもたらすものだといいなぁと願ってしまうのは、ファン目線なのか、物語を見ている者目線なのか…
その辺は正直自分でもわかりません。むふふ。

な〜んてことを考え始めたかと思うと、ただただ沙良の青年への恋の気配に、自分のことのように(おこがましい、笑)身を焦がしてみたり、もうすっかりとつよしさんへの恋愛モードでドラマを見ているわたしもいるのだけれど、いろんな感情がさざ波のように沸くドラマだと思いました。

気がつけば家事をしていても、仕事をしていても、電車に乗っていても、眠りにつく直前であっても、ふとこのドラマのことを考えているわたしがいて、こんな風にがっつりとドラマの世界観と向き合うのは久しぶりだなあという感慨があります。


まだ週半ばなのに、日曜日が待ちきれない感じになっているのも久しぶりだし、それが好きな人が出ているドラマだというしあわせを噛みしめたりもしています。

多分つよしさんが出てなくても、このドラマには惹きつけられていた気もしますけれども。

野島さんが伝えたい世界観は、この時代にふさわしいテーマを選んで、渾身の力をこめて書かれているように感じられます。
まだまだ謎なことも多いけど、散りばめられたさまざまな想いを見逃さないようにしっかりと見届けたいなぁと思います。